隠れ家
残酷な描写があります。
危なかった。
最後の貫手がうまくいかなければ死んでいた。
正直成功するかは賭けだったのだ。
初めて魔力を扱うであろう体で手先に魔力を集中するような精密操作。しかもそれを戦闘中に行うのだ。
もしも威力が足りずに倒しきれなければ、次回からは警戒されて簡単にはあたらないようになるだろうし、そもそもあんな至近距離で失敗なんぞして致命的なスキをさらしたら俺は絶対にやられる。
だから最後まで使うのを渋っていたのだが………。
「威力すごかったな………。」
あの一撃はゴブリンの体を易々と貫いていた。
「まあ、危険な賭けだったけど結果オーライか」
お陰で魔力操作なるスキルを手に入れることが出来た。
まだlv1だが、確かに体の中の魔力を動かしやすくなっている。これでさっきの貫手も放ちやすくなっただろう。魔力を集中するスキを大幅に削減できる筈だ。
と、そんなことを考えながら休んでいると、不意に足音がした。
「ギギッ!」
「ギギイ!ギッギッ!」
先程の下っぱゴブリン達のようだ。
俺の後ろのゴブリンリーダーの死体を見て怯えた雰囲気を一瞬出したが、どうやら俺の折れた右腕と土だらけの体を見て、弱ってると判断したようだ。
一瞬の怯えはどこに行ったのか、ニヤニヤ笑いながらこちらへ近づいてくる。
「疲れてるんだがなあ・・・・。」
俺は疲れを振り払い、立ち上がる。
先ほどの戦いでさらにレベルが上がった。変なミスをしなければやられることは無いと思うが、相手は2匹だ。ここは慎重に・・・・・
と考えていると、2匹がまっすぐに突撃してきた。
俺は、先ほどの貫手を再現すべく、左手の先に魔力を収束させる。
先程の戦闘では、針の穴を通すような集中力を要求されたにもかかわらず、《魔力操作》スキルの恩恵に加え、この体へ魔力を通すのに成功し、どうすれば魔力を体内で動かせるのかを感覚的につかんだおかげで、すんなりと魔力の収束が成功する。
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ランク1
種族:「ゴブリン」
性別:オス
名前:なし
LV:3
HP:40/40
MP:0/0
筋力:15
物理耐久:10
魔法耐久 :5
敏捷:25
体力 :15
魔力出力:0
スキル
なし
[称号]
なし
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ランク1
種族:「ゴブリン」
性別:オス
名前:なし
LV:3
HP:55/55
MP:0/0
筋力:25
物理耐久:20
魔法耐久 :5
敏捷:5
体力 :15
魔力出力:0
スキル
なし
[称号]
なし
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敏捷値の差により、先に突撃する事になったゴブリンの棍棒を余裕を持ってサイドスッテップで右に避ける。
さっきのゴブリンリーダーに比べたら、こんな攻撃は屁でもない。
「ギッ!?」
ステータスを見る限り、素早さに自信があったのだろう。避けられるとは思っていなかったのだろう。
驚愕を見せている。
そして俺も驚愕している。
直進してくるだけの突撃なんか、簡単に避けることが出来るに決まっている。頭がいなくなるだけで一気に弱体化したのだ。
だが遠慮する理由は無い。
俺は貫手を遠慮なくゴブリンの側頭部にぶち込んで絶命させる。
遅れて走ってきたゴブリンも棍棒を振り上げるが、動きがあまりにも遅い。
ゴブリンから手を抜いて、もう一度魔力を纏わせた貫手でそのまま真正面から顔面をぶち抜いてやる。
攻撃すらする暇も無くゴブリンが崩れ落ちた。
《体術スキルのlvが上昇しました》
「ふう・・・・・。」
ゴブリンを2体、一気呵成に倒した俺は、とりあえず、ゴブリン達が最初騒いでいた場所へ行くべく、逃げてきた道を戻り始めた。
歩いて約30分。
森の中を歩いていくと、開けた広場のようなところに出た。広場の真ん中には、地面に穴の様なものがあいている。
俺はその中に躊躇わず入っていく。
穴は深くは無く、奥には木の実のようなものが沢山転がっていた。
どうやらさっきのゴブリン達はここで生活していたようだ。
「取り敢えずはここで夜を越すか・・・・。」
そう考え、取り敢えず硬い赤土の上でごろんと横になる。
そうやってぼうっと天井を見上げているだけで、疲労感と眠気が襲ってくる。
だんだん暗くなってくる視界に逆らわず、俺はそのまま目を閉じた。
翌朝、俺は森で鳥の鳴く声に目を覚ました。
俺は起きようとして・・・・右腕の激痛と、全身の筋肉痛に襲われる。
「いてて・・・・。」
そうやってしばしもだえた後、これからどうするかを考える。
「食料探しと右腕の治療・・・・・まずは右腕かねえ・・・・・。」
取り敢えず利き手が直らないと色々どうしようもない。
前世なら、病院へ行って・・・・・・とかになるのだろうが、この世界には、そんな怪我にも有効なおあつらえ向きなモノが存在するのだ。
「治癒魔法か・・・・・・。」
前世での小説知識を元に、右腕へと魔力を通す。
今回はただ通すのではなく、血管や筋繊維の一本一本に魔力を通すようにする。
その際大事なのはイメージだ。骨と、それを包む、筋繊維の束、腕を通る血管の一本一本。
それをイメージしながら、魔力を通して、右腕の内部を「認識」する。
「うへえ・・・・こりゃ痛い筈だわ・・・。」
血管や筋繊維が千切れ、周りに血溜りを作っており、中心の前腕部の骨は、完全に真ん中で折られており、折口はギザギザになっている。不用意に動かすと、骨が表面に飛び出してきそうだ。
そんな腕が、綺麗に直っていくのをイメージして、それを腕に重ねながら、魔力を集中させる。
《治癒魔法スキルを獲得しました》
《治癒魔法のlvが上昇しました》
《治癒魔法のlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作スキルのlvが上昇しました》
《魔力操作のlvが最高値に達しました》
《条件を満たしたため、魔力操作が魔力精密操作に変化しました》
《魔力精密操作のlvが上昇しました》
《魔力精密操作のlvが上昇しました》
効果は劇的だった。痛ましく腫れ上がっていた腕は、急激に腫れが引いていき、あっという間に元通りになってしまった。
「・・・・魔法やべえな。」
などと喜んでいると、いきなり強い気だるさか襲ってきた。
「なっ・・・何だこりゃあっ!」
急いでステータスを確認する。
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種族:「人間」
性別:男
名前:なし
年齢:7
LV:3
HP:100/100
MP:5/60
筋力:60
物理耐久:30
魔法耐久:25
敏捷:35
体力 :40
魔力出力:15
スキル
「アイテムボックス」
「ステータス偽装」
「ステータス回覧」
「魔石吸食」
「剣術lv1」
「短剣術lv1」
「体術lv2」
「斧術lv1」
「槌術lv1」
「治癒魔法lv3」
「魔力精密操作lv3」
[称号]
なし
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《治癒魔法》に加えて、《魔力精密操作》なんて物を手に入れてしまった。おそらく、腕の内部から直すなんてのは、相当非常識な方法で、相当な精密操作を必要とするようだ。それと、スキルlvは10が最高値だということと、ある条件下でスキルが上位の物に変化するという事がわかった。
あとはMPだが、使いすぎてしまった。
腕を直すのに夢中で、なにも考えずに魔力をつぎ込んでしまったみたいだ。
ヘタに小説の主人公の真似なんてしない方が良いらしい。MPを使いきるとどうなるか気になるところではあるが、どうせ気絶するとかだろう。余り試したくはない。
とにかく今は倦怠感がひどい。何もしたくない。
俺は横になり、もう一度寝始めた。
気付いた時には昼になっていた。
腹の減り具合と、喉の乾きに俺は呻く。
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種族:「人間」
性別:男
名前:なし
年齢:7
LV:3
HP:100/100
MP:60/60
筋力:60
物理耐久:30
魔法耐久:25
敏捷:35
体力 :40
魔力出力:15
スキル
「アイテムボックス」
「ステータス偽装」
「ステータス回覧」
「魔石吸食」
「剣術lv1」
「短剣術lv1」
「体術lv2」
「斧術lv1」
「槌術lv1」
「治癒魔法lv3」
「魔力精密操作lv3」
[称号]
なし
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取り敢えず、MPは回復したようだ。
俺は体に魔力を薄く流して筋肉痛を直す。
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種族:「人間」
性別:男
名前:なし
年齢:7
LV:3
HP:110/110
MP:63/70
筋力:65
物理耐久:35
魔法耐久:25
敏捷:40
体力 :45
魔力出力:20
スキル
「アイテムボックス」
「ステータス偽装」
「ステータス回覧」
「魔石吸食」
「剣術lv1」
「短剣術lv1」
「体術lv2」
「斧術lv1」
「槌術lv1」
「治癒魔法lv3」
「魔力精密操作lv3」
[称号]
なし
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よし、MPはちゃんと抑えられてるな。
それにしても、少しハードな魔力の使い方をして、筋肉痛が直っただけで、ステータスが上がっている。
ちゃんと訓練をすれば、ステータスも伸びそうだ。
「さて、先ずは水かな。」
水に関しては、もう既に宛があった。
掌から水を出すイメージをしながら、魔力を掌に集める。
《水魔法スキルを獲得しました》
すると、掌の上には、野球ボールより一回りか二回り位大きい大きさの水球が浮かんでいた。俺はそれを《魔力精密操作》で維持しながら、直接それに口を付けて飲み干す。
「ぷはぁっ!生き返る~」
この水は俺のMPが余っている限り出すことができる。しかも、MPは時間経過で回復していく。まさに自家発電である。
「魔法ってのは本当に便利だな」
そう言いつつ、風、火、土、雷、光、闇の球も次々に作ってみる。
《風魔法スキルを獲得しました》
《火魔法スキルを獲得しました》
《土魔法スキルを獲得しました》
《雷魔法スキルを獲得しました》
《光魔法スキルを獲得しました》
《闇魔法スキルを獲得しました》
小説の知識が活躍しまくっている。
前世の自分に感謝しつつ、俺は洞窟の外で食糧を探すことにした。因みに洞窟の奥にあった木の実はドングリのような形をしていて、ステータス回覧で見たところは一応食べることは可能なようなので、取り敢えず全部アイテムボックスに入れておいた。
洞窟を出て正面には、昨日抜けてきた獣道がある。
俺は洞窟の入り口の反対側へと回り込むと、もう1つの獣道を通って歩き出した