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我が人生  作者: 下水管
15/24

出会い

主人公達が冒険者になるまでは、まだ掛かります。

「ここもダメか………」

あれから何軒か店を回っているのだが、店主から出てくる言葉はどこも、手は足りている、の一言だった。まあ、手が足りているのにわざわざ金を払って対した仕事も出来なさそうな子供を雇う人間もいないだろう。

「どうするの?帰るの?」

「……何で笑顔なんだよお前」

セラはというと、働き場所が見つからなくて段々面倒になってきた俺とは違って終始笑顔だった。

「……へへ」

可愛い笑顔がなんか腹立つので、頬を手で挟んでグリグリしてやった。

「……あ、そうだ。」

「ろーひはの(どうしたの)?」

俺は道を戻ってギルドへと向かう。

流石というかなんというか、酒場からは真っ昼間にも関わらず、冒険者達の笑い声が聞こえる。

俺達がギルドへと入ると、ドアについているベルの音に反応して、視線が俺とセラに集中するが、嫌なものは感じられない。冒険者には縁起なんてものは関係無いらしく、好奇心が勝るらしい。流石に日常的に人外の化物を狩っているだけある。最初入ったときは子供だからだと思っていたが、セラも言っていたように、俺の髪の色が珍しいのかもしれない。真っ黒というのはセラは初めて見たそうだ。セラはセラで、銀髪に金目という俺とは別の意味で目立つ色合いだしな。セラによると、銀髪も金目も、極稀に発生することはあるものの、同時というのは物凄く珍しいらしい。


俺は受付の女の人に、声を掛ける。

「すいません、ジルバさんはいますか?」

「ジルバさんですか?少々お待ちください。」

そう言って、受付嬢は奥へと消えていく。少し待っていると、奥からジルバが出てきた。

「おう、どうした?坊主に…えー……」

「セラです」

名前があるのが嬉しいのか、笑顔でセラが答える。

「あぁ、セラちゃん。んで、二人はどうしたんだ?」

「仕事くれ。」

セラを真似て俺も笑顔で答える。

「……お前な…。はぁ…どこも受け入れ先がなかったのか?」

「「満員だった(でした)」」

「……わかった。ちょっとこっちこい。」

ジルバと一緒にギルドの外に出ると、近くにある酒場の1つに案内される。

扉を開けると、中に閉じ込められていた食べ物の匂いと喧騒が一気に襲い掛かってくる。

がやがやと煩い店内を、机の間を縫って進み、カウンターにつくと、ジルバは煩い店内でも響くような大声を出した。

「おーい!ベクター!」

「……ん?ジルバさん?どうしたんです?」

すると、カウンターの奥の扉が開いて若い青年が歩いてきた。

「おう、お前、こいつらを雇ってくれんか?薄給で良いからよ」

勝手に職場をブラックにされてしまった。ジルバめ。

「あぁ、成る程。孤児院の子供達ですか。」

ジルバに前に押し出された俺たちを見てベクターが頷く。

「あぁ、どこも手が足りてるらしくてな。何でも良いから仕事をやってくれ。」

「ふむ………じゃあちょうど良いので、店の周りの掃除をしてくれませんか。最近マナーの悪い人が多くて、店の後ろの目立たない部分とかにゴミが捨てられている事が良くあるんですよ。」

「ゴミ掃除か。問題ない。お前らもそれで良いよな?」

こっちは頼んでいる身なので我が儘は言えない。

「あぁ、それで良い」

「私はオグロが良いならそれで良いよ」

セラも問題ないようだ。

「じゃあ、俺は戻るわ。じゃあな。」

ジルバは俺達の答えを聞くとすぐに戻っていた。忙しかったのだろうか、悪いことをしたかもしれない。今度俺由来の糸をやろう。

「それじゃあ早速頼みますね。」

ベクターに箒を二つと木で出来た塵取りとゴミ箱を渡されて、外に出る。ベクターの言う通り、店と店の間の目立たない部分などに、食べ物を包んでいたような包装紙が落ちていたり、何かの紙くず等が落ちている。

俺とセラは協力しながら、ゴミを1箇所に集めていく。ある程度溜まってきたら塵取りで集めてゴミ箱に捨てる、を繰り返し行う。仕事内容は店周辺ということだったので、他の店の回りも含む広範囲を掃除しておくことにする。

「あら?君は………」

ん?俺に知り合いなんかいたっけ?と後ろを見てみると、そこにいたのは先日助けたお婆ちゃんだった。

「君のこと探してたのよ〜。会えて良かったわ。」

右手には何やら包みを持っており、落ち着いた紫色のセーターを着ている。

「はい、これ。」

と、おもむろに右手になにかを握らされる。右手を開いてみると………

「これは……金貨?」

「この前くれた糸なんだけど……売ったら金貨2枚で売れたのよ〜。流石にこんな高いもの貰うわけにいかないからお金は返しに来たわ。」

俺の右手の中には金貨が2枚収まっていた。あの糸すげえ高値が付くんだな。

「いや、一度渡したものを返して貰うわけには……」

「良いから良いから。子供が変な遠慮をするんじゃありません。……まあ、私からすれば返しただけなんだけどねぇ」

そう言って、お婆ちゃんは苦笑する。

「そういえば…貴方、オグロって名前なの?」

「何で知っているんですか?」

「貴方みたいな黒髪黒目の子なんてそうそういないからねえ。お金を返そうと思って少しだけ聞き込みをしてみたらすぐに見つかったわよ。」

やはり、黒髪黒目というのは珍しいんだな。いざというときのためにあまり目立たないようにした方がいいだろうか。


「オグロ、こっちの掃除終わったよ………その人は?」

と、そこにセラが帰ってきた。

「あら?貴女は………」

「あぁ、こいつはセラって名前だよ」

「セラです。初めまして。」

「あらあら、ご丁寧に有難う。」

俺の容貌の次はセラの容貌をしげしげと眺めるお婆ちゃん。やはり俺達は目立ちすぎるようだ。

「……ところで、どうしてここにいたんです?」

「あぁ、貴方達にばかり自己紹介をさせて私は自分の紹介をしていなかったわね。……今日は夫にお弁当を届けに来たの。」

そう言って、包みを持ち上げる。

「お弁当……?」

「ええ。私の名前はクラリス。ここミルドの町、ギルド支部長の妻です。」

そういって、クラリスは頭を下げた。


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