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25 作戦会議

「……まずかったですかね」

「ええ、相当」

「怒られるでしょうか」

「怒られるだけで済めば良いですけど」


 アヤの眼鏡が照明を反射してギラリと光り、ヴォルテはピタリと直立不動になり。

 童顔の青年が心底から意気消沈して俯くのを見て、アヤは溜息をついた。


「確かに、アーマシングの行動責任はドライバーが負いますが、その上位には指揮者が居ます。ヴォルテ伍長だけが悪い、という訳でもありません。充分な作戦指示を出せなかった私にも責任があります」

「! ……申し訳ありません」


 ヴォルテは俯き、やや長めの睫毛が黒い瞳を隠した。

 今にも土下座を始めそうな雰囲気だ。


 アヤは、ヴォルテにちょっとしたフォローを入れたつもりであったが、彼は先の『ラマンダ河攻略作戦』の一件は自身の独断によるものと自覚していた。

 ゆえに、アヤの言葉はフォローではなく、無用な責を上官に負わせてしまったことにも思い至らせる追い打ちとして働いたのである。


「ともかく、ただ始末書を提出しただけでは、アンナロゥ大佐だって何らかの処分を下さざるを得ないでしょう。ですから――ヴォルテ伍長」


  眼鏡のフレームに手をやりながら、執務室のデスクから身を乗り出すアヤ。

   ヴォルテは思わず固唾を呑んだ。


「大佐に、あなたが初めてファーザーと出会った時の情報ことを報告しましょう。ファーザーは未知の技術ブラックボックスに手足とドリルが生えたような存在です。その出自に関連しそうな情報を提供すれば、きっと悪いようにはされない筈です。あなたも、ファーザーも」

「それは……できません」

「ファーザーが解体分析にでも回されてしまえば、元も子もないんですよ!?」

「っ――!」


 レンズ越しの碧眼がヴォルテをキッと見据える。

 ファーザーと共に在る事は、ヴォルテにとって全てにおいて優先する。

 アヤはそれを分かっていたし、自らのルーツを追い求める彼の一途さに肩入れしたいとすら思っていた。


 俊巡の間を置いて、一呼吸。ヴォルテは口を開いた。


「……あの時、タキドロムス孤児院を襲ったアーマシングのプラナドライブ音は『ケンタウロス』タイプのものでした」


 言葉を失うアヤの返答を、ヴォルテは待つ。試す者と試される者との間に、沈黙があり。


「約束します。いま話してくれたことは、誰にも口外しません。もちろん、アンナロゥ大佐にも」

「――よろしくお願いします」


  神妙な面持ちで頭を下げるヴォルテ。

 アヤは、重たくなった執務室の空気を吹き飛ばそうと、咳払いの後、つとめて明るい声音を準備した。


「それはそれとして、ですね。私、以前から個人的に気になっているんですけど」


  きょとんとした顔をするヴォルテに、一つ年上の上官は微笑む。


「ヴォルテ伍長が“母さん”って呼んでいた方のこと。カナ=タキドロムスさん。お会いしてみたいです。ちょうど今は部隊も動けませんし、明日にでも案内してもらえない?」

「え、明日、ですか!? 自分も、カナさん……院長も構わないと思いますが、その、隊を勝手に離れるのは問題ではありませんか?」

「これはれっきとした軍務ですっ」

「軍務と仰られれば、断わるなんてことはしません、けど」

「名目なんて、ファーザーの性能試験だとか実地調査だとか、言いようは幾らでもあります。安心して。こう見えても私、やると言ったら必ずやりますから」


 何故か妙にムキになってくるアヤに気圧されて、ヴォルテはしどろもどろになりながらも、一応は率直な感想だけを述べてみることにした。


「なんというか、始末書を提出しに行った足で有給休暇を申請する、みたいな状況ですよね、これ」

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