105話:アンデットドラゴン1
アンデットドラゴン。
ドラゴンの成れの果てと言われており、腐敗し溜まりに溜まった魔力の影響で骨の姿となって再び蘇る、特殊生物。
魔獣が多く住む黒紫の森を魔物の形にしたものだと言われている。
使用される魔法は状態異常系で、特に使用される毒は猛毒で、過去にこの毒で5国以上が滅んだと言われている。
その凶悪さから、通常のドラゴンとは別に考え、ランクもSSにするべきだと言われている。
そんな存在が、今私たちの目の前にいる。なんで突然。さっきまでそんな気配なかったのに。
「ルヴィー!!」
私が声を上げるのと同時に、先生に持たされていた信号弾をルヴィーが空に向かって撃ち放った。
これで、先生たちもこっちにきてくれるだろう。
問題は、それまでどう耐えるか。
逃げても追いかけてくるだろうし、だからと言って戦っても怪我……相手が相手なだけに軽い怪我でも死に直結する。
となれば……
「全員森に向かって走って!」
逃げるしかない。
自分の力を過信しすぎない。今ここで飛び出して、また我が身を犠牲にしてしまえば、私がよくてもみんなが許してくれない。
今でも頭から離れないみんなのあの表情。もうあんな顔は見たくない。
だから私は逃げる。そして、みんなを生かすんだ。
「グギャアアアアアアアア」
アンデットドラゴンは雄叫びを上げると、緑色の霧を吐き出した。
毒か!そう思って咄嗟に口元を押さえる。だけど、周りにいたみんながバタバタと倒れ、体をビクビクと震わせる。
麻痺?痺れ?それとも神経系の毒?
私もそこまで状態異常の種類に詳しわけじゃない。でも、みんなが動けないんじゃ逃げることもだきない。
逃げられないなら、もう戦うしかない。
氷魔法で剣を作り、同時に風魔法でみんなを一箇所に集めて防御魔法を展開させる。
3種類までなら魔法の同時発動はできる。ただ、そう時間をかけられない。
みんながかかってる状態異常が命に関わるものなのかそうじゃないのかわからない。
わからないけど、普通に考えて命に関わるものだと想定して戦わないと。
私は剣を構え、アンデットドラゴンに立ち向かう。
時間稼ぎは先生が来るまでできればいい。無理に倒そうと思っちゃダメだ。
息を吸い込めば私も状態異常にかかってしまう。どれだけもつかわからなけど、やらないと。
私は一気に踏み込み、氷の剣を使ってアンデットドラゴンに切り掛かる。
相手は巨大。飛行魔法を使いながら攻撃を避けたり、したり何度も繰り返す。
何度か状態異常の魔法攻撃を受けたが、呼吸をしてないから大丈夫だ。
泥臭くてもいい。このまま続けていればきっと先生がすぐにきてくれる。
内心何度も早く先生が来るように願った。
願って、願って、願って……
「え?」
氷の剣が砕けた。体から力が抜けて、空を飛ぶことができなくなった。
目の前のアンデットドラゴンは白い魔法陣を展開していた。
「アンチ、マジック?」