49 ヴォルテXファーザー
「滅びよォォォ! 侵略者ァーッ!」
アンナロゥの叫びを合図に、ユニコーン踏み込む。
対するヴォルテは、アヤは、ファーザーは。
「やるぞ! ファーザァァァ!」
ヴォルテの意思に応え、ファーザーの左前腕が花弁のごとく展開。
左腕に内蔵された全能出力器の異次元空間に、肘から先の無くなった右腕を突っ込む。
ユニコーンがパイルバンカーの射程まで踏み込んでくる。
ファーザーの胴体に、ヴォルテとアヤの座るコクピットに照準が合わせられた。
刹那、左の異次元より抜き放った右腕には――新たなドリル!
居合いドリルである!
虚を突く一閃横薙ぎに、突き出されたパイルバンカー・ランチャーを叩き折り。
返すドリルで左脚を――《《消し飛ばした》》!
ユニコーンは左右のバランスを失い、転倒!
「ドゴゴゴゴゴ――――ォォォォ――ン」
「キィィィ――――――――ン――」
可聴域を超えた脈動と回転の雄叫び。
右腕のドリルは、銀の螺旋刃に黒色の光を纏わせていた。
――触れた物を空間ごと削り取るドリル。殖種帰化船団において『破導ドリル』と呼称される、究極の破壊兵器である!
「まだ……まだだッ! 私は必ず、勝利するゥゥゥゥゥゥ――――!」
「タマはまだ奪られちゃいねぇ! ここからだぜぇ、ヴォルテェェェェェェ!」
片脚とパイルバンカーを失ってもなお、二人の男は執念を燃やす。
ユニコーンは下半身を丸ごと自切。
両腕を脚がわりに、転倒した上半身を建て直すと――胴体ブロックのトリプル・プラナ・ドライブが絶叫!
耳をつんざく音と共に、機体後方から青と赤の炎が噴き出す!
人馬の上半身が離陸!
ボディはロケット、頭部の一本角は槍の穂先。
自身を巨大な噴進飛翔兵器と化し、白い狂気の猛襲だ!
ファーザーが構えた左腕に、ユニコーンの角が深々と突き刺さる。
黒鉄の装甲に取り付いたユニコーンの右腕には、パイルバンカーの残骸――刺突杭が握られている!
バンカが、ガンナーシートで血走った目を剥いた。
「っしゃァ! 捕まえ――」
「――捕まえたッッッ!」
「――ィィィ――――――ン!」
ヴォルテの気迫が妄執を上回り。
ファーザーの双眸はまばゆく七色に明滅し、ドリルは破導の黒光を迸らせ。
囮にした自らの左腕ごと、 ユニコーンの上半身をドリルする!
白磁の機体は、黒色の螺旋刃に食い潰される。
そこに一切の容赦はなく。かけらほどの慈悲もなく。
破壊。ただただ、破壊のみが与えられていく。
「おのれ魔神め! 私を、このようなッッッ――――!」
「畜生ォォォ! 俺は、俺は、死なねェぞ!」
ユニコーンの中で、二人の男が吼える中。
左腕を千切り、右腕を引き裂き。
なす術を失った脳天から胴体にかけてを、ごっそり抉り。
そして最後に、一かたまりの残骸を地面へ放り捨てた。
右半分を削り取られたコクピット・ブロックの断面には、焼け焦げた血液が黒々とこびりついていた。




