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「行ってらっしゃいませ、お嬢様。お坊ちゃま。」
使用人たちが、ただ街を見に行くだけの私たちを総出で見送ってくれた。
両親とは先程涙涙のお別れをしたところだ。
きっとすぐに家を出ることは叶わないと思っていたが、アレクシスは何をしたのか、感激と使命感を持った顔をした御者の駆る馬車に乗って私と弟は街へ向かっている。
なにを、したんだろう。
しかし、聞いても答えてくれないだろう。仕方ない。と車窓に目をやった。
今日の服装は、町のちょっとした良いとこのお嬢さんスタイルである。色味は明るいが、フリルもいつもより少ないし、足元も散策用に歩き易いものにしてある。
アレクシスも同系色の服で、そこそこカッチリとしているが貴族の、しかもローラン家のご子息様とは思えない軽装なので2人は街に溶け込みやすいと思われる。
馬車を下車し、御者には迎えの時に連絡をすると言って帰ってもらった。
「アリシアちゃん、まずどこから行こうか?リボンかな?リボンを見に行く?」
私も宝石が大好きで、着飾るのも大好きなので、今日のコーディネートも大変楽しかったが、弟のアレクシスもアクセサリーの類いやお洒落が大好きだ。
自分というよりも、私を飾ることが好きな傾向があり、絶対に地味な色味の私を飾るよりも自分を飾った方が楽しいだろう配色を持っているのになぁと不思議な気持ちになる。
「このサファイアの付いたリボン!絶対アリシアちゃんに似合うよ!買おう!ふたつ買おう!」
綺麗な深い海をふたつに割ったような石を乗せたリボンを入るなり見つけて買ってしまう。
「これも可愛い!これも、これも良いなぁ!」
いいお客だが、1件目でこれでは荷物で前が見えなくなってしまうのはすぐだろう。
「アレクシス、今日は1日回るのでしょう?御者にも帰ってもらったのだから、1軒につき1点にしましょう。」
ガーンという効果音が聞こえそうなのに、素直に品を戻していくアレクシスに苦笑して、最後まで手にあった黒曜石の付いたリボンを店主に渡し会計をする。
「アリシアちゃん、1点じゃなくていいの?」
「私はいいの。」
そう言って包装を断り、その場でアレクシスに向き合う。
「これはあなたが付けなさい。」
黒い石に黒いリボンで、形がタイになっているので男の子が付けても問題なさそうであるし、そもそも顔が良い、顔以外も良い弟であるので今日の服装でもつけられそうだと思ったのだ。
アレクシスはポカンとした後、一気に赤面して俯いたかと思うと、上気した顔を上げて「ありがとう」と慎重にリボンを受け取った。
すぐに着けたタイは、寒色系の服に黒黒と輝き、とてもいいアクセントとなった。
「次は帽子が見たいわ。」
「アリシアちゃん、それなら最近流行りのマダムロカのお店に行こうよ。」
テクテクトコトコと街並みを縫って大きな通りを進んでいく。帽子屋に寄る前に、結局服屋を2軒、手袋屋を1軒寄り道した。帽子屋のあとは靴が見たい。と思いながら帽子屋のドアを潜ると、見覚えのあるピンクの髪が見えた。




