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145話:フィデース1

桜華(おうか)を出て、東に馬車で約2時間。

城壁に囲まれた東の小国、フィデース。

たった一箇所の出入り口以外は、高い城壁に囲まれており、外部の侵入を許さない。

中の様子が外に漏れることはないが、国全体が一つの宗教団体のように、王族はもちろん、貴族に平民も、みなが聖女と勇者へのとてつもない信仰心を抱いていた。


「止まれ」


国唯一の出入り口である門には、ガタイのいい男が3人立っていた。

彼らは私たちが乗っている馬車を止める。ちらりとその表情が見えたが、とんでもない警戒心を抱いているようだった。


「見張りご苦労」


馬車からミセリアが降り、挨拶をする。

一瞬「誰だこいつ?」という顔をしたが、彼が身につけている王家の紋章を見て、すぐにミセリアと気づいたようだ。


「すでに父上と兄上たちには話しているが、聖女様と勇者様をお連れした」

「聖女様と勇者様!?」


興奮気味の声が聞こえる。絶対危ないよなと思いながらも、中にいた私たち4人は顔を見合わせて外に出た。

アンジュとハーヴェは学園の制服を着ており、私とルヴィーはメイド服と騎士の制服を身に纏い、彼らの後ろに立っていた。


「お二人は、僕が留学している学園で出会ったんだ。粗相がないように」

「もちろんです!ようこそいらっしゃいました!聖女様、勇者様!」


さっきまでの警戒心はどこえやら。気持ち悪いほどにニコニコする門番たち。

話はついたようで、私たちはそのまま馬車に戻ろうとした。


「待て。そこの二人」


アンジュにハーヴェ。ミセリアが馬車に乗り込み、私が中に入ろうとした時に門番に止められた。

先程までのニコニコなどまるでなかったように、私たちを見下すような目を向ける。


「お前らはここに残れ。中に入れることはできない」


予想通り、私たちは中に入れないみたいだ。

とはいえ、このままおとなしく引き下がるのも良くない。それなりに演技をしなければ。


「そんな!私は、国王様より聖女様のお世話をするように仰せつかっていおります!」

「私も、お二人の護衛をするように言われております!帰れと言われても困ります!」


ルヴィーも乗ってくれた。意外に演技上手いな。

今度シルビアの前でやらせてみようかな。


「必要ない。お二人のお世話も護衛も我が国の人間で行う。貴様らのようなものに神聖な方々のそばに置くことなど許されない」

「そんな!」

「門番ごときがなんの権限があって!」


そんな言い争いをしばし続けた後、タイミングを見計らってハーヴェが私たちを宥めるように声をかける。

結果として私たち二人はその場に残され、馬車は中に入っていく。

閉ざされた門の前、男たちはいい気味だと言わんばかりに私たちを嘲笑う。

私たちだからいいものを普通の使用人に馬車も馬も与えず徒歩で戻れなんて最低すぎる行動だ。

私とルヴィーはそのまま門が見えなくなるぐらいの位置まで頑張って歩き、そこから道を外れて戦闘準備に入る。


「あの門番、ことが片付いたらボコボコにしてやる」

「本当それ。ただ、私らが誰かわかった瞬間の絶望的な顔も見たいよねぇ」


私もルヴィーも完全怒状態。

あの3人の門番はとりあえず顔を覚えたから、マジでボコボコにしてやる。

身につけていた服を脱ぎ、動きやすい服に着替え直し、そのまま魔法で姿を消す。ただ、このままではお互いに視えないため、魔法を上乗せして、お互いが認識できるようにした。これで、お互いには視えているけど、周りには姿が見えない状態になった。


「よし、それじゃあ潜入と行きますか」

「おう」


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