終電まであと数分の駅まで数分の話
心が壊れるまで仕事を続けるのは止めましょう。
私はとある小さな会社で働いている。
主に担当するのはデバッグ関連で、毎日バグを探しては潰すという無限ループのような作業を繰り返している。最近ではもう、私がバグを潰しているのか、私がバグで潰されているのか、良く分からない状態だ。
この会社にも数年前まではそれなりの人数がいた。ただ、デバッグ関連の作業をしている人間が順番にいなくなるのだ。今にして思えば、彼らもバグで潰されてしまったのだろう。
私は今日もギリギリの時間まで残業をしてから駅を目指していた。左腕に着けた時計を見る。
――終電まであと数分。
仕方がないので駅まで少し走ることにした。
私は改札口を抜けると、急いでホームへと向かう。オレンジ色の案内板が示す先に、終電の到着するホームがあるのだ。どうやら間に合いそうだ。腕時計はまだ余裕のある時間を示している。ホームへ到着すると、電車の乗降口へと向かった。
そして私は改札口を抜けたので、腕時計を確認しながらホームまで走ることにした。この調子なら多分間に合ったという感覚がある。ホームへ降りると、電車の乗降口へと駆け込んだ。
さらに私は改札口を抜けた後で、オレンジ色の案内板に向かって駆け出した。その先のホームを目指しながら左腕の時計を見ると、なんとか間に合ったようだ。ホームへ滑り込むと、急いで電車の乗降口へと飛び込んだ。
やがて私は改札口を抜けながら、終電が到着するホームへ全力で走るべきだと思った。左腕の時計は際どい時間を示している。階段を大慌てで駆け下りながら、ホームに到着している電車は扉が閉まる寸前だったが、大急ぎで乗降口へと身体をねじ込む事が出来た。
ついに私は改札口を抜けられなかった。もうオレンジ色の案内板を見る事もない。ホームでは終電が発車しているだろう。缶コーヒーを買って一気に飲み干した。
左腕の時計はもう動いていない。
私は駅を出るために、ゴミ箱へ空き缶を放り投げた。
そして私はゴミ箱へ空き缶を放り投げた。
無限ループってこわいよねという話。