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プロローグ
輪廻転生。
それは、死んであの世に還った魂が、この世に何度も生まれ変わるという理である。
この日、とある星の、とある極東の地で、人生を終えたある青年の魂がその円環の環へと組み込まれた。
その青年は魂だけの姿となって、天へと向かいながら残った希薄な意思で自分の人生を振り返る。
その思考の途中途中。意識に色んな物が浮かんでは消えていく。
家族の顔。
友人の顔。
恋人の顔。
青年がそれらを思い浮かべる度に、魂からその一部が剝離していく。
やがて、輪廻の環へと到達する頃には、蝋燭の火の様に小さい物に成っていた。
その魂の色は、黒曜石の様でいて、綺麗に透き通った色の魂だった。
青年の魂は、赤、青、黄、緑等々、色取り取りの魂の廻る環の中に吸い込まれ――――・・・・・・・
環へと完全に入る直前、どこからともなく現れた1本の「手」によって掬いだされた。
その「手」は、大切なものを運ぶかように青年の魂を運び、環とは違う方向へと流す。
そうして流れていった青年の魂は、空間に溶けるかのようにうっすらと消えていき、それを見届けたかのように「手」もまたその実体を失っていった。