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110話:肉

あれから約1週間。

無事に5人とも目を覚ました。

状態異常による後遺症が残ることもなく、全員変わらない健康体となって。

ことの事情は先生たちから聞いており、今回の事件は、可能性の一つとして先生たちからも誰かを狙ったものかもしれないとのことだ。

まぁみんな身分は高いし、一番低いアンジュですら加護持ちで特別だから誰が狙われてもおかしくない。

なるべく人の少ない場所には行かず、暗くなる前に寮に戻るように言われた。

同時に、どうやってアンデットドラゴンを召喚したのかもまだわかっていない。

ナーヴィス先生の口添えで魔法塔も協力してくれているみたいだけど、未だ謎は解明されていないそうだ。

そんな暗い出来事がまとわりつく中、私たちはいつも通りの生活に戻っていた。


「じゃ、じゃあいくよ」

「はい」

「お、おいホントに……」


午前の授業が終わり後は午後の授業だけ。

私たちは現在昼食をとっている。

いつものシルビアが準備してくれたものではなく、魔獣、魔物を専門とする先生、生物学担当のイルミナティ先生が準備してくれたものだ。

先日、無事に大型ハイウルフを提出することができ、全員が合格。

みんなで合格を喜んでる中、先生が大型ハイウルフに目をキラキラさせており、その時にお肉を分けて欲しいとお願いした。もちろん、魔物、魔獣を食べることに興味があることにも。

それには先生はずいぶんと喜んでくれていた。というのも、ルヴィーやキリクの反応がそうだったように、普通は魔物や魔獣を食べるという発想はない。だから、生徒がそれに興味を抱いてくれたのが嬉しかったようだ。

同時に、そばで聞いていた先生の双子の弟。魔法薬学担当のバイエルン先生が、せっかくならとイルミナティ先生がハイウルフを調理してそれを渡したらと提案してくれた。

この二人、学園では過激派で有名で、趣味のためならどんなことでもするタイプ。しかし、それが故にイルミナティ先生の料理は、バイエルン先生の入れたお茶は、最高にうまいと言われている。

だから、たとえその調理対象が魔物や魔獣でも食べれることが嬉しかった。

ので、調理をお願いし、出来上がったものを今まさに口に運ぼうとしていた。

ハイウルフをローストビーフにして、パンで挟んだサンドイッチ。

一緒に挟んである香草はバイエルン先生セレクトだそうだ。


「いただきます!」


がぶっと勢いよく一口食べて口をもごもごさせる。

不安げにルヴィーとシルビアが見つめる中、私はごくりと体に流し込んだ。


「ど、どうだ……?」

「お味はどうですか?」

「……ぐすん」


泣いてしまった。いや、決してまずいから泣いているのではない。感動した。

なんだこれ、めちゃくちゃうまい!若干筋っぽいけど、口の中でほろほろ崩れて、香草の歯応えも良くて語彙力ないけど美味しい!ホント美味しい!これ本当にあのハイウルフか!うまい!

泣きながらももぐもぐ食べる私の様子を見て、次はシルビア。それをみたルヴィーが慌てたように一口がぶり。暫くもぐもぐして、ごくりと飲み込んで目を輝かせた。


「うまっ!」

「ホント美味しいです」

「ね。いやー、ハイウルフってこんなに美味しいのか」


サンドイッチはあっという間になくなった。食べ応えもしっかりあったので、一個で十分お腹が満たされた。午後の授業寝そう。


「次は何がいいかな」

「あ、スライムも食べれるって聞きました」

「え!」

「あぁ知ってる。なんかところてんみたいになるって!」

「ところてん?」

「あ、いや、透明な麺だよ」


食事を終えて暫くのんびりした後、私は籠を先生のところに返しにいくことにした。

二人もついてくると言われていたけど、ついでに体質についてバイエルン先生と相談するからと、一人で教師塔へと向かった。

午後の授業もすぐ始まるだろうし、先生と打ち合わせすることも考えれば近道をしないとだなと思い、あまり人が通らない裏道を通った。

たまにここで密会してたりするから、鉢合わせしないいいけど。


「聞いているのですか!」


と言ってるそばから、私はよくありがちな現場に遭遇する。

校舎の壁に向かって、こちらに背を向ける数名の女子生徒。どう見てもあの囲んでる中央には誰かいるよな。

まさかいじめ現場に遭遇するとは。


「というかあれ、この場面って……」


なんか覚えのある感じだなと思い、物陰からじっと見つめると、女子生徒たちの中心にいたのは……。


「聞いているのですか、アンジュ・ホーリーナイトさん」


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