プロローグ2
ブックマークしてくれた方有難うございます!
少しずつ書いていくのでよろしくお願いします!
「ん…」
「何だったんだ…」
光が一瞬にして辺りに広がり教室を包み込んだ後、蔵人達クラスメートの視界に映ったのはいつもの見慣れた教室の風景ではなく、白い大理石で出来ている硬質な床と壁。
そしてその空間のちょうど真ん中に蔵人たちは立っていた。
現代の建物では感じることの無い荘厳さと神聖さを目の前にクラスメート達は一時呆気にとられていたが、何人かの生徒が少しだけ周りを見る余裕がでてきたのかあたりを見回すと彼らから少し離れたところで十五名程の鎧をきた騎士らしき人間が腰にかけている剣を構えてこちらを厳しい貌付きで警戒しているのが見えた。
「あっ」
辺りを見ていた生徒の誰かがその光景に気づき、思わず声を漏らした。
その声に他の生徒らが反応して騎士集団を見た。
一瞬なにが起こっているのか分からずポカーンとしていたが、段々と状況を理解し始めるととうとう我慢できなっかたのか一人が叫びそこから伝染するように連続してパニックになる人が続出した。
「お、おい、あいつら剣持ってるぞ!」
「きゃぁぁあ!」
「なんだよここ!教室じゃねぇ!」
あまりの出来事と剣と言う物騒な物が見えてしまい、恐怖と混乱でパニック状態に陥ってしまったクラスメート達は一斉に騒ぎ始めた。
(っ!?)
いつもは冷静な蔵人でさえこの状況には目を見開き驚いていたが、すぐに動揺を隠し状況を整理すべく思考を開始した。
(まずここはどこだ…?どう見ても俺たちを取り囲んで奴らは日本人じゃない…それに今、こいつらが着ている鎧みたいなものを使う国なんて今時ないぞ?)
蔵人はそこまで思考を巡らせて考えたくはなかったある一つの仮説に至った。
(はぁ…これはほぼ確実で異世界召喚だな。まさか本当に俺自身が体験することになるとは…まぁアイ○シュタインの相対性理論でも別空間の存在は証明されてるしあり得ない話ではないな。)
「おい!ここは一体どこだよ!」
伊藤は混乱して気づいていないのか剣を持って取り囲んでいる騎士の一人に掴みかかろうとし、すぐさま周りの騎士達から殺気と剣が向けられた。
「ひっ……!?」
伊藤は初めて感じる死への恐怖で腰がひけて顔を青くしながらその場に尻をついた。
さらに騎士達が伊藤に近寄ろうとした時、
「おやめなさい!」
突如、凛と響く鈴の音の様な声が騎士達の後方の方から聞こえた。
騎士達は声の主を認識するや否や殺気と剣を納めた。クラスメート達は伊藤と騎士達の光景を固唾を飲んで見守っていたが声が聞こえた方向に顔を向ける。
コツコツとこちらに向かってくる足音が規則正しく鳴り響く。
女の足音が徐々に近づき騎士達のすぐ後ろで止まった。
「どきなさい」
女は一言騎士達に告げると騎士達はすぐさま女に道を作る様に並んで直立体制になった。
女の顔がクラスメート達に露わになった時、誰かの息を飲む音が聞こえた。
女は腰まで伸びた月のように美しい金髪に何一つ欠点のない顔、物語に出てくるお姫様を表現するかのような気品さと美しさを兼ね備えていた。
「こちらの無礼をお許しください。」
女は申し訳なさそうに蔵人達に頭を下げる。しばらく呆然としていたクラスメート達だったが、一番早く立ち直った司が女に声をかけた。
「頭を上げてください。元はと言えば先に突っかかったのはこちらの方です。今はお互い謝るよりも僕達の身に何が起こったのか説明をお願いしたいのですが」
司は誰もが見惚れる程の魅力な笑顔を女へ向けた。
「ありがとうございます」
しかし女は特に何の含みもない純粋な笑顔を司に返した。
司はその笑顔に顔を赤くし、それを見ていた女性陣が女に敵意のある視線を向けたが女は気にすることなく続けて口を開いた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はここアルトレイア王国第一王女アニエス・ゴールド・クロフォードと申します。」
そう女、アニエスが述べた瞬間その場の雰囲気が少しどよめき始めた。
「王女って本物の王女か?」
「言われてみれば納得かも」
「みんな少し静かにして」
珍しく夕莉が冷たい声で注意するとクラスメート(特に男子)達は背すじを伸ばしながら押し黙った。
司は場が静まったのを確認すると王女の前まで歩み寄り膝をついた。
「王女である貴女に先に名乗らせてしまいすいませんでした。僕は廣田 司と言います。」
「司様ですね。皆様が混乱していらっしゃるのは当然です。色々聞きたいこともあるでしょうが、詳しい事はわたくしの父であるこの国の王が説明いたしますので玉座までついてきてくれないでしょうか?」
心配そうな表情でたずねるアニエスの言葉を聞いた司は少し考え、
「わかりました。けど、1つだけ確認させてください。僕たちは元の場所に帰る事は出来ますか?」
(さすがに廣田でもここが違う世界だということに気付いていたようだ。)
蔵人は心の中で廣田を見下しながらそう評価した。
司のその言葉でクラスメート達は自分達の現状を思い出して我に帰り、ざわめき始めたが騎士達の殺気をあてられて再び黙り込んでしまう。
たずねられたアニエスはその見惚れる笑顔を少し引きつっていたがそれも一瞬ですぐに取り繕った様に元の表情に戻した。
「すみません。今すぐ帰れるという訳ではないですが必ず帰る方法はあります。
詳しくは後でお父様から説明があります。」
その言葉で安堵の表情を浮かべるクラスメート。しかし蔵人と他数名は疑いの眼差しを向けていた。
(嘘をついている様には見えないな。この場合小説通りなら魔王を殺さない限りとか条件つけてくるはずだ。とりあえず様子見か。)
蔵人が思考をフル回転させていると司が蔵人の方を見た。
「奥宮、何かあるのか?」
司は蔵人が何か考えてる様子を見て訊ねてきた。
蔵人は面倒くさそうにしながら
「何も無いからさっさと話を進めろ。」
周りの女子から批難のこえが聞こえてくるが無視する。
「では、お願いいたします。」
そんな蔵人に司は苦笑しつつ、アニエスにふりかえってそう言い、同意の意思を見せる。
「はい!お任せください!では、こちらへ」
アニエスは魅力的な笑顔を見せて王がいる玉座へと足を進め始める。
数人を除くクラスの男子達は興奮した様にアニエスを凝視していたが女子と騎士の冷たい目線に気づくと目をそらしつつアニエスについていく。
「アニエスちゃん超かわいいわぁ〜」
「だな、俺たち勇者様って言われてたしもしかしたら可能性あるか?」
「馬鹿か、どうせ司あたりに持っていかれるさ」
「完璧イケメンは違うな」
「司君は私と結ばれるのよ!勝手なこと言わないで!」
「お前自分の顔を鏡で見てみろ!アニエスちゃんに勝てると思うのか!?」
「なんですって!」
(もし、ここがテンプレどうりの異世界ならどうせ死ぬまで戦わされるんだろうな。そんな興味のない事したくないし何処か抜け出せるタイミングを計らなきゃな。)
緊張感の無い会話ばかり続く中蔵人はここから抜け出せ無いかを考えていた。