表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】追放魔術師のその後 ~なんか、婚約破棄されて、追い出されたので、つらい貴族生活をやめて遠い異国の開拓村でのんびり生活することにしました~  作者: 砂糖 多労
なんか、弟子がたくさんできました。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/189

魔の森で鍛えよう!③

 梯子をあがると、そこは何もない小さな部屋だった。

 窓が大きいのでさっきの部屋よりは大きいように感じるが、天井も低く、部屋のサイズも食堂の四分の一くらいしかない。

 十人も入ればぎゅうぎゅうになりそうだ。


 一言で言うと、普通の部屋だ。

 驚くようなものは何もないように思える。


「こっち!こっち!!」

「いい、眺め」


 リノとスイは大きな窓のそばで私たちを呼んでいる。

 その近くにはミーリアもいて、外の様子を眺めていた。


「うわぁ!」


 思わず声が出る。

 窓からは村や畑まで一望できる。

 そしてその向こうには魔の森が遥か遠くまで続いている。


 その眺めは、今まで見たこともないようなものだった。


「ちゃんと外が見えてるか?」

「レイン?」


 気づけば私の後ろにはレインが立っていた。


「ここから魔の森を監視するようにしておけば、何か異変が起きてもすぐ対応できるだろ」

「そ、そうかもしれないわね」


 レインにとってはこんなすごい景色も見慣れたものなのだろうか?

 少し寂しく思うと同時に、彼が普段見ている景色を私も見て見たい。そう思った。


 ***


「じゃあ、荷物を移動させてくれ。机とかベッドとかの大物は俺が移動させておいたから」

「わかったぜ!」

「すぐに、やる」


 アリアたちに何も告げずに家を作った。

 アリアたちに話すと、めんどくさそうだったので先に作ってから話をすることにしたのだが、どうやらうまくいったらしい。


 前世でも、何も用意せずに相談に行くと色々と無茶な注文をつけられるので、簡単に作れる部分は作ってから相談に行ったりしていた。

 その癖が出てしまった。

 まあ、かなり驚いてはいたが、うまく行ったようなのでよしとしよう。


 そうだよな。書類と家では次元が違うよな。


 だが作ったことに後悔はない。

 今まで使っていた家は壊れかけていた。

 家は最後の防衛ラインだし頑丈な方がいいと思ったのだ。


 アリアたちが新しい家の中を探検している間にベッドやテーブルなどの大きな荷物は移動してしまった。

 あの辺は『収納』の魔術でパパッと移動させたほうが楽だけど、まだ『収納』の魔術あたりはアリアたちにも話さないでおこうかと思っている。

 現代魔術で再現可能な部分を超えた魔術は彼女たちが十分に自己防衛できるようになってからでないと危ない気がするのだ。


 まあ、ほかにも隠してる魔術はあるし、隠してる魔術があることだけ告げておけばいいだろ。


 ***


 私物が少ないせいか、荷物の移動はすぐに終わったようで、しばらくするとリノとスイが俺の方へ走ってくる。


「レイン兄ちゃん! 早く魔術教えてくれ!」

「私も、教えてほしい。こんな家を建ててみたい」


 二人は俺の服を引っ張る。


「とりあえず、朝食にしないか? みんなに魔術について相談したいこともあるし」

「「えぇーーー」」


 二人は不満そうな声を上げるが、お腹から「ぐ〜〜」という音も聞こえてきた。

 お腹も空いているらしい。


「じゃあ、すぐに朝食を作りますね」


 ミーリアがそう言って真新しいかまどに向かう。

 こうして、また騒がしい一日が始まった。


 ***


「戦闘する際のフォーメーションを先に決めたほうがいいと思うんだけど」

「「「「「ふぉーめーしょん?」」」」」


 朝食を終えて、テーブルに全員がついているタイミングで俺が声をかけると、5人はわけがわからないというように首を傾げる。

 フォーメーションが通じないのか。


「そうだな。立ち位置とか、役割とかそんな感じだ。ぶっちゃけ、一年も真面目に魔術の練習をしていればオールマイティになんでもできるようにはなると思う。でも、昨日みたいなことがまた直ぐにおきないとはいえないだろ?」

「それもそうね」


 昨日は危うく命を落とすところだった。

 危険は俺たちの成長を待ってくれないのだ。


「だから、手っ取り早く強くなるために、ちょっとだけ危ないことをしようと思ってる」

「え? 危ないことを?」

「いや、そこまで危ないことじゃない。最悪俺もフォローに入るし」


 青ざめるアリアにすかさずフォローを入れる。


「そ、そうね。レインが助けてくれるなら大丈夫か」

「まあ、それで、危険なことをするから、全員が個々に動くより、方向性を決めて補い合えるように鍛錬した方がいいと思うんだ」

「なるほどね」


 どうやら理解が得られたようだ。

 アリアとの会話で他の四人もちゃんとわかったようだ。

 俺の話の続きを待っている。


「で、俺がみんなにおすすめするフォーメーションはこれだ」


 斥候:リノ

 前衛:アリア

 後衛:スイ

 支援:キーリ

 回復:ミーリア


「ちょ、ちょっと待ってください。レイン。私が回復魔術を使うんですか?」

「そうだけど? 何か問題あるのか?」


 俺がフォーメーションを発表すると、ミーリアが声を上げた。


「……レインは知らないかもしれませんが、私は徳が高くないので『回復』の魔術が使えないんです」

「え? なにそれ?」

「? レインも知っていますよね。特別徳の高い人でないと『回復』の魔術は発動しても傷を治せません。私も昔、『回復』を教えていただいたのに、小さな傷も治すことができませんでした」


 魔術が発動するのに、傷が治らない?

 なんだそれ?


「ちょっとやってみてくれるか?」


 俺はそういって指先を少し傷つけ、ミーリアの前に差し出す。


「……わかりました。『回復』」


 ミーリアが回復魔術を発動すると、光が傷口に集まっていく。

 だが、光が消えた後、傷が残ったままだった。


「このように、魔術は使えているはずなんですが、傷が回復しないのです」

「あー。これはミーリアが傷の治し方を理解していないからだよ。ミーリアって今まであんまりケガとかしたことないでしょ?」

「え? まあ、そうですが……」

「回復魔術はね。体の仕組みや傷が治るメカニズムを知らないとちゃんと発動しないんだ。間違って過回復とかしないようにセーフティーがかかってるんだよ」

「は?」


 ミーリアは素っ頓狂な顔をして俺のほうを見る。

 いつも優しく微笑んでいる彼女のそんな表情を見るのは初めてだった。

 明日も二話更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 傷の治り方を理解していないと回復魔法が発動しない…つまり徳が高い=いっぱい傷付いた経験の有る人=痛みを知る者と妙な納得をしました。  まさに「涙の数だけ強くなれるよ」ですねwww
[気になる点] 身体強化が使えないのに、アリアが前衛って厳しくないですか? 現状は前衛無しでアリアも後衛にし、遠距離からの攻撃で守りを固めて、隙をついて斥候のリノがダメージを稼ぐ、とかが無難に感じまし…
[気になる点] フォーメーションという言葉がスポーツやゲーム的に感じてしっくりこない。「役割を変えてみよう」とかの方がスっと入ってきます。あとは主人公が「フォーメーションが通じないのか」って言った後に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ