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第四章〜⑥〜

8月28日(土)天候・晴れ


 祈りが天に通じたのだろうかーーーーーー?

 前の週は一週間降り続いた雨は、週の変わり目には止み始め、花火の打ち上げが行われる当日は、残暑と呼ぶに相応しい快晴の一日になった。

 天候に問題ないことがわかり、花火観賞への期待とともに、一週間前に固めた決意が揺るがないように、という緊張感が高まる。

 その緊張をまぎらませるため、早めに持ち物などの準備を済ませた後は、自室でスマホをいじったり、リビングに行って、普段は観ない高校野球中継を眺めたりしながら、夕方になるのを待っていた。

 午後四時半になる少し前、自室に戻って持ち物の確認をしていると、


==============


そろそろ家を出るわ


==============


という康之からの簡潔なメッセージを確認して、自分も出掛ける準備を始める。


「そろそろ出掛けるわ」


 リビングでくつろぐ両親に告げて、玄関に向かう。


「気をつけて会場まで来いよ〜」


 父親の声に、「わかってるよ」と返事をして家を出る。

 両親とは、宿泊ロッジの受付前で集合することになっている。

 マイカーなら、自宅からでも小一時間ほどで会場に到着できるということで、二人は五時半頃に家を出るらしい。

 これで、自分たち公共機関乗り継ぎ組と変わらない時間に到着できるのだから、自動車移動のメリットを痛感させられる。

 それでも、友人たちと連れ立って花火の会場に向かうことには、そのメリットとすら比較にならない楽しみを感じられた。

 思えば、アミューズメント・プールに行って以来、このメンバー全員が揃うのは、約一ヶ月ぶりのことだ。また、小嶋夏海と直接顔を合わせるのも、雨の日にショッピング・モール前のペデストリアンデッキで実験観察を行って以来となる。


(夏休みの前半は、あんなに頻繁に会っていたのに……)


と、その頃のことを思い出すと、わずか数週間前のことながら、懐かしくて、少し寂しくなるような奇妙な感覚を覚えた。

 そんな想いにふけりながら、駅までの道のりを自転車で走破し、駐輪場に愛車を駐める。

 改札口に向かうと、集合時間の五時までには、まだ十分ほど余裕があるにもかかわらず、すでに参加するメンバー全員が集まっていた。


「あ〜! 坂井、おつかれ〜!」


 いち早く、こちらに気付いた大嶋裕美子の声に「お〜、おまたせ!」と反応し、手を振る。

 改札口の端に集う五人は、電車やバスを乗り継いで一時間以上の移動距離になるのためか、さすがに、浴衣や甚平などの《ザ・夏祭り》《イッツ・ア・花火大会》といった服装のメンバーはいないが、それぞれ夏の夕方の外出に似つかわしい出で立ちだ。

 康之は、少しルーズに見える大きめのカットソーとタイトなボトム姿で、動きやすく見た目も涼し気な印象だ。また、哲夫は、シンプルなシャツのインナーにテーラードジャケットを羽織っている。ボトムスにスキニーパンツは、ガッチリとした体型をスラリと見せ高身長の彼に似合っていた。

 一方の女子に目を向けるとーーーーーー。

 最初に声を掛けてくれた大嶋は、花柄のワンピースという愛らしい格好だ。ワンピースの肩にはリボンが付いていて、そのボリューム感が可愛らしさを演出するだけでなく、上半身をさらに華奢に見せている。足元は、歩きやすそうなヒールサンダルで、しっかりと夏らしさを感じさせていた。

 大嶋の隣で談笑を続けている中嶋由香は、夏物のセットアップという服装で、トップスはノースリーブ、ボトムスはショート・パンツというシンプルなスタイルだ。風にヒラヒラと揺れるタイプのトップスと小さめのレディースハットが、涼し気に感じられる。

 そして、最後に目にした小嶋夏海は、レースブラウスにデニムのショートパンツという少し大人っぽさを感じさせる服装で四人の会話の輪から少しだけ離れた位置に立っていた。

 モノトーンのトップスは、花柄のレースを纏っていて、いつも以上に彼女を大人びた印象に感じさせる。

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