表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

第30話 カレー

 スーパーでは俺がカレーの具材、皆月がお菓子と飲み物といった感じで手分けして買い出しを済ませた。


 スーパーの前で合流するとなぜか皆月はいつものポニーテールではなくなっている。


 長くて艶やかな黒髪を下していて、魅力的という意味でとても大人びて見えた。


 というか、なんで髪下してるんだ?


「お待たせ、涼一郎。それじゃ帰りましょうか」


「珍しいな、皆月が髪解いてるの」


 出会った頃から皆月はポニーテールで、俺にとってはもうポニーテール=皆月と言っていいくらいの印象の強さだ。


 もちろんたまに髪を解いている姿は見たことあったが、外で見るのは初めてかもしれない。


「どうよ、涼一郎? 何歳に見えるかしら?」


 その質問、男が一番困るやつだぞ……。


 大人に見られたいのか、それとも若く見られたいのか。


 この場合の皆月はおそらく前者なんだが、程度を見極めないとぶちギレされそうだ。


「まあ、二十歳そこそこには見られるんじゃないか? その、けっこう大人びて見えるし」


「ふっふーん。涼一郎もようやくあたしの大人な魅力に気づいたようね?」


 皆月は得意げにふぁさっと髪をかき上げて見せる。


 よし、楽しく話せたな。


 でもどうして髪を下していたんだ?


 気にはなったが聞けないまま帰路に就く。


 太陽はすっかりその姿を隠して、夕闇の空には金星が輝いていた。


 両手に重たい袋を持って、ぜーぜーと息を吐きながらようやく我が家に到着する。その頃にはすっかり日も暮れて頭上には夜空が広がっていた。


「疲れたぁー。俺今からカレー作んなきゃいけないのかよ……」


「お疲れさま。本を持ってくれたお礼に少しだけ手伝うわよ。包丁持てないからそれ以外の部分でだけど」


「あー……、まあそれだけでも助かる」


 ピーラーでじゃがいもの皮むきとか、鍋で煮込みながらかき混ぜる作業とかその辺はもう任せてしまおう。


「ただいま」


 玄関扉を開ける。


 と、

「あ、りょー君お帰りー!」


「おにーちゃん!?」


 廊下には杏璃とユリアの姿があった。


 ……二人ともバスタオル一枚を体に巻いただけの姿で。


 何をしているんだ……?


「ちょっと、二人ともなんて格好してるのよ……」


 後から入ってきた皆月が二人の姿を見て額に手を当てる。


「杏璃さん、お米お米!」


「あ、そうだった!」


 廊下で立ち止まっていた二人は慌てた様子でキッチンへと入っていく。風呂場から出てきたようだけど何を慌ててるんだか。


 俺と皆月がキッチンに入ると、杏璃がピッと炊飯器のスイッチを入れていた。どうやら米を炊飯器に入れはしたもののスイッチを入れ忘れていたらしい。


「これてよしっと。ふぃー……。危うくカレーライスをライス抜きで食べることになっちゃうところだったよぉ」


「カレーってご飯にかけて食べるものなんですね。とっても楽しみですっ!」


「それはともかくその格好を何とかしなさい」


 バスタオル姿の二人は皆月に押されるようにキッチンから連れ出されていった。


 ……目に毒だな。特に杏璃とユリアは色々と。


 いつバスタオルが落ちるかと冷や冷やだったが何事もなくてホッとした。ラッキースケベイベントなんて現実じゃどう考えても詰むだけだからな……。


 気を取り直して、戻ってきた皆月と一緒にカレーの調理を始める。


 皆月や杏璃からの評価は高いが、これと言って特徴のない普通のカレーだ。ルーも市販のものだし、隠し味にチョコレートとすりリンゴを入れて甘口にするくらいのアレンジしかしていない。


 俺の好みでは中辛くらいがちょうどいいんだが、今回はまあ幼馴染たちの希望なので昔と同じレシピで作る。


 皆月が手伝ってくれたおかげで作業は手際よく進んだ。


 後は煮込んでルーと隠し味を入れるだけといった頃に杏璃とユリアが風呂からでてくる。俺と皆月も鍋の様子を見ながらかわりばんこに入浴を済ませた。


 カレーがいい感じになってきたころ、炊飯器からも米が炊けたメロディーが流れる。


 お皿によそったご飯にカレーをかけて……っと。完成だ。


 リビングのローテーブルに人数分並べて座る。


「こ、これがカレーですか? 色はともかく、とても美味しそうな匂いがします……っ!」


「色はまあアレよね。あたしたちが見慣れちゃってるだけで」


「お腹すいたぁー。早く食べようよぅ」


「そんじゃ、」


「「「「いただきますっ!」」」」


 一口食べたカレーは昔の記憶そのままだった。久しぶりに作るから不安だったが、皆月と杏璃からもお墨付きを貰え、ユリアもとても美味しそうに食べている。


 作った甲斐があった。食事の時間は賑やかに楽しく過ぎていく。


 家族団らんの夕食とはならなかったが、これはこれで楽しいな。


「はい、涼一郎の分」


「ん? ああ、ありがとな皆月」


 ちょうど喉が渇いていた頃に、皆月から缶ジュースを渡された。


 プルタブを開けて口に含むとコーラのさわやかな炭酸が…………ん?


「なあ、皆月。これジュースだよな?」


「そうよ」


「…………まあ、いいか」


 皆月の奴、髪を下していたのはこのためだったのか。


 皆月は優等生だけど生真面目って感じでもねぇんだよな。


 それからまあ、色々なことがあった。杏璃がユリアにキスを迫ったり皆月が俺にしがみついて泣き出したりユリアの笑いが止まらなくなったり…………地獄か?


 そんな騒がしい時間も過ぎて、皆月と杏璃が互いの手を握りながら眠ってしまった頃。


 俺が食器洗いをしていると、ユリアが近くによってきた。手伝いに来てくれたのだろうか。足取りが覚束ないし、目も据わっているように見えるが。


「大丈夫なのか、ユリア?」


「ま、まだちょっとふらふらします……」


「あんまり無理するなよ。ソファで休んでてもいいんだぞ」


「い、いえっ! その……おにいちゃんに話しておかなきゃいけないと思って」


「話?」


「は、はい。その……フルレアさんのことです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=831437633&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ