129話: 作戦会議2
参加すると手を挙げたのは、アンジュだった。
彼女には事前に、前世のことも踏まえて事情を説明をしていた。恐らく、自分も参加するべきだとそう思ったのだろう。もちろんイヤイヤとか仕方ないとかではなく、彼女の目には決意のようなものを感じていた。
「アンジュ!ダメだ、あまりにも危険すぎる」
やっぱり、キリクは反対するよね。
私も、きっと止めていただろう。自分も関係するから。だから仕方なく。本当は嫌だけど。そう思うならやらなくてもいいと。だけど、彼女は何かを決意した顔をしている。
「いえ、そういうわけにはいきません。これは私にも関係することなんです」
「……確かに、君も彼が作った魔道具に反応したと言われていましたが、それだけの理由であれば、別に参加しなくても!」
「キリク様。私、キリク様に話さないといけないことがあるんです」
あぁそうか。アンジュは、もちろん自分が関わってるからという気持ちもあるが、同時に、この問題を解決したら前世のことを話すと、そう決意したのだろう。
すごいな。私は、初めて前世を思い出したから今まで、話すタイミングなんて何度もあったのに、いまだに誰にも話せずにいるのに。
「これは、私にとって大事なことなんです!」
「しかし」
「キリク。それ以上アンジュを止めようとすると嫌われるよ」
「トレーフル様!」
「安心して。絶対にアンジュを危険に晒さない。こんかことをお願いしてるんだから、その分参加してくれる人を全力で守るつもりでいるよ」
「……はぁ……日に日にアンジュが、トレーフル様に似てきて心臓が持ちませんね」
失礼な。まるで私が悪いみたいじゃないか。とはいえ、キリクはアンジュの参加を認めてくれた。これで後二人、一人は勇者ということで男性陣の誰かに参加してほしんだけど……
「なら、勇者役は僕が引き受けるよ」
次の参加者、意外にもハーヴェだった。
確かに、ハーヴェの見た目は毛先が青色ではあるが黒髪だし、目の色は私の魔法を使えば変えればいけると思う。剣の腕もあるから、勇者役にはうってつけだ。
「勇者と聖女が一緒にいる間は僕がアンジュを守れるし、離れている間はレーフが彼女を守れるだろう」
「いいの?」
「もちろんだよ。でも、当然だけど何かあれば僕は君を優先する。これは絶対に譲れないよ」
「……わかった。そうならないように気をつけるよ」
これで3人。さて、最後の一人はどうしようか。
シルビア?いや、流石に危険すぎる。キリクも辺境伯家の息子とはいえ、彼は体より頭を使う方だからダメだ。となると……
「なら、残りは俺だな」
ですよね。ルヴィーになるよね。
剣の腕はもちろん、魔法の腕もある。陛下の代役として、東の国の王様と交渉もできるかもしれない。でも、次期国王になるルヴィーを連れて行っていいものか……
「何悩んでるんだよ。どうせ、次期国王である俺を連れて行くべきじゃないと思ってるんだろ」
「え、なんでわかった」
「そんぐらいわかるっての。何年一緒にいると思ってんだ」
わしゃわしゃと髪をもみくちゃにした後、片手で両頬を潰され、顔を上げさせられた。
やめろ、なんて顔をさせてるんだ。
「お前は俺に主従契約を求めるほど忠誠を誓っているんだろ?なら、俺が行くって言ってんだから、お前はそれに対して首を縦に振ればいいんだよ」
なんて大暴な。と思うけど、まさかそんな昔の話を持ち出されるとは思わなかった。
というか、今目の前に広がる姿がイベントスチルすぎてムカつく!くっ!どう足掻いてもやっぱり主人公かこの野郎!
「わかった。ありがとうルヴィー」
「おう。どういたしまして」
とりあえず、出発メンバーは決まった。
しかし、ここからがまず難関。陛下がこの作戦に同意してくれるかだ。
ルヴィーが手紙で陛下に伝えてくれるそうだけど、どうなることやら。