143話:作戦会議
翌日。
私たちは雨龍様が用意してくださった部屋で、作戦会議を行っていた。
決行は明日。そのために、それぞれの動きを改めて確認することになった。
「では、今回の作戦について話し合う」
事前に、ミセリアが彼の父であるフィデースの現国王に、聖女と勇者とすでにこちらに来ており、明日自国に帰ることを伝えている。
二人が帰国する際に、聖女、勇者としてアンジュとハーヴェ。その二人の使用人として私とルヴィー。計6人で中に入る予定だ。
しかし、おそらく使用人は中に入ることはできない。
聖女や勇者への信仰が強い分、彼らを支えたい。余所者にその座を奪われてたまるか。ということで、拒絶されるらしい。
「それについては、私の魔法で中に入れるから大丈夫」
「僭越ながら、どう言った魔法かお伺いしても?」
興味深そう。というか、無邪気な子供のような目で雨龍様は私のことを見てくる。
雨龍様は魔法には興味はあるそうだが、魔力が全くないそうだ。その分、剣術などの武術を極めており、彼に勝てる人は少ないそうだ。
「そうですね。では、この湯呑みを消してみますね」
私が軽く湯呑に触れた瞬間。湯呑みの底から上に向かって徐々に湯呑みの姿が消えていく。
それを見ていた人たちは感心したように声を上げてくれた。
まぁ魔法は魔法なんだけど、考え方はちょっと科学っぽいんだよね。
水と光魔法を利用した透明化の魔法。正確には、光の屈折を利用して消えたように見せているんだけどね。
要はイメージ。そう難しくないし、光と水が使えれば誰でもすぐに覚えることができる。
「もし追い出されたら、私とルヴィーはこれで中に入ります」
「合流は……しないほうがいいな。何かあったらいけない。俺たちは、隠れながら中を調べるかな」
「そうだね」
「ミセリア殿。儀式実行はいつだと聞かれている?」
「おそらく、すでに魔物による殺し合いは始まってるかと思います。なので、どのタイミングで父上がそれを魔王と断定づけるか僕もわかりません」
「となれば、もう明日にも魔王が誕生すると考えておいたほうがいいな」
そうなると、明日中に魔法陣を壊す必要が出てくる。結構急ぎになるな。
ミセリアが儀式場所を知っているだろうけど、国に戻ればおそらく両親や兄弟のそばに居続けることになる。下手に近づきすぎると見つかるリスクも増えてしまう。
「ミセリア、お願いしていたの見せて」
「あ、うん。ヘルガ」
「はい」
ミセリアの指示で、ヘルガは手にしていた大きな紙をテーブルの上に広げた。
それはフィデース国、王城の地図だった。ただ、ミセリアの記憶によって作られたものだから若干曖昧なところはあるそうだ。彼自身、あまり外に出ることもなかったため、往生全てを把握していないそうだ。ただ、例の儀式の場所には父親に連れられて何度も訪れていたから、そこだけはわかるそうだ。
「ここに隠し通路があります。ここを降りると儀式……というよりも、実験施設のようなものですが、そこにつきます」
「地下か……」
「となると、合図はどうしますか?」
「んー……一周回って、派手に上に向かって魔法を放つとか?」
「流石にそんなことすれば、相手側も逃げるだろ」
「そう難しくないんじゃないかな。地下だし」
それに、彼らは聖女や勇者に酷使しすぎていてあまり自信の優先を考えてないように思う。だから、何かあった時用の脱出経路なんてものはきっと考えてないだろう。なんと言っても、信仰する聖女と勇者。なにかあればきっと彼、彼女が救ってくれる。そう思ってそうだ。
それが口に出ていたのか、ヘルガは頷き、ミセリアは「否定できない」と落ち込んでしまった。
「なら、合図は俺が。レーフはその場にいる全員の拘束だ。できるだろう」
「もち。任せろう!」
「ミセリアは、魔法陣の破壊。ハーヴェはホーリーナイト嬢を守る」
「わかった」
「私も、何かできることがあれば、お手伝いします!」
合図が出た後は、雨龍様が軍を率いてこの国にやってきて全員を拘束。
とまぁこんな感じだけど……うまくいくかなぁ……。
なんというか、ちょっとだけ嫌な予感がする。なんだろうこれ……
「とりあえず、作戦がうまくいくかはわからないがこれで行こう。何かあればその都度対応。お互いにフォローできるところはフォローする」
全員がルヴィーの言葉に頷く。
これがうまくいけば次は雨龍様の娘を探さないとだしね。
終わっても、まだまだ私たちの休みは慌ただしくなりそうだ。