1.そうですね、何をされても笑顔で耐えなさい。
登場人物紹介です。
長門
見た目、20歳から25歳、175センチ
巨乳
おしとやかで常識人、艦魂の姉のような存在。
かなりの照れ屋だが、恋人の俊貴に対してはデレデレ。
山陽 俊貴
27歳、180センチ
医官
常識人。
周りからはよくドMと言われるが本人は否定している。
困った人を放っておけないタイプ。
ややヘタレ気味。
1
朝起きたら、恋人? 人ではないかが、いわゆるそういう関係 の長門さんが豹変しておりました。
いつもの修道服のような服ではなく、ボンテージ風ゴスロリのお洋服を着て、手に鞭のようなものを持っていらっしゃいます。
命の危険を感じますので、早急に逃げてもよろしいでしょうか。
「駄目に決まっていますよ、俊貴さん。わたしに従っていただかないと」
……とまあ、馬鹿丁寧な口調で答えられた。
怖いくらいの笑顔で。
……あれ?
長門さんといえば、敬語で控えめでおしとやかで、指が触れ合ったくらいで真っ赤になるほど照れ屋で、キリスト教徒だ。
俺はもう一度、長門さんを見上げた。
ボンテージ風のお洋服。
胸元にあったはずのロザリオがない。
手には長い鞭とーー、革製の、首輪のようなもの。
にっこりと邪悪な笑みを浮かべて。
俺は真剣に命の危険を感じた。
早くここから逃げなくては。
「えーっと、長門さん……、今日は早いから、もう出ないと……」
別にいつもと変わらず早くはないが、この長門さんから逃げるためだ。背に腹はかえられない。
目を逸らして言った苦し紛れの言い訳は長門さんには通用しなかったらしく、次の瞬間長いスカートの中からほっそりした白い脚が飛び出した。
腹にぶち当たる。
相変わらず綺麗な脚だと不純なことを考えながら、一瞬で船室の端まで飛ばされた。
壁に叩きつけられた俺の中で危険信号が点滅する。
このままここにいれば、確実に殺られる。
そんな雰囲気を纏った長門さんが、一歩一歩近づいてくる。
「はぁい、捕まえました☆」
俺の腹に跨りマウントポジションをとった長門さんは、にっこり笑って俺の首に何かを巻き付けた。
* * *
長門さんの魔の手から命からがら逃げ出して、食堂で朝飯を食べている。と、ちょうどそこに同僚が通りかかった。
咄嗟に呼び止める。
「聞いてくれよ……」
思い切り嫌な顔をされた気がするがきっと気のせいだろう。
手を引いて座らせ、俺は口を開いた。
「……で、俺になにをしろと」
今までの経緯を一通り話すと、同僚に惚気なんざ聞きたくねぇとばかりひ溜息をこぼされた。
「もとの長門さんに戻って欲しい」
切実に。
そう言ったのに、同僚は茶を吹き出さんばかりの勢いで笑い出した。
「よかったじゃねぇか、願ったり叶ったりで。お前首輪つけてるくらいドMなんだろ」
「俺は断じてMじゃない。これだって長門さんから無理矢理……」
苦い顔で言うと、何かを察したのか、同僚は声をひそめた。
「いいか、Sってのはな、ただ支配し服従させたいんじゃない。抵抗する奴を服従させてこそなんだよ。分かるか?」
ああ、と頷くと、奴は続けた。
「ならば、無抵抗ならどうだ? 自ら喜んで縛られに行くような人間を調きょ……げふん、支配したいとは思わんだろう。お前は長門さんに元に戻って欲しいんだろ。それなら何をされても笑顔でいろ。耐えるんだ」
盲点だった。
しかしあの状態の長門さんを前にして、無抵抗。さらには笑顔で耐えろと。
……無理ゲーフラグ。
いや、死亡フラグだ。
だが他に手はない。
よし、と意気込んだ瞬間、怖気がした。
かつ、という高いヒール独特の音と、ピシッと響く、乗馬鞭のような音。
やべえ。
「俊貴さん? 楽しいこと、しましょうか」
俺にとっては楽しくなさそうですね。
苦笑いでそう言おうものなら脚か拳か、……または弾が飛んできそうなので自重しました。
「……は、ははは……」
同僚の言葉を信じることにしたがーー。
俺は死ぬんじゃなかろうか。
2.限界がきたら、
優しさが欲しいなぁと呟いてみなさい。
へ続く。
お題はお題配布サイト「確かに恋だった」より。