第四章〜③〜
8月15日(日)天候・雨のち晴れ
八月の中旬に入って、異例の雨模様の天気が続いていたが、この日の午後は、ようやく雨も上がり、四日ぶりに晴れ間が射し込んできた。
雨が上がるの見計らって、両親とともに、お盆の墓参りに出掛けることになった。
我が家のマイカーで、自宅から三十分ほどの場所にある集合霊園は、お盆と雨上がりが重なったためか、いつもより、人出が多いように感じる。
『坂井家之墓』と書かれた墓石の前にしゃがみ、祖父さんと祖母さんに手を合わせると、小さい頃に自分をかわいがってくれた二人の姿が思い浮かんだ。
特に、祖父さんは、先月の誕生日に、不思議なアイテムを授けてくれたこともあって、子供の頃、良く自分に言い聞かせていた言葉などを思い返す。
「いいか、夏生。他人様には、まごごろを尽くせ。人間、誠意ある行動が一番大切だ」
「夏生、人生に大切なことは、『愛する人を見つけること』と、『自分の人生を賭けて、夢中になれるモノを見つけること』だ。それは、仕事でも、研究でも、趣味でも、なんでも良い。大切にしたい人と夢中になって打ち込めるモノがあれば、どんなに苦しい思いをしても、たいていは乗り越えられるーーーーーー」
先月も、『時のコカリナ』を小嶋夏海に奪われた時に、このフレーズを思い出していたような気がするが、いまは、もっとリアリティを持って、祖父さんの言っていた言葉の重みを理解できるような気がした。
「ありがとうな、祖父ちゃん」
オレは、墓石の前で、手を合わせながら、そうつぶやいてから立ち上がった。
※
夕方近くになって、墓地から自宅に戻ると、今日の空模様とリンクしたわけではないだろうが、まず大嶋裕美子からメッセージアプリで吉報がもたらされた。
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問題解決!
ウチの兄とユカの二人と
話すことができました。
花火大会の件も、
愚兄とユカの仲も無問題!
ということで私とユカも参加
させてもらってイイ?
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どのような経緯があったのか定かではないが、問題はクリアされたようだ。
いずれにしても、大嶋の尽力に感謝である。
すぐに、メッセージに返信をする。
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ありがとう!
大嶋と中嶋も招待メンバーに
入れさせてもらう!
これから、テツオとヤスユキ
にも連絡しようと思う
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メッセージを送り返すと、すぐに既読が付き、《OK》という二匹の猫のイラスト付きスタンプが返ってきた。
あらためての感謝の意味を込めて、こちらも、クマがお辞儀をしているスタンプを返信しておく。
そして、大嶋からの返信を待って連絡することにしていた悪友二名と作っているグループチャットにも、メッセージを送信する。
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【朗報】
父親の知り合いから
花火大会のお誘いがあった。
(大嶋・中嶋・小嶋にも連絡済)
日程は、8月28日(土)
参加できそうなら返信求ム
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お盆休みながら、感染症の影響で外出する機会が少ないためか、即座に二件の既読がつき、返信があった。
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連絡ありがとう!
ぜひ、参加させてほしい。
親父さんにも
お礼を言っておいてくれ
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まずは、哲夫から短いながらも、礼儀正しい内容のメッセージが返ってきた。
続いて、康之からも、
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ナツキ、あなたが神か……!?
絶ッッッ対、行かせてもらう!
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と、ヤツらしい返信があった。
その内容に苦笑しながらも、
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二人とも素早い返信感謝!
ちな、大嶋と中嶋からも
参加の返事をもらっている。
花火大会については、ウチの親
だけでなく、当日に主催する
知人の社長さんに伝えてくれ
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と、グループチャットに返信しておいた。
そのメッセージに、哲夫からは「了解です!!」のコメントが付いたアザラシのスタンプが返され、ほぼ同時に、康之からも「よっしゃあああ」と叫んでいるアザラシのスタンプが送られてきた。
(二人ともアザラシさんとか、仲良すぎかよ……)
と、またもこみあげる微苦笑をこらえつつ、
(テンションの上がっているヤスユキには申し訳ないが……あとは、中嶋とツカサさんを含めた三人の問題だ)
と、心の中で手を合わせ、彼らの関係性の行く末については、当事者たちに委ねることにした。




