138話:共闘
ルヴィーもそれを感じ取り、代表してことの内容を話してくれた。
村正さんや他の人は、ルヴィーの話に所々驚きで声をあげていたけど、雨龍様だけがただ黙って話を聞いていた。
「なるほど、話はわかりました」
ルヴィーの話が終わると、雨龍様は考えるようなそぶりを見せ、すぐさま私たちのそばにいたミセリアとヘルガの方を見た。だけどその目は、どこか軽蔑したような眼差しだった。
「我が国も、フィデースの動向について探りを入れていました。しかし、なかなか尻尾を掴めず。皆さんがそのような作戦を実行されるのであれば、協力は惜しみません」
「ありがとうございます」
「ただ……我々も今少しバタバタしていまして、すぐには手をお貸しすることができません」
「と、いいますと?」
「……娘が行方不明になったのです」
「雨龍様!それは!」
機密事項だったようで、そばにいた村正さんが止めようとしていた。だけど、雨龍様は首を横に振り、私たちに視線を向ける。
その視線から伝わってくる。「協力するかわりに、こちらのことにも協力して欲しい」という、そんな内容だ。
「しばらく前から、私の娘である羽衣華が行方不明になっているんだ。探しているのだが見つからなくてな」
「……もしや、フィデースが関わってるとお考えですか?」
「そうだな。確信はないが、ここ最近他国から多くの人を中に入れている。何をしているか分からず、証拠も何もない状態で突入することもできなくてな」
なるほど。あっさり協力してくれると言ったのは、その代わりに娘の捜索をさせるためだったのか。
にしても、他国のお姫様を誘拐するほど、ミセリアたちの父親はバカなのか?それとも、そもそもその国の人間のほとんどイカれてるのか?
「わかりました。協力させていただきます」
「感謝する。とりあえず、今日は部屋でゆっくりするといい。夕食の時間になったら使いを出す」
「あの、今回の作戦のために勇者や聖女の知識を高める必要があるので、書庫などあれば立ち入りと閲覧の許可をいただきたいのですが」
「えぇ構いません。持ち出しさえしなければ、好きなだけお読みください」
「ありがとうございます」
とりあえずは、これで解散となった。
細かい作戦などはまた後で。
流石にベッドはないだろうけど、思いっきり布団にダイブしたい。
にしてもお姫様の誘拐か……街が大騒ぎになってないことから、国民には伏せてる出来事なんだろう。
今回のことと関係してるか分からないけど、早くお姫様が見つかるといいな。
どんな子なんだろう。本編には当然登場してないし、可愛い子だったらいいなぁ。