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S・D・G  作者: ピジョン
第2章 黄金病

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第4話 レオンハルト・ベッカーでいるために

 夜半過ぎ、マジックドランカーによる昏倒から覚醒したレオは、想像以上の体力の低下を自覚し、いささか困難になった現状を再認識せずにはいられなかった。

 ステータス画面を開き、イベントの進行を確認する。



 アキラ・キサラギをパーティに加える。



 強制イベントだ。未だ達成されていない。


(彼女を仲間に……? できるのか、そんなこと。嫌われてる……)


 ニアも言っていたことだが、そもそもアキラは何をしに来たのだ。それが先ず、レオには理解できない。それを知ることがイベント達成の鍵になるような気がするのだが……


(男らしく直球で行ってみるか?)


「だめだな……」


 成功のビジョンが浮かばない。そもそも、なぜアキラは治癒を拒絶したのか。彼女は損しないではないか。

 アキラの行動は全てが謎に包まれている。


「嫌になる……」


 寝返りを打って壁を見つめる。

 ゲームを止めることに未練はない。

 奇跡を起こし、大勢の民衆のために死ぬ。英雄に相応しい最期ではないか。『大魔法』を妨害したアキラに抱く感情は、レオには複雑だった。


(アキラ・キサラギ、か……)


 彼女に会うのは初めてだったが、自分を知っているようだった。


(あいつに、俺の何が分かるんだ)


 アキラ・キサラギのパーティ加入は強制イベントだ。これにも深い意味があるのだろう。だが、レオに去来する思いは全く別のものだ。


 アキラは仲間にしたくない。


 そもそも主人公は自分なのだ。パーティメンバーの選択くらいは好きに決めたい。イベントなどというものに左右されたくない。


(借り物の身体。借り物の人生、か……)


「レオ?」


 ニアが労るように、そっと肩に手を掛けてくる。


「……どうかしたか?」

「うん、ちょっと辛そうだったから……」

「大丈夫。俺は大丈夫だ」


 本当は、もう……レオはその言葉を飲み込んだ。


(もう、嫌だ……ここに居たくない!)


 なぜ、こんなにも辛く苦しいのか。その答えは、既にある。

 己がレオンハルト・ベッカーでないからだ。借り物の人生は彼に何の喜びも与えない。

 己がレオンハルト・ベッカーになるしかない。この世界では、彼はレオンハルト・ベッカーとしてしか生きられない。


 レオンハルト・ベッカーになるためには?


 彼はもう、その答えを知っている。


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