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139話:少女(?視点)
唸りをあげる多くの魔獣。
状態異常の胞子や鱗粉を撒き散らす植物たち。
ゴポゴポと少し粘膜のある紫色に苦った泉。
到底人が住むことのできない、《黒紫の森》。
そこを徘徊する一人の少女がいた。
♪〜♪〜♪
大きな布切れを羽織り、少女は歌を歌っていた。
楽しそうではなく、ただ淡々と歌を歌っていた。
少女の気配を察した魔獣たちは少女を威嚇する。
だけど、何もできなかった。歌を歌っている少女が踏んだ道の草花は枯れ、少女と目があい、触れようとした獣は眠るように死んでいた。
♪〜♪〜♪
白い髪を靡かせて、黄色い瞳を輝かせ、赴くままに足を運ばせる。
空から降り注ぐ光は、まるで歌を歌う彼女を照らすスポットライトのようだった。
♪〜♪〜♪
どうして少女がここにいるのか、どうして彼女は平然としているのか、誰にも分からない。
それは、少女自身にも分からないことだった。