48 一角×螺旋
連なり光線と伸びたガトリング砲の弾雨が、地を蹴ろうとしたファーザーの足を縫い止めた。
機先を制したユニコーン、大きく跳躍。
脚部のスラスターが青白い炎を噴いて、白磁の巨体が空を駆ける。
頭上からの杭撃!
かわしたファーザー、地表にドリル!
地中へ逃れた黒鉄巨人を、一角馬人は追撃開始。
地中穿行するファーザーの軌道に、地表スレスレをスラスターの推力任せに滑って追うユニコーン、パイルバンカーを連打!
小規模な地割れすら引き起こす追撃が、土中を掘り進むファーザーの背中を何度も掠めた。
サブモニターに表示される敵機ユニコーンの動きを見たアヤが、眼鏡のブリッジに指をあてて位置を正す。
「地中ソナーの開発はまだ終ってないハズなのに……!」
「こっちの動きが読まれてるのか?」
「――まさか、蓄積した戦闘パターンを解析したの!?」
ヴォルテはファーザーを更に地中深くへ穿行させ、パイルバンカーの射程から距離をとる。
アンナロゥとバンカの戦術を分析するべく、であるが――
「「勘だッ!」」
一連の行動をその一言でやってのけた二人が、どちらからともなく叫んだ。
アーマシング・ユニコーンのコクピット内は、今や異界じみた熱気と高揚に包まれている。
「大佐、ファーザーはちぃとばかし深い所へ逃げ込んだみたいッスよ。たぶん」
「キミもそう思うかい、バンカくん」
ファーザーの気配が遠ざかるのを本能的に察知して、ユニコーンはその場に着地。
脚部と腰部のスラスターは常にアイドリングの火を灯している。
「あの白い奴の音、普通じゃない。三つの音が重なり合って、和音みたいになってる――!」
「きっと、プラナ・ドライブを三基搭載しているのね。あの武器の威力からして、きっとエンジンから直接エネルギー供給を受けているわ」
ヴォルテとアヤはコクピットで顔を見合わせ、互いに頷く。
操縦棹を手前に引くと同時にフットペダルをべたりと踏み込めば、地表へ向けて急上昇。
瞬間的に発生した500地中ノットもの速度は、反重力機関によってコクピットへの影響を打ち消される。
ユニコーンの直下より、ファーザー急襲!
火山灰土の地面が弾け、鈍色の螺旋削撃刃が飛び出した!
対する杭撃手も、示し合わせたように同時反撃!
地面隔てて上と下とのクロスカウンターだ!
ドリルとパイル、互いの切っ先が火花を散らして逸らされ合う。
「ファーザー! 飛び込むぞォォォ!」
今度はファーザーが空中からユニコーンを襲う!
黒い両脚の周囲が陽炎のごとく歪み、黒鉄の巨体に不可視の推進力を与えた!
背後から高速突撃するファーザーに対し、ユニコーンは上半身だけを180度回転!
下肢スラスターひと噴きでドリルを見切り、パイルバンカー瞬撃!
「――しまった!」
不覚を悟ったヴォルテがドリルを引っ込めるより速く、杭の尖端がファーザーの右腕を貫いた。
一度喰らいついたパイルバンカーは、立て続けに連打!
反重力バリアを貫通した杭撃が、ドリル倶えた右前腕をチーズのように穴だらけにしてゆく!
大破した腕を自切して飛び退いくファーザーに対し、ユニコーンが止めのパイルバンカーを構え。




