07 初陣参貫
小隊の味方機は、敵の主力に“捕まった”ヴォルテたちを取り残した。
初手の奇襲にまんまと嵌められた時点で、今回の戦闘は既に勝敗が決している。
あとは、どれだけ敗北の傷を浅くとどめるか、なのだ。
作戦目的は、一人でも多く生き延びること。
となれば、二機を生かす為に一機を捨てるのは、当然の勘定であった。
「脱出装置が効かない」
隣席で叫ぶバンカに、ヴォルテが追い討ちをかける。
二度の強烈な打撃により、制御系にトラブルが生じたのか、それともフレームが変形したのか――いずれにせよ、緊急脱出ができない彼らの眼前に灰色のアーマシングが迫っている事実は覆せない。
「畜生、畜生、畜生! 俺達、こんなところで終わっちまうのかよ!?」
「終わらないよ」
やけに静かな戦友の一言に、バンカは押し黙って向き直り。
見れば、ヴォルテの黒い瞳は意思を帯びて渦巻いていた。
「何もかも、これからなんだ……こんなところで、死ねるか!!」
この眼をした時のヴォルテは誰にも止められない。
――――そう。何者にも、止められないのだ。
突如、二人を閉じ込めているコクピットが大きく揺れた。
それと共にメイン・モニターが暗転。
一瞬にして不気味な震動と暗闇に包まれ、バンカの喉奥から悲鳴が漏れそうになる。
しかし、一方のヴォルテは、やはり落ち着いて。
それどころか、安堵すらしているかのようである。
彼は、聴いているのだ。
「ドコーン……ドコーン」
その脈動を。
「ギュイィィィィィィ」
その、唸りを。
――そして、彼の落ち着きを裏付ける文字列が、暗転していたモニターに表示された。
<<ファーザー>>
*
敵アーマシングを潰しにかかっていたセルペ軍の兵士達は、乗機デュラハンのモニター越しに信じられないものを目撃した。
まずは、今しがた地面に吸い込まれていった敵軍のアーマシング。
次に、たったいま目の前に現れた、巨大な黒鉄色の巨体。
右腕に銀のドリルを具えた、異様な佇まいの――ドリルロボット『ファーザー』の威容を目撃したのだ。
*
メイン・モニターが復活したとき、ヴォルテとバンカは敵のアーマシング・デュラハンを見下ろしていた。
「ドコーン……ドコーン」
体全体に染み、腹の底を突き上げるような脈動音を感じる。
青年ヴォルテ=マイサンは、その音を聞いた。
ドリルロボット『ファーザー』の音を――聞いた!
<<命令せよ、我が主>>
「よし――ファーザー、“手伝えッ”!」