40 応騰
サウリア軍大型八脚アーマシング『ゾーガメ』の内部機甲渠は、騒然としていた。
解体した上で装甲コンテナへ厳重に小分けし輸送していたファーザーに、異変が生じたのである。
「おい、説明しろ、何が起きているんだ!?」
機内所属の整備班長が、同乗していた操甲技術開発室の男に詰め寄る。
「わからない! おそらく、何らかの“力場”を発生させていると、思われる……電磁力、あるいは、重力……?」
「重力だぁ!? そんなバカな話があるかッ!」
「それほどの力が働いているとしか思えない!」
「おたくら、アレを研究するのが仕事なんだろ、どうにかならんのか!?」
「“アーマシングの部品がコンテナを内側から破って、単体で浮かび上がる”なんて、予測できるわけがない……夢でも見ているみたいだ!」
バラバラにされたファーザーの各機関は、淡い光に包まれて機甲渠内に浮遊している。
<<制御中枢体からの思念波を受信。機関の再接続を開始。反重力フィールド、展開>>
“胸部”にあたる機関が、ひときわ大きく発光。
光に誘引されるかのように、分解されていたパーツ群が引き寄せられ――一瞬にして、黒鉄の巨人は甦った。
「ドゴゴゴゴゴゴゴゴ」
「ギュイィィィィィィィィィ」
脈動音が唸り、ドリルが廻る。
整備兵も、開発室の研究員も皆、隔壁の床を穿ち地中へと消えるファーザーを、呆然と見送るほか無かった。




