第1話
ここは、今より未来の日本。
数十年前、「車のオートメーション化による法律」が
施行されてからというもの、車は、一部の大金持ちしか
所有できない、超高級品となった。
その新しいオートメーションシステムを取り入れた車は、
「KITT」・・・通称「キット」と言う名称がつけられている。
行き先を言えば、完全自動操縦で、目的地へ連れて行ってくれる。
騒音や振動は一切なく、快適な乗り心地。
そして、全てのKITTは、コンピュータで制御されており、
KITT同士の接触はもちろん、人や、物へぶつかることも、
けしてない。
ソーラーエネルギーなので、
ガソリンによる排気ガスを撒き散らしたりもせず、
補給すら必要ない。
それゆえに超高級品というわけだ。
このKITTが開発されてから、車による交通事故は、ほぼ皆無になったという。
KITTを個人で所有するのは、一部のお金持ちだけだ。
そのほかは、もっぱら路線バスや、
タクシー専用車両として利用されている。
タクシーなどは、携帯電話で、3桁の番号を押すか、
専用乗り場で待っていれば、
KITTが自動的に、迎えに来てくれるという、
利用方法も大変手軽なもの。
支払い方法は、目的地に着いた時、現金を専用ボックスに入れるか、
カードをかざせば、自動的にドアが開くシステムになっている。
料金も、タクシー会社自体が国の補助を受けた公共事業なので、
かつてのタクシーよりも格安で、利用者は多い。
ここに、タクシーの運転手がいる。
彼には視力がない。
KITTは音声認証になっていて、登録者の声で動く。
乗客を乗せるときも、一番近くを走っている、空車のKITTが自動的に
乗客のもとへ向かうようになっているので、
運転手に視力は必要ない。
よって、公共事業であるタクシー業は、福祉政策の一環として障害者を雇う事もあるのだ。
ところが最近になって、この運転手は、
不可解な現象に悩まされることになる。
タクシー会社は、KITTの致命的な欠陥になるかもしれないその現象を、
看過することは出来ず、事情を聞くために
彼を対策本部へ招いていた。