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第一話 旅立ちの一歩。

僕の名前はリーフ・アレイド。18歳の学生。両親はいない。病弱な母は僕を産んですぐに天に召されたらしく、顔も分からない。父は数年前に仕事に行き、そのまま帰らぬ人となった。


両親の遺した遺産と、日々のギルドの仕事で生計を立て、現在一人で生きている。


僕の父は冒険家というなんとも変わった人で、僕が生まれるまでは世界中を旅してたらしい。僕が生まれてからはギルドで働いていたが、旅していた時の思い出を時折語ってくれて、それがとても好きだった。


これまで学校をただ卒業して、なにかしらの仕事に就くのだろうと漠然と思っていたが、病室で色々と考えを巡らせているうちに、果たしてそんな将来でいいのかと思い始めた。


父が語ってくれた世界の話、見知らぬ土地や人、新しい体験、それらを僕も経験したいと思ったのだ。いや、本当は小さい頃から思っていたのだ。


日々を生きていくだけなら、今の生活のままで十分だ。

けど、父のように広い世界を僕も知りたい。きっと辛いこともたくさんあるだろう。もしかしたら旅に出て直ぐ死んでしまうかもしれない。


これまであの二人と過ごして出来た良い思い出も沢山ある。ただ、二人といることでした嫌な思いも沢山ある。

どちらにせよ、今の僕の世界はあの二人の影響が大半を占めていることに間違いはない。


けれどもう今の日常をこれからも続けていきたくはない。あの二人と離れて、僕個人を見てくれる人達に出会いたいのだ。






…ふと気付いたら夜が明けていたようだ。




長い考え事だったが、もう決心は着いた。僕は旅に出る。



☆☆



お昼過ぎに学園長がお見舞いに来てくれた。その時に今の気持ちを話し、学園を退学したいと申し出てみた。


学園長は驚いていたものの、反対はしなかった。僕の気持ちをしっかりと聞いて受け止めてくれたのだ。ただ、退学でなく、休学を勧められた。いつか気が変わるかもしれないから、その時のために在籍しておくように、とのこと。


少し考えたが、その通りにしてもらった。正直休学しても復帰する気はないが、学園長も今回の事件に対して僕への申し訳なさがあるらしいので、言われるままにしておいた。


また、旅に出ることを話したら食い付きがよく、是非行きなさいと賛同されてしまった。どうやら学園長も若い頃世界を旅したらしく、旅に役立つ魔道具などを沢山くれた。


特に、収納機能が付いている指輪の魔道具は、大変ありがたく、便利な代物だった。お金を支払うと言ったが頑なに受け取ってはくれず、これから旅立つ若人への贈り物だと言われてしまったので、深くお礼を言っておいた。


ついでに厚かましく幾つかお願い事をしたが、全て快く引き受けてくれた。


☆☆


退院して直ぐに自宅に戻り、旅支度を急いで進めた。元々荷物は少ないため、数時間で終わってしまったので最初の目的地を決めることにした。


この世界は一つの大陸で繋がっていて、大別して五つの国から成っている。東西南北とその中央にバランスよくそれぞれ設立されており、僕がいるのはその北の国だ。


まあ特に決めていた場所があるわけでもないので、とりあえず中央の国へ行くこととした。ちなみに別の国へ行くときは入国に正式な身分証明書が必要となる。本来学園を卒業すれば貰えるものなのだが、ありがたいことに今回特別に学園長が手配してくれた。


中央の国は最も大きな国である。街や村が多く、各地に名産物があるらしい。僕は料理が好きなので、知らない食材との出会いに胸を膨らませた。


また、王のいる中央都市は、全世界の若者の憧れである聖騎士たちがいる。彼らは王に忠実であり、各々が一騎当千の力を誇る。言うなれば精鋭集団である。


僕が通っていた学園にも過去に聖騎士となった人達がいるらしいが、ほんの一握りであり、一部の選ばれし者しか成れない職である。


僕も昔は憧れていたが、実際に聖騎士を見たことがなく、どれぐらいすごいか分からないため、今はそれほど興味が無い。


聖騎士よりも美味しい食事のほうがずっと興味があるというものだ。


まあ一番大きな国だから見所も色々あるだろう。とりあえず今日は明日に備えてもう寝ることにした。


☆☆


翌朝、朝の支度を終えた僕は、しばらく戻らないだろう自宅に別れを告げ、玄関の扉を開けて一歩踏み出す。


期待と不安でむず痒くなった胸を押さえながら、これからの旅に思いを馳せた。


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