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②
心の中でついたため息を気付かれてはならない。
何故ならば、初老のこの男に隙を見せてはならない。
漸く、自分の意思で自分の身体を動かせる。
右手、左手
右足、左足
よし...。問題ない...。
チラリと見えるうざったい焼き印が見えるが
善しとしよう。
これからすることに、気付かれてはならない。
悟られてしまえば、全てが無に返す。
ドーーーーーーンと大きな雷鳴が鳴り響く。
雷鳴が鳴り響く前に
窓辺から見える青白い稲光が部屋にまで入ってくる。
3度目の雷鳴。
相変わらず鳴っているな。
俺は、その音を聞き逃すまいと神経を集中させる。
どんどん鋭利になっていく神経。
その時、来客を告げるベルと雷鳴の音が重なる。
4度目の雷鳴。
まだだ....。
まだその時ではない。