43 相討つ覚悟
ファーザーのドリルが砂塵巻き上げ柱と為し、黒鉄の巨体を隠した。
前衛のケンタウロスが、抱えたランチャーのトリガーを引く。
射出された弾体は地表へめり込み、地面を大きく抉りとって爆発!
巻き上がった塵霧の向こうに、ファーザーは立っている。
「フェイントが功を奏したわね。あれは地中貫通弾だわ」
「なるほど、わかりやすい。地中を貫通するんだね?」
目標健在を確認し、ケンタウロスⅡの前衛3機が突撃。
抱えたバンカーバスター・ランチャーでの、ためらいない前ダッシュ右武器射撃だ。
対するファーザー大地を蹴って前進、飛来した弾頭とすれ違う。
急速接近、中央一機にドリルする!
衝撃ドリルがバリバリと空気を破る音を立て、ナーガレジンの胸部装甲を削る。削る。削る。
そこへ転進した両脇ケンタウロスが襲い掛かる。
ファーザーのドリルが装甲へ沈み、コクピットと動力機関を粉砕するまでに要する時間は二秒弱。
ベッツ小隊の手練古兵は二秒を突く!
「当たってたまるか!」
放たれたバンカーバスターに対し、ヴォルテはファーザーの上半身を高速回転させた。
右腕のドリルはケンタウロスの上半身に食い込んだままである。
串刺し人馬は事切れて、味方が放った弾頭の盾として利用された。
弾き飛ばされた特殊弾頭2発は空中で爆発!
爆風の中。
原形とどめぬ残骸が、右翼のケンタウロスに投げつけられる。
投擲者ファーザーが、後ろに続いてすっ飛んでくる。
猛速のドリルが振り下ろされ、ケンタウロスの脳天から腰までを一気に叩き割った!
残る十機のうち、六体のケンタウロスがランチャーを捨ててファーザーにタックル敢行。
一体がドリルでの迎撃を受けかく座するも、残りが黒鉄のボディーに取りついた。
「く……ファーザー、振り落とせないのか!?」
「――『機甲体術』! ヴォルテ、力押しでは振りほどけないわ!」
敵の戦術を察し、アヤが警告を発した。
ケンタウロス達は、ただファーザーの四肢にすがり付いているのではない。
アーマシングの構造研究から導きだされた、関節の可動域を封じ込める術理が用いられているのだ。
身動きの取れないファーザーに、後衛のケンタウロスが狙いを定めた。
密着した味方機は、既に“必要な犠牲”として数えられている。
「機甲体術の固め技は、アーマシングの関節構造を基に考案されているの。拘束から逃れるには、各関節のロックを外せばいいわ」
「了解!」
ヴォルテが思念を送信。
即座にコクピットのサブ・モニターに数行の文字列が走り――ファーザーの全身を構成する機関がバラバラに分解した!
敵の拘束をすり抜けたファーザーのパーツ群は宙を舞う。
機関分離と同時に放たれていたバンカーバスターは、密集する五体のケンタウロスのみを吹き飛ばした!
機関を再結合し、ファーザーが降り立つ。ベッツ率いる、後衛の目の前に!
「この程度じゃ、本当の敵には――『無間』には勝てないぞ!」
ヴォルテはファーザーとの思念接続によって得た、真実の一端を口にした。
外的な解析など待つ必要はもうないのだ。
ファーザーの持っているデータはすべて、ヴォルテの知識そのものになっていた。
こちらの力を見せつけた上での、心理的な揺さぶりが意図である。
また、ひとつの賭けでもあった。
想定外の状況を突き付ければ、さしものベッツもペースを乱すのではないか――こちらの話を聞いてくれるのではないか、と。
「あの方の白い胸板と、紅い唇に誓って! 貴様はここで、仕留める!」
ベッツの答えに、迷いなし。一縷の望みも抱かせぬものであった。
「――いよいよ、やらなくちゃいけないみたいだ。ファーザー、アヤ、“全開”でいくよ」




