婚約者の王子がいるくせに恋人がいてしかもその恋人を妹に取られた挙句その婚約者の王子まで妹に取られたとかいう尻軽令嬢を横からぶっ叩くだけの簡単なお仕事。
「エミリー! なんて酷いの! あなたは私の愛したルパート様だけでなく、婚約者のチャルロス王子まで奪うなんて!」
「きゃはは、ルパートも、王子もみんなみんな地味な貴方になんて興味ないのよ! 可愛い可愛い私の方が何1000倍もマシ!」
「そうだ。だから私はお前との婚約を…… 破棄する!!」
「王子そんな!? いえっ、でも我が家が黙ってませんわ!」
「お姉様正気? 私だろうと貴方だろうとパパもママも関係無いわ。流れている血は一緒でしょう?」
小さな頃から妹の方がよく出来た子だった。可愛かったし、頭もよかった。
私にできるのはハーブの世話と……
ちょっと、聖女のお仕事を。でもこれは皆には秘密だから伝えられていない。
そんな時、出会ったのがルパート様。隣国の公爵子息様なんだけど、地味な私にもすっごく優しくしてくれて……
好きだって言ってくれた。
幸せだった。初めての好きな人、初めての経験ばっかりだった。
でも…… その初めての幸せすらも、完璧で親にも愛されている妹に奪われてしまった。
「ねぇ、ルパートさまぁ!」
「なんだ、可愛いやつめ」
ある日のお茶会、私は御手洗から戻ってきたとき、バルコニーで唇を合わせる2人がを見てしまった。
あぁ、それは私のものだった筈なのに……
そして今日、彼女は私の婚約者までも奪った。
あぁ…… もう隠すのはやめにしよう。この聖女の力を解き放って復讐を……
「あぁ…… あぁ…… いでよ神獣! 私の敵を倒して!」
私の宣誓とともに魔法陣が描かれ、中から白銀の巨大な狼が出現。そして……
「え、やだけど?」
「なんでよ! 未来の国母となる私を助けてよ!」
信じられない拒絶の言葉。だからもう一度だけ声をかける。
「え、やだけど?」
―――――――――
俺は神獣。2000年前くらいに転生したら犬っぽい獣だった元日本人である。
「いやぁ、そもそもさぁーおかしくない妹ちゃん?」
「ひえっ、神獣…… じゃあお姉様が聖女だったの!?」
「せやな。俺としても残念なことだぜ」
そう言うと、俺は王子の方を向く。
「王子、お前はちゃんと聖女を愛するべきだったな。いややっぱ政略結婚だからそれはまあいいや。うん。」
「お前何が言いたいんだ!?」
「俺はよぉ、この聖女に怒ってんだ!」
俺の前世の死因は
"彼女の浮気を問い詰めたら逆ギレされて包丁で刺された♪"
だから、浮気には一家言ある。
「いやぁ、仮にもさぁ…… 自分で国母つっちゃってる女が浮気するのどーなの? あの褐色クソ公爵子息とそりゃまぁシッポりいろんなことやっちゃってさぁ……」
「神獣! 何言ってるんですの! 私に従いなさい!」
「やだ。てかお前のリテラシーの話してるんだが?」
「りて……? とにかく早く!」
「やめろ神獣!」
「安心しな王子。俺はお前の味方だぜ☆」
「なんですの!?」
俺は王族足るもの浮気してもいいと思ってるし、別に政略結婚なんだから同じ家なら好きなやつと結婚すればいいと思ってる。まぁ妹は妹でクソだが。
「だってよぉ、お前。お前と王子結婚しますー、王子即位しますー、新王太子生まれますー、褐色でしたやったね! 王家断絶だぜ!」
「なんの話を!?」
「終わりじゃね? 国母足るもの浮気しちゃダメじゃね?」
「それは…… 初めて優しくして頂いて……」
「じゃあお前の国母への覚悟その程度じゃね? 妹が結婚してもよくね?」
「そっ、それは……」
「俺的にはー、お前のどうせ聖女パワーで全て壊せるしーって考えてるとことか、王子居んのに恋人作るとことか、妹ちゃんはメイクとか努力してんのに何もせず自分が地味なのを言い訳にしてるとことか全部嫌いっていうかぁ……」
「えぇいうるさい! 【命令権行使】! 全てを滅ぼしなさい!」
「ぐっくはぁ……」
やばっ、体が熱い。これは強制的に…… 口に熱が集まり、高音のブレスが漏れだし……
「ボーー!」
命令は全てを滅ぼせだったから全ての中の1人こと聖女を取り敢えず滅ぼしてみた。したら死んだし命令は止まった。やったね。
「じゃ、俺行くわ。王子幸せにな。妹は許さん。俺は浮気者その2を許さ……」
「ルパートとは2日で別れましたわ! 王子はそのあとですわ!」
「セーフ! いいよ! お幸せになお二人さん!」
俺はそう言って空を掛けて隣国へと向かっていく。
全ては褐色クソ王子こと浮気者その2.5を滅ぼすために。
良かったら下の星をちょっと青くしてね! あなたに得は無いけど損もないしその上それで幸せになれる人m………………