表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/54

07 初陣参貫

 小隊の味方機は、敵の主力に“捕まった”ヴォルテたちを取り残した。


 初手の奇襲にまんまと嵌められた時点で、今回の戦闘は既に勝敗が決している。

 あとは、どれだけ敗北の傷を浅くとどめるか、なのだ。


 作戦目的は、一人でも多く生き延びること。

 となれば、二機を生かす為に一機を捨てるのは、当然の勘定さんすうであった。


脱出装置イジェクトが効かない」


 隣席で叫ぶバンカに、ヴォルテが追い討ちをかける。

 二度の強烈な打撃により、制御系にトラブルが生じたのか、それともフレームが変形したのか――いずれにせよ、緊急脱出ができない彼らの眼前に灰色のアーマシングが迫っている事実は覆せない。


「畜生、畜生、畜生! 俺達、こんなところで終わっちまうのかよ!?」


「終わらないよ」


 やけに静かな戦友の一言に、バンカは押し黙って向き直り。


 見れば、ヴォルテの黒い瞳は意思を帯びて渦巻いていた。


「何もかも、これからなんだ……こんなところで、死ねるか!!」


 この眼をした時のヴォルテは誰にも止められない。


 ――――そう。何者にも、止められないのだ。


 突如、二人を閉じ込めているコクピットが大きく揺れた。

 それと共にメイン・モニターが暗転。


 一瞬にして不気味な震動と暗闇に包まれ、バンカの喉奥から悲鳴が漏れそうになる。


 しかし、一方のヴォルテは、やはり落ち着いて。

 それどころか、安堵すらしているかのようである。


 彼は、聴いているのだ。


「ドコーン……ドコーン」


 その脈動を。


「ギュイィィィィィィ」


 その、唸りを。


 ――そして、彼の落ち着きを裏付ける文字列が、暗転していたモニターに表示された。




<<ファーザー>>




 *


 敵アーマシングを潰しにかかっていたセルペ軍の兵士達は、乗機デュラハンのモニター越しに信じられないものを目撃した。


 まずは、今しがた地面に吸い込まれていった敵軍のアーマシング。


 次に、たったいま目の前に現れた、巨大な黒鉄くろがね色の巨体。


 右腕に銀のドリルを具えた、異様な佇まいの――ドリルロボット『ファーザー』の威容を目撃したのだ。


 *


 メイン・モニターが復活したとき、ヴォルテとバンカは敵のアーマシング・デュラハンを見下ろしていた。


「ドコーン……ドコーン」


 体全体に染み、腹の底を突き上げるような脈動音を感じる。


 青年ヴォルテ=マイサンは、その音を聞いた。


 ドリルロボット『ファーザー』のこえを――聞いた!




<<命令せよオーダープリーズ我が主マイマスター>>




「よし――ファーザー、“手伝えッ”!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ