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S・D・G  作者: ピジョン
第2章 黄金病

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プロローグ

「おまえはもう、おしまいだ」


 大魔法による過剰な疲労に倒れたレオンハルト・ベッカーを盾に、アキラ・キサラギは壮絶な笑みを浮かべた。


「レオを離せ!」


 『失われた英雄』の『一の従者』獣人のニアは獰猛に唸りを上げる。


「話を聞けよ、クソ犬」


 アキラは短刀を抜き、レオの首筋に当てがった。


「泥棒猫……レオの命を狙ってたのか」


 ニアは油断なく棍を構えたまま、周囲を旋回するようにして距離を取り、レオ奪還の機会を窺っている。


「ふざけろよ、クソ犬。レオを殺そうとしたくせに」

「――クズ! 言うに事欠いて、なんてことを言うんだ!」

「なんだ、おまえ。バカだバカだと思ってたけど、本当にバカになったのか? 『大魔法』だぞ? レオが倒れたのはマジックドランカーじゃない」

「……わかってる。クズが邪魔したからだ。レオは、絶対に邪魔するなと言ったからな」


 アキラの顔から馬鹿にしたような笑みが消えた。


「なんだって? ……クソ犬、おまえレオに何をした!」

「なにも。ニアはいつだってレオの――」


 遮ってアキラは言った。


「エターナル・グレイスは術者の命を代償に加護を与える魔法だ……」


 短刀を持つアキラの手がわなわなと怒りに震える。


「おまえ……遅れた頭のクソ犬……レオを傷つけたな……!?」


 ニアの瞳に僅かな動揺が走る。だが、瞬時に怒りに燃え上がり、二人は異口同音に低く呟いた。


「「殺してやる!」」


 グラディエーターとセイントが二人を取り囲むようにして、指揮官であるニアの命令を待っている。この事実は、術者がいまだ健在であることを意味している。


「う……」


 ともすれば聞き逃してしまいそうな程のか細い声。


「「レオ!」」


 アキラとニアは喧噪にかき消されてしまいそうな声に耳を寄せる。


「……眠い……」


 一人。また一人、と召喚兵は消えて行く。


「……疲れた……ナナセ……もう……」


 混濁する意識の中、レオンハルト・ベッカーの吐き出した言葉が二人の殺意を根こそぎ殺ぎ取った。

 失意、思慕、敬慕、憎悪、嫉妬、あらゆる感情が混在した歪んだ形の笑みを浮かべ、ニアとアキラは口を噤んだ。

 辛うじて残っていただろう意識を手放す際、レオは、呟いた。


「帰りたい……」


 一粒の涙とともに――。



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