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ショートストーリー  作者: 美月×Aoi
囚われた男
6/12

そこで5度目の雷鳴。


かなり近くで鳴り響いたのか、叩きつけるような音と共にに室内の電力が落ちる。


停電なのかと懐中電灯を手に持ちながら考える。


これは、暗闇になった今がチャンスでは。


いや....


ここで刃を振るえば、俺の美学に反する。


歯を噛み締める。



我が主、いや、しみったれのクソジジィ。


お前の命も後僅かだ。



暫くして、電力が元に戻ると

客人を迎えに、俺はドアに手をかける。


ドアから見える景色は、相変わらず憂鬱な気分にさせられる。


代わり映えのしない鬱蒼とした森。


この小高い丘に建っている洋館全体が牢屋のようで、嫌気が差す。


だが、今日だけは気分が良い。


雷鳴が鳴り響くことで、まるで俺を地獄に歓迎しているかのようだ。



来客を迎え入れ、主人の元に案内する。


そこで六度目の雷鳴が鳴り響く。


また、電力が落ち室内が暗闇に包まれる。


六度目の雷鳴は、俺への合図。



去らばだ。クソったれのしみったれのジジィ。


地獄に墜ちた。


だが、その地獄は同じではない。


クソジジィが死んで俺は生きている。


この黒雲の空も、鬱蒼とした森も

小高い丘の上に洋館全体が何も変わらない俺の地獄だ。






なのにどうして涙が出るのだ?


哀しみの涙


否、これは歓喜の涙だ。


呼びたくもないお前を主と呼び、服従し続けた

地獄に居座り続けた己への涙。


自由の涙。


さて、気分が良い。

これから祝盃をあげるのに相応しい宴をするとしよう。


おや?

そう言えば来客が居たのだったな。


エスコートをしてやろう。


7度目の雷鳴で、とうとう俺は一人になった。


                    END



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