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S・D・G  作者: ピジョン
第2章 黄金病

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幕間 この声が聞こえるか


 場所は、曾ての『暗黒騎士』の所領『ニューアーク』。

 『失われた英雄』レオンハルト・ベッカーは、その背に七本の槍を突き立て、獣人の少女エルを守るようにしてうつ伏せ、力尽きた。

 僅かに開いたままの瞳には、意志の輝きはなく――。


「縄を打て!」


 兜に赤い羽根飾りを付けた隊長格の騎士が言い放つ。


「もう死んでおりますが」


「なればこそだ。この混乱の元凶として、アルタイルに差し出す」


 場所は、折しもニューアーク。

 ただ独り、サバントの大軍を蹴散らし、それより溯り、大魔法の使用にて大勢の命を助けた曾ての英雄『レオンハルト・ベッカー』は、両腕に縄を打たれた。


 『レオンハルト・ベッカー』はSDGの『主人公』である。

 どのような物語に於いても。また、どのような苦境に於いても。主人公は、立ち上がらねばならない。



 ――しゅ、



 と空を切る音がして、石造りの住宅の高所から投げ落とされた植木鉢が、先頭を行くエミーリア騎士の兜に命中した。


「ぐおっ!」


 騎士の一人が悲鳴を上げて落馬する。同時に、ニューアークの街に、大きな声が木霊する。



「レオンハルトさまーーーーっっ!!」



 grace(祈り)……


  Leonhard Beker――???+1



 今はもう、力なく倒れ伏す男は獣人の少女を庇い倒れたのだ。その光景の一部始終を見た獣人たちが、その名を呼ぶ。



「王さまぁーーーー!!」



 grace……


  Leonhard Beker――???+2



 世界の期待値アライメントが変動する。

 その長き旅路に於いて、獣人を最も重用し、貴賎を問わず貧民をすら請うて登用したこの男は、メルクーアでは庶民の英雄である。

 無謀とも取れる大魔法の使用により、大勢を助けたこの男は、それでも足りぬと無力に泣いた。

 港では機械兵サバント相手に一歩も譲らず、ついには打ち倒して見せたこの男は、この街の者のために無力に泣いた。



 『S・D・G』

 正式名称――『サディスティック・ドラマチック・ゲーム』。


 このゲームには、『奇跡』が存在する。

 一部の熱狂的プレイヤーからはこう呼ばれる。


 『S』uper 『D』ramatic 『G』ame。


 このゲームには、『奇跡』が存在する。



 石造りの住宅の窓々から植木鉢の他に、鍋、釜、等の様々な生活用品がエミーリア騎士団に向けて投げ付けられる。


「薄汚い貧民どもが……!」


 エミーリア騎士団の面々は辟易し、口汚く罵りの声を上げる。


「やめんか! ただではおかんぞ!!」


 口々に制止の声を張り上げるが、無法都市の住人に口先だけの威嚇は通用せず――


「負けないで!! レオンハルトさまぁぁぁぁぁっ!!!」


 大魔法の奇跡を経て、光を得た幼子が、力の限りその名を呼ぶとき。



 grace……


  Leonhard Beker――???+3



 ぎゅう、と拳を握り込む。力は無限に湧いて来る。



 人々の笑顔と涙が、主人公『レオンハルト・ベッカー』の生を彩っている。

 この世界で、主人公『レオンハルト・ベッカー』だけが、人々の祈りを力に変える。


 運命がまた変わる――。


 地獄の底より、再び這い上がるのは……


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