魔物を倒そう①
「じゃあ、今日の探索はこの辺で切り上げるか」
俺たちは探索に来ていた。
ポーションの材料もそろったので、今日はまたブラックウルフの多くいるエリアに来ている。
ポーションづくりなどで結構な長い間、ブラックウルフがほとんどいないエリアやグレイウルフのいるエリアを探索していたので、このエリアに来るのは久しぶりだ。
準備をちゃんとしていたため、何度かブラックウルフに出会ったが、特に問題は発生しなかった。
実際は準備以前の問題だったのだが。
「思ったより楽勝だったな」
「ブラックウルフの状態異常が一人ずつしかかけられないなんてね」
「運が悪ければ二人位は一度にかかりそうだったけどな」
「でも、目を合わせた相手にしかかけられないとは思わなかったわ。ポーションはいらなかったわね」
俺は村への帰路でキーリと話をしていた。
ブラックウルフの状態異常攻撃には弱点があった。
ブラックウルフは状態異常の『恐慌』を目を合わせている相手だけにしかかけられなかった。
しかも、目を合わせている間しか『恐慌』の状態にはしておくことができず、目をそらせば『恐慌』状態は解ける。
おまけに、状態異常をかけている間はブラックウルフは行動が激しく制限されるようで、動きがかなりゆっくりになってしまっていた。
あれなら、複数人いれば逃げるのも容易だろう。
『恐慌』状態になっている仲間を担いで逃げればいいのだから。
「それに、少し考えれば分かることだったかも」
「どうして?」
「あれを複数人にかけられたら強すぎる」
「確かに」
複数人を行動不能にするような魔物はこの辺りの魔力濃度にしては強すぎる。
ブラックウルフは複数人でいれば対処は簡単だ。
アリアたちにとってはだが。
普通の人には十分に脅威だろう。
アリアたちが結構な魔力量になっているから、『恐慌』状態になっても気を失ったりしないだけだ。
普通の人であれば、複数人いても、『恐慌』になったそばからパニックに陥っていき、まともな行動がとれなくなる。
そうなれば逃げることもままならなかっただろう。
やはり、一つ前のエリアで鍛えていれば魔の森は十分対処できるようになってるらしい。
なんでそんな風になっているのかはわからない。
でも、損があるわけでもないし、問題ないか。
「キーリの作ったポーション。無駄になっちゃったな」
「いいのよ。足りないよりは」
「でも、百本はいらなかったな。持ち運ぶのも重いし」
薬を使わずに対処する方法があるんだから、ポーションは必要ない。
むしろ、ブラックウルフの視線をそらさせればいいんだから、ポーションよりそっちの方がいいだろう。
ポーションも荷物になるし、必要以上は持ち運ばない方がいい。
せっかくたくさん作ったが、明日からは十本くらいでいい気がする。
「余ったポーションはジーゲさんに売っちゃうか?」
「それがいいかもしれないわね」
せっかく作ったのだ。
捨ててしまうのは少しもったいない。
それであれば、ジーゲさんに売ってしまったほうがいいだろう。
ポーションを使って別のものを作ることはできるようだが、それをするためにはキーリの魔力量が足りない。
今のペースで魔力を伸ばしても一年はその魔力量には届かない。
そんなに長くポーションは持たないし、売ってしまうほうがいいと思う。
「でも、『恐慌』を防ぐポーションとか売れるのかな?」
「ミーリアが隣国で同じような魔法を使う魔物がいるといっていたし、大丈夫じゃないか?」
「私が万能の状態異常用のポーションを作れればよかったんだけど」
「素材が手に入らなかったんだから仕方ないだろ」
回復ポーションと違って『恐慌』を直すポーションは使い道が限られる。
だが、ミーリアが隣国で同じような症状にする魔物が出るといっていた。
近い魔の森から出る魔物であればおそらく同じ『恐慌』状態にする魔物なんだと思う。
状態異常全般を直すポーションは作り方はわかっているが、それを作るのに必要な素材は今手に入れることができない。
『恐慌』状態を直すポーションであればブラックウルフが出るエリアでぎりぎり手に入れることができる。
どうやら、魔物の影響を受け、その魔物に対抗するように植物が変化するらしい。
魔の森ではそのエリアにいる魔物に対抗する素材が取れやすいのだ。
逆にいうと、そこで取れる素材からそこの魔物がなにをしてくるかを予想することもできる。
例外はあるが。
前に俺が修行していたようなところだと例外が半分くらいだったから気にしてなかったけど、次からはキーリにその辺も注意してもらった方がいいかもな。
「呼びましたか?」
「あ、ミーリア」
俺とキーリが話をしていると、ミーリアが会話に混ざってきた。
今は帰りで主に索敵役のリノと先頭を進んでるアリア以外は暇だからな。
すでに森の浅い部分まで来ているし、ここまでかえってこれればグレイウルフは一体ずつしか出てこない。
グレイウルフの一体であれば一人でも倒せるだろう。
「実は、余分な分の『恐慌』状態を治すポーションをジーゲさんに売れないかと思ってな。ミーリアが近くで『恐慌』状態にする魔物が出る国があるって言ってただろ? その国に輸出できないかと思ったんだけど、できるかな」
「なるほど。確かにそうですね」
言葉とは裏腹にミーリアは少し困ったような顔をする。
「? 何か問題あるのか?」
「実はその魔物が出る国が今交戦中の国で、敵国の利益になるようなものが売れるかどうか」
「あー」
そういえば、この国は隣国と戦争中なんだったか。
どうやら、その隣国が例の魔物が出る国だったらしい。
敵国に利益があるようなものは大々的に売ることはできないだろう。
どうやら、ジーゲさんは辺境伯様のお抱えの商人のようだし、ほかの商人以上に国の利益とかは気を使っている気がする。
「隣国とはそこまで真剣に戦争をしているわけではないので、外交に使えるかもしれません。次にジーゲさんが来たら聞いてみますね。ポーション瓶が手に入ったらすぐに来てくださるとのことだったのでもうすぐ来ると思いますから」
「ホントか? 頼むよ」
「わかりました」
どうやら、キーリの作ったポーションはごみにはならなさそうだ。
結構作るのが大変そうだったから無駄にならずに済んでよかった。
できれば早くジーゲさんが来て無駄にならないという確証がほしいな。
最悪、俺の『収納』の中で死蔵すればいいか。
最近公然の秘密みたいになってて、腐らせたくない食べ物とかも保管させられてるし。
俺たちは雑談を交わしながら村へと戻った。
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