戦争の最前線②
「そういえば、あの砦でケガを受けた娘。たしか、マーレンといったか? 彼女はまだ治せていないのかい?」
「はい。やはり、かなり傷が深いらしく、治療は難航しているようです」
砦を攻めた魔物は執拗に城主代理を狙ったらしい。
戦時中ということで王都から城主代理をしにきていたマーレン嬢が集中攻撃を受けたそうだ。
「おそらく、相手はこの情報を知っていたんだろうね」
「マーレン様は第二王子の学友ですから。第二王子の関係者であれば簡単に知ることができたかと」
敵は指揮官である城主代理を執拗に狙ってきた。
人が操っているのであれば指揮官を集中して狙うのはわかる。
指揮官は貴族で魔物に有効な攻撃ができる魔術師であることが多いから魔物を使った作戦として間違いではない。
そこはいいのだが、その場にいた兵の話によると城主代理がマーレンだとわかっているかのような動きをしていたそうだ。
マーレンが未熟な魔術師だということもわかっていたようで、数匹で被害を承知で突っ込んできて攻撃を加えていたらしい。
第二王子の関係者が敵国にマーレンがこの砦に詰めていることを知らせたのだろう。
マーレンの家は第二王子派から第三王子派に鞍替えしたばかりで忙しかった。
そのため、経験の浅いマーレン嬢がこの砦に詰めさせられたのだ。
落とされた砦はいつもの戦いであれば物資の集積程度にしか使われていないところだ。
攻撃を受けることなんてまずないため、経験の浅いマーレンでも十分に守れると思ったのだろう。
だが、その予想はハズレ、砦は魔物を使った襲撃を受けた。
「全く。厄介なことをしてくれる」
「しかし、第二王子はまた支持者を失ったとの話です」
「そうだろうね」
敵対派閥に移ったとはいえ、友人を敵国に売り飛ばしたのだ。
支持は得られるはずがない。
結果として、第二王子派は支持する貴族がかなり減り、第三王子と第二王子の間のパワーバランスはほとんど拮抗するレベルになってしまった。
「第二王子派の力がそげたのはうれしいが、暴発しやすくなったともいえるね」
「……そうですね」
こういう理由で王子を見限る貴族は大抵良識ある貴族だ。
戦争をしたい第二王子派についているという時点で良識あるとは言い難いかもしれないが、比較的まとも寄りの貴族が第二王子派から離脱したことになる。
つまり、第二王子の暴発がまた早まったとも言えるかもしれない。
(ほんとは内戦になんてなってほしくないんだけど、……不可避だろうね)
第三王子を王にしようとする以上、戦好きの第二王子が内戦まがいのことをすることは目に見えている。
第二王子派には有名な武官なんかも多くいるし、政治的な勝利が不可能となれば武力に訴えてくるのは間違いない。
内戦すら起こせないほど勢力をそげればいいのだが、そこまで行く前に武力行使に打って出てくるだろう。
できることはその暴発までに第二王子派の勢力を可能な限り減らし、内戦を早期に終結させるくらいだ。
「なんとか、暴発するまでに勢力を削いでおきたいところだね」
「そういう意味では今回の戦争は助かりましたね。第二王子派の主要貴族が先陣に配置されましたから」
第二王子も状況が悪いと思ったのか、戦場に自ら足を運んできた。
その上、今回は一番危険な先陣を第二王子自ら買って出た。
さすがにそれは認められず、第二王子自身は本陣にいる。
代わりに第二王子の腹心ともいうべき大貴族が先陣の総指揮をとり、先陣のほとんどが第二王子派の貴族で占められることになった。
つまり、先陣の受けるダメージはすべて第二王子派が受けることになる。
今回の戦争ではかなりの被害が出るだろうから、先陣を務める第二王子派の貴族はかなりの貧乏くじを引かされたことになる。
「そうだね。……いや、どうだろう」
「何か不安な点があるのですか?」
「敵は魔物を使う。先陣が一番危険だとは限らない」
「たしかに。そうですね」
普通であれば、敵軍と最前線で対峙する先陣が一番危険だと言える。
だが、今回の敵は一体で一軍に匹敵する魔物を使ってくる。
魔物は隠密性にも優れているため、どこから攻めてくるかはわからない。
前回も、砦の近くの森からいきなり現れたとの報告を受けている。
むしろ、先鋒より側面や後方の方が危険かもしれない。
「いかがしますか? 今からでも側面や後方に移動していただきますか?」
「‥…いや、今のままでいいだろう」
魔物という脅威があるとはいえ、敵軍の脅威がなくなったわけではない。
第二王子派は敵国と内通していることは分かっている。
敵国の前に置いておけば敵国に対するいい盾になるだろう。
「そうですね。今から軍の隊列を変えるのも大変ですし」
「それもあるね」
すでに敵国も軍を配置している。
開戦はおそらく数日中だ。
もしかしたら今日かもしれない。
そんな状況で大きく軍を動かすのは危険が大きい。
隊列を変えている間に攻め込まれればことだからな。
「申し上げます。左翼側の森から魔物が現れました!」
「来たか!」
そんな時、魔物が現れたとの知らせがアリシアのもとにもたらされた。
すみません。戦争始まりませんでした。
感想でアリシア(アリアの叔母)とアーミリシア(レインの元婚約者)の名前が似ててわかりにくいという意見がありました。
ややこしくてすみません。
裏話ですが、初期案ではアリアとアーミリシアはそっくりさんという設定で、「ア」ーミ「リ」シ「ア」からアリアという名前を考えました。
それで、アリアの叔母ということで似たような名前と思ってアリシアという名前になってます。
その設定は書いてる途中で無くなっちゃったんですけど。
名前を変えれればよかったですね。
続きは来週更新予定です。
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