命の火
真夏の昼下がり、東京の街をペタペタと靴音をたてながら、私は同窓会の会場へ1人寂しく歩いていた。
そんな私をよそに、私の前にはおじいちゃんとその孫だろうか、二人が楽しそうに歩いている。
だが、一見楽しそうに見える彼らだが私には見えてしまっていた。
老人の方の命の火がとても小さくなっていた、老人は恐らく近いうちに、、、、死ぬだろう。
いつからだっただろう、命の火が見えるようになったのは。
私はひと月前本当に愛していた女性に、振られてしまった。
振られた原因は、性格の不一致だったそうだ。
だが、私と彼女はどちらも青く、考え方が子供だったのだ、そんな二人が長く続くはずもなく、その結果別れてしまった。
私は別れたあと、全く納得がいかなかった、彼女は私の意見など聞く耳を持ってくれなかったからだ。
別れてからは忘れたいと思っても、いつでも彼女のことが頭の中に思い浮かんでいた。
元々、自分に自信が無く、心はガラスのように割れやすかった私は全てのことに対して、やる気をなくした。そして誰も信用しなくなった。そして、彼女を心から恨んだ。
そして、それからの私は変わってしまった、前々からの友人や親などにも、
「お前は変わったよ」などと、言われていた程である。
確かに、元々、真面目だった私は真面目な自分がバカらしく思え、学校にいた素行の悪い連中と付き合うようになっていた。そしてタバコの味を覚え、酒の味を覚えた。
失うものが無い者はこんなにも、怖いのかと、今考えると自分でも思うほどである。
そして、ふと気づくと前々からの友達たちは、私の周りから消えていた。だが、そんなことを気になどしないほどに、私の心はすさんでいた。
それから、私は通っていた高校を辞め、色々なバイトをしながら、適当に生きた。
そして、しまいには、バイトもしなくなり部屋にこもり始めた。
その頃からだ生きるのが嫌になったのは。確かそれと同時に命の火が見えるようになったのだ。
私が最初に見た命の火は自分自身の命の火だ、今にでも死んでしまいたいの火はとても大きく燃えていた、まるで今打ち上がったかのような打ち上げ花火のように。
そして、次に見えたのは私の祖父の命の火だ、その命の火はとても弱く燃えていた、まるで今にも消えてしまいそうな線香花火のように。 それから数日後、祖父は死んだ。
私は自分が怖くなった、なぜなら普通の人には見えないものが見えてしまっているのだから。
その頃から私は、自分が見た人間全ての命の火が見えるようになった。
そんなことを思い出しながら、歩いていると同窓会の会場についてしまったようだ。
会場のドアを開いてすぐに目に入ったものは、私が恨んでいた彼女だ、私は今日彼女に会うために同窓会に来たようなものだ、彼女は綺麗になっていた。私はとても嬉しかった。
だが、ひとつだけ気がかりなことがあった、元気そうな彼女の命の火がとても小さかった。 恐らくこの火の小ささ、彼女は今日死ぬだろう。
しかし、そう言ってる、私の命の火も彼女と同じくらいの大きさだった。