115話:お忍びデート
学園生活にもだいぶ慣れてきた。
最近は少し気温も高くなってきて、厚着すると少しだけ汗ばんできている。
今の季節は、女の子にとっては少しだけ大胆にオシャレができるし、色味も可愛らしい色味の服を着ている子が多く見られる。
「本当に、お嬢様の魔法はすごいですね」
私も、今日は少しだけいつもよりおめかしをした。
というのも、今日は毎週の学園生活の中の休日。特に特別というわけではないけど、数日前にハーヴェから街に出かけないかと誘われた。
何か買いたいものでもあるのだろうかと思ってOKを出したが、全く相変わらずというか、私の耳元でしっかり「デート」と言ってきましたよ。
なので、まぁ……私も女の子だからしっかりおめかししてます。
それと、さっきアニーが魔法すごいと誉めていたのは、私の今の見た目。
髪色も目の色も普段の私とは違う。
いわゆる変身魔法を使って見た目を変えた。意外と私の髪色っていないからかなり目立つんだよね。
ただ、私じゃない人とハーヴェが一緒に歩いてたら変な噂が流れるので、後でハーヴェにも変身魔法を使う予定だ。
「お二人だけで大丈夫ですか?」
「平気だよ。ハーヴェもいるし、護身用の武器もあるから」
「そうですが……」
「心配しないで。あ、お土産買ってくるね」
すでに待ち合わせの時間が目前に迫っていたので、足早に部屋を出ていった。
私服姿で寮の中を歩くのは初めてじゃないけど、やっぱり見た目が変わってるせいか、生徒たち数名が不思議そうに私のことを見つめていた。
「あれ、シルビア?」
寮の玄関先。おめかしをしているシルビアの姿があった。
白と青の外行きの服。清楚っていうか、私服だけど天使みたいだなぁ。さすが私のシルビア。
「……もしかして、トレーフル様ですか?」
私の声が聞こえたのに、私じゃない人がいて困惑しているみたいだった。
変身魔法で見た目を変えていることを伝えれば、納得してくれた。
「シルビアもお出かけ?可愛い服だね」
「ありがとうございます。実は、殿下にお誘いしていただいて」
「ほほぉ、デートか。なるほなるほど」
ルヴィーもしっかりシルビアとの関係を深めているみたいだね。これは、何があっても婚約破棄なんてしないだろうな。いやーよかったよかった。
にしても……
「流石に、未来の王と王妃がそのままでデートって危険じゃない?というか即バレるでしょ」
「そうですか?髪型変えたり、メガネかけたりしてますが」
いや、確かに普段とは違うよ。髪型もメガネも。正直萌えます!ご馳走様です!
「シルビアの美しいオーラが隠せてない。ちゃんと楽しみたいなら、私みたいに髪と目の色は変えよう」
「……そうですね。殿下に迷惑がかかると行けまんしね」
「迷惑っていうよりは、世の中には他人の幸せを妬む人もたくさんいるんだよ」
押しカプのデート妨害する奴は八つ裂きにしてやる!!
帰ってきたらどうだったか聞かなければいけない。
「私が変身魔法かけてあげる。何色がいい?」
「えっと、それじゃあ……」
私はシルビアに頼まれた色に、髪色と目の色を変えて、待ち合わせの場所へと向かった。
向かったのはいいけど、やっぱり目立つ二人。すでに多くの女性陣に囲まれている。
変装のつもりか、髪型変えたり帽子被ったりメガネかけたりしてるけど、全く隠せてない。君たちはイケメンオーラが常に出てるということをもっと自覚して欲しい。
さて、見た目変わってるし私だってわからないだろうしどうやって気づかせようかな。
「似合ってるよ、レーフ」
「え?」
俯きながらそう考えていると、突然そう言われて慌てて顔を上げた。
目の前にはご機嫌なハーヴェの姿が。
え、明らかに見た目違うのに私だってわかったの!?なんで!?
「よ、よくわかったね」
「当たり前じゃないか。僕がレーフに気づかないわけないだろ」
「はは……」
「そちらはシルビア嬢かな。素敵な髪色と瞳の色だね」
「よく私だと分かりましたね」
「殿下から、シルビア嬢と出かけると聞いたからね。それに、レーフが一緒にいる相手も結構限られるかと」
「新しい友達の可能性もあるでしょ」
「そうだね。その可能性も確かにあるね」
そんなこと言ってるけど、どうせシルビアだって確信があったんでしょ。
怖いわぁ……私の婚約者本当に怖い。
「おしゃべりはいいから、ほら。ハーヴェにも変身魔法かけてあげる」
「ホントかい?それじゃあ……」
「おいハーヴェンク!俺を置いていくな!」
変身魔法をハーヴェにかけようとした時、息を荒げるルヴィーがこちらにやってきた。
大勢の女性たちはコソコソとこちらを見て何かを話している。
まぁ大型「だれ?」「殿下の知り合い?」「ハーヴェ様と親しそう「やだ、婚約者がいるの知らないのかしら」なんて言ってるのだろう。
もし予想が当たってるなら、あなた方も婚約者のいる相手に気軽に話しかけるのはどうかと思うけど。
「ちょうどいいところに、ルヴィーもこっちきて。変身魔法かけるから」
「………………お前レーフか!!」
「まぁうん。そうだよね。その反応だよね」
よかった。ハーヴェが特殊なだけで、ルヴィーの反応が正しいんだよね。
普通これだけ変わってればわからないよね。まぁ声はそのままだから、知ってる人はわかるかな。
「とにかくほら。素顔だとバレるから、変身魔法かけるよ」
「ということは……シルビア、か?」
「あ、はい。殿下」
「……その……よく似合ってるぞ。髪色も、瞳の色も」
「あ、はい。ありがとう、ございます」
おいおい急に二人の世界入るな。そういうのは私たちがいないところで……
いや、せっかく目の前でルヴィシルが行われてるから見ないと失礼だよな。
うん、とりあえず現実に戻ってくるまで見守るか。
「殿下、シルビア嬢。ここで長居すると、街での時間がなくなりますよ」
「ふむ、そうだな。レーフ、魔法ありがとな」
くっ、もう少し押しカプ見つめたかったがまぁ仕方な。
ハーヴェとルヴィーにもしっかり変身魔法をかけ、ぱっと見私たちは私たちではなくなった。
「それじゃあ殿下。僕とレーフはこっちなので」
「あぁ。レーフ、問題起こすなよ」
「ルヴィーも。シルビアに迷惑かけないでよ」
「お前じゃないんだから安心しろ」
いつものやり取り後、私たちはそれぞれ分かれて、お互いにデートを楽しんだ。