表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4話

対策本部のメンバーに再び召集がかかったのは、


一週間後のことだった。


開発責任者であるマツムラは、重い口調で、


「KITTの精密検査の結果が出ました。」


と、こう切り出した。


メンバー全員が身を乗り出し、次の言葉を待つ。


マツムラは、全員の不安そうな顔を見渡し、


一呼吸置いてから、こう告げた。


「結果は、異常なし、です。」


メンバーに、どよめきが沸き起こる。


「異常なし!?」


「ばかな、それでは何だと言うんだ!」


「運転手の狂言か?」


「いや、実際に利用履歴が合致しないんだ。」


「じゃあ異常なし、なんてありえないじゃないか。」


マツムラが言葉を継ぐように、


「そう、ありえないんですよ。」


こう言った。


場がしんと静まり返る。


「現在、警察と協力しながら、原因を究明中です。」


「警察に届けだされている、行方不明者の捜索願いに、


原因究明の糸口があるのではないか。と、考えたのですが。」


「行方不明者の捜索願いは、この奇妙な現象が起こるようになってからも、


件数自体は、従来と変わらないそうです。そして、」


全員、固唾を呑んで、次の言葉を待った。


「ご存知の通り、他のKITTでは、


同じ現象は報告されていない。」


「そこで、次なる施策ですが。」


マツムラはゴホンと咳払いをした。


「ここからは、他言無用にてお願いします。」


「彼のKITTに、防犯カメラを仕掛け、


実際の営業風景を撮影します。」


しんと静まり返った場内が再びざわめいた。


社長が立ち上がり、抗議を述べる。


「精密検査に出ない、何らかのトラブルがあったのかもしれない。


通常通りに営業するのは、危険ではないか。」


周りも、その発言に同調し、頷いた。


「しかし、何度、通常の営業時と同等の条件でテストしても、


異常は認められないんです。


説明がつかないが、実際の営業の時にしか、


起こらない何かがあるとしか思えない。」


続いて、秘書が発言する。


「そもそも、防犯カメラの設置自体、違法でしょう?」


この時代、KITTに、防犯カメラなどの、記録媒体を設置することは、


個人情報保護の観点から、法律で堅く禁じられていた。


マツムラは、「そうです。ですから、カメラの記録は、乗客の後姿のみ。


そして閲覧後、すぐに消去します。」


「また、警察の指導のもとで撮影を行いますので、


これは違法ではありません。」


「だが、防犯カメラを設置したということが世間に知れれば、


大変な混乱になる。我社の信頼を著しく損なう事になるだろう。」


マツムラは深くため息をつき、こう答えた。


「だから最初に、他言無用にとお願いしたのです。


それに、このまま原因も分からないまま放置しておく事のほうが、


よほど信頼を裏切ることになります。」


「確かに・・・それは・・・」


反論できず、考え沈むように、皆が黙り込んでしまった。


「他に異論のある方はおりませんか?」


誰も応えるものはいない。


「では、これにて解散とします。画像の閲覧については、


追って通達します。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ