魔の森で鍛えよう!②
引き続きアリア視点です。
「あ、みんな来たのか」
私たちが目を大きく開けて新しくできたお城を見上げていると、お城の二階部分の窓からレインが顔を出す。
「ちょ、ちょっとレイン! これ何よ!」
「何って、俺が魔術で建てた家だよ。あ、一階部分はその家と同じ間取りになってるから」
「はぁ?」
私にはレインが何を言っているかわからなかった。
魔術で建てた? 家を?
「そんなことできるわけ――」
「おぉ! ほんとだ。今までのところとそっくり!」
「テーブル、持ってこないと」
私がレインと会話をしている間にリノとスイが家の中に入っていく。
「あ! ちょっと、リノ。危ないわよ!」
「だいじょうぶだって。キーリねぇ! レイン兄ちゃんが作ったものなんだから」
「いや、だからって……」
距離をとっているキーリをよそに、スイとリノはさっさと家の中に入っていってしまった。
「あぁ。リノ……」
「……まあ、ここで見ていても仕方ないでしょう。私たちも中に入りましょう」
まだ逃げ腰のキーリにミーリアは声をかけて家のほうへと歩いていってしまう。
「でも、ミーリア。魔術で建てた家なんだよ? 崩れてきたらどうするの?」
「その時はレインに文句を言ってやりましょう。まあレインだから大丈夫だと思いますけど」
ミーリアはそれだけ言い残して家の中へと入っていってしまう。
外には私とキーリだけが残される。
「……ここで突っ立っていても何も変わらないし、私たちも中に入りましょ」
「えぇ!? でも、アリア!」
「キーリが入りたくないなら、外にいてもいいわ。大丈夫そうだったら呼びに来るから」
私は意を決して家の中へと入っていく。
「ちょ、ちょっと待って! 私も行く!」
キーリは私の後を追いかけて家の中に入ってくる。
家を入ってすぐの部屋は私たちの家の食堂と同じ作りの部屋だった。
いつも食事をとったり魔術の練習をするために使っているテーブルがないせいでやけに広く感じるが、かまどや入ってきた扉のサイズなんかも考えるとこんな感じだった気がする。
「私たちの家とそっくり……」
後ろから入ってきたキーリもそう呟く。
どうやら、私とおんなじように思ったようだ。
「お、二人とも入ってきたのか」
「あ、レイン」
奥の扉が開いて扉の向こうからレインが出てくる。
「3人はもういろんなところを見て回ってるぞ」
「ちょっと、レイン!」
私は一言だけ告げて奥へと向かおうとするレインを呼び止める。
「この家は何よ!」
「さっきも言っただろ? 魔術で作った家だよ」
こともなげにそう告げるレインに一番気になっていたことを聞く。
「魔術で、って……。この家は、消えちゃったりしないの?」
「あー。そこを気にしてたのか。大丈夫だよ。ちゃんと石の家として安定してるから消えることはないよ。リノとスイが作った土や水も消えてないだろ?」
「確かにそうだけど……」
こんなものが魔術で作れるなんて考えていなかった。
「まあ、リノもキーリもそのうち家くらい簡単に建てられるようになるよ」
「えぇ!? 私も?」
いきなり話を振られたキーリは大きな声を上げて驚いている。
当然だろう。
家を作るなんて、物語に出てくる魔女くらいにしかできないことだ。
それを自分ができるようになるなんて信じられないに違いない。
「レイン兄ちゃん! この家すごいな!」
「いい、眺めだった」
レインの奥から興奮気味のリノとスイが出てくる。
「あ! キーリねぇ! こっちきてくれ! すごいものがある」
「アリアも、こっち」
「え? 何よ?」
「ちょっと。引っ張らないで」
私たちが二人に引っ張られて奥に行くと、廊下の突き当たりに階段があった。
どうやら、上にも部屋があるようだ。
「こっちこっち!」
「ちゃんとついていくから引っ張らないで。転んじゃう」
リノたちが見せたいものは上にあるらしい。
だが、引っ張られながら階段を上るのは危険だ。
転んでしまえば怪我では済まないかもしれない。
「じゃあ、ついてきてくれよ」
リノとスイは私たちの手を離して階段を上がっていってしまう。
私たちは二人の後に続いて階段を上がった。
二階は吹き抜けのひとフロアになっていた。
「うわ」
「広い」
所々に柱があるが、壁もなく、男子部屋と女子部屋と食堂がひとつになった広い部屋だ。
「魔術の練習とかは今度からここでしようかと思ってるんだ。広さがあったほうがいいことも多いからな」
私たちの後ろから上がってきたレインがそういう。
確かに、石が剥き出しでどこか、実家の訓練場のような雰囲気がある。
「あれ? リノは?」
「そういえばスイもいない。ミーリアも」
先に上がっていった二人の姿が見当たらない。
私たちがキョロキョロと見回していると、天井からひょこっとリノとスイの頭が生えてきた。
「二人とも、早く来いよ! すごくいい眺めだから」
「こっち、くる」
よくみると、天井に穴が開いており、その下に梯子がかかっていた。
あの梯子を使ってさらに上に行けるのだろう。
あの梯子の上が彼女たちの見せたいもののようだ。
夜にもう一話更新します。




