136話:甲板の上で愛を囁く
後ろから強く強く抱きしめられた。
というよりも、いきなりすぎてすっごくドキドキした。
こんな強引に抱きしめられたのは初めてだし。
「レーフ」
「え、な、なに!?」
あぁやめてください。耳元で名前呼ばないでください。
絶賛今パニック状態なんだから。
と、とにかく落ち着こう。頑張っていつも通りに戻らないと!
「愛してる」
震えることで紡がれた愛の言葉。
まるで自分の中の不安を打ち消すように、また強く抱きしめ、そして自身の感情を確認するかのように、何度も何度も彼は愛の言葉を口にした。
「ハーヴェ」
優しく名を呼び、抱きしめる手に自身の手を重ねる。
そんなに不安に感じないで欲しい。私は大丈夫だから。
「私も愛してる」
「……ごめん」
「どうして謝るの?何か悪いことした?」
その後、ハーヴェは何も言わなかった。
体の体制を変え、向かい合うようになり、私から彼を抱きしめた。
ずるずると二人で崩れ落ち、まるで彼が私に甘えているように抱きしめた。
子供をあやすように何度も背中を摩ってあげ、彼が落ち着くまでそのままにしていた。
なんだかどっと疲れた。
さっきまで全然眠くなかったのに。急に眠気が私に襲いかかってきた。
こんなところで寝ちゃいけないとわかっているけど、今この眠気を無くしたら、もう今日は眠れないと思った。
だから私は、そのまま抗うことなく、ゆっくりと瞼を閉じた。