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S・D・G  作者: ピジョン
第1章 失われた英雄

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最終話 大魔法

「はじまったな」


 テラスから表の様子を伺いながら、レオは言った。

 考察に考察を重ね、これから起こるだろう事象に手は打ったつもりだ。


「出るか……」

「うぃ」


 幼いリンが背中に担いだブロードソードを引きずる。その様子にレオは苦笑いを浮かべた。武器の携帯は諦めた方がいいかもしれない。そもそもこの事象の原因となった引き金は治癒関連のイベントだ。戦闘が目的のものではない。


「たっ、大変ですぅ! レオさまぁ!」


 慌てた様子のアルがリビングの扉を開け放つ。


「うるさいよ」


 レオはリンの背中に担いだブロードソードの位置を直しながら、小さく舌打ちする。

どうやっても鞘の先の部分が床に当たってしまうのだ。

 アルは肩で大きく息をしながら、


「い、いっぱい人が来てます。みんな、レオさまを出してくれって!」

「知ってるよ」


 そんなことより、とレオはエルに向き直る。


「マティアス・アードラーへの書面、頼んだぞ」

「はい、お任せを。帰ったら、マダムとも会われるんですよね?」


 確認するように言うエルにレオは頷く。


「その予定だ。……リン、剣はいい。そこの杖取って……」

「ふぃ」

「アル、打ち合わせ通りにいくぞ。エルは行ってくれ。リン、杖を振り回すんじゃない! ああ、くそっ、アル! アル! マントの留め金が見当たらん!」

「はいい!」


 慌てて身支度を手伝うアル。マティアス・アードラーへの書面を持って飛び出すエル。神官の杖でニアの膝をつつくリン。ぴりぴりと指示を飛ばすレオ。

 慌ただしい朝の一幕に、ニアは頬を緩ませる。


(なつかしい……)


 そんなニアに檄が飛ぶ。


「ニアっ! へらへらしてんじゃない! だれが俺の護衛をするんだ? 俺は武器を持ってないんだぞ!」

「うぁっ」


 未だガウン姿のニアは逃げ出すようにして奥の部屋に引っ込んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



 アデライーデのロビーに出た辺りから、レオンハルト・ベッカーを取り巻く喧噪は一層騒がしさを増した。


 レオンハルト・ベッカーのステータスには現在、lost hero 『失われた英雄』と表示されている。


 その後発生したイベント数、実に482。その殆どが『治癒』に関連するものだ。

 そして上昇し続けるアライメント指数が500を超えた時、発生した『治癒』関連のイベントは互いに干渉し合い、連鎖反応を起こし、ついには一つの強制イベントへ昇華した。



 ――ニューアークにてアスクラピアの奇跡を起こせ!



 この強制イベントは、大掛かりな『治癒』関連の『大魔法』の使用を示唆している。

 事象の確定要素が濃すぎるのだ。つまり、主人公『レオンハルト・ベッカー』は、このイベントを避けられない。


「レオンハルトさま、お慈悲を!」

「レオンハルトさま、この子に祝福を!」

「レオンハルトさま……!」


 アデライーデの広いロビーにはニューアークの人々が詰め掛け、口々にレオンハルト・ベッカーの名を叫んだ。

 ロビーに浮塵子のごとく押し寄せる人波は階上目指して押し寄せてくる。


 獣人、ノーム、ドワーフ、ホビット、エルフ……種族や貴賎を問わず、熱狂的な歓声を上げ、歓呼の叫びを上げている。

 アルの背筋に冷たい汗が伝う。


(狂ってる……こんなの狂ってるよ……!)


 人波はレオに何を望むのだろう。英雄とは言え、ただ一人の人間であるレオがこれらの人波の期待に応えることは出来るのだろうか。応えられなかった時、この歓声はどうなるのだろう。この熱狂は何処へ向かうのだろう。

 アルの耳に人々の歓呼の歓声は、尽きぬ怨嗟の悲鳴のように聞こえる。


 SDGの『主人公』として、『レオンハルト・ベッカー』は、このイベントを回避することはできない!


 フロントではアデルが数人の使用人たちと一緒に、押し寄せる人並みを押し返そうと躍起になっていた。


「あんたら、こんなに寄ってたかって、旦那をどうしようってんだい! ここはあんたらみたいな汚いのが入っちゃいけないとこなんだよ! 出ていきな!」

「なんだと? この年増女! ここにレオンハルト・ベッカーがいるのはわかってんだ! とっとと出しやがれ!」


 レオは階下の喧噪を見下ろしながら、小さく溜め息を吐き出した。


「やれやれ……とてもじゃないが、あそこに降りる気にならんな」

「グルルルル……」


 ニアが低い唸り声を上げている。牙を剥き、嫌悪を隠さぬ彼女から放たれる殺気は、いつもエルやアルに向けているものとは比較にならないほど剣呑なものだ。


「レオ……止めるか?」

「ああ、やってくれ」


 ニアは、すうっと息を吸い込んだ。レオが、そっとリンの耳を塞ぐ。アルも慌ててそれに倣った。



「動 く な ッ!」



 階下ではアデルを含めた数十人の人々が殺気立ち、押し合いを繰り返していたのだが、ニアの大喝で、水を打ったかのような静けさを取り戻した。


「行こう」


 ニアが懐から三節棍を取り出す。


 アデルは突如襲った大音声による衝撃で、頭を抱え込むようにして、その場に蹲った。うっすら目を開けると、周囲の様子はそれどころではないようだった。先程まで言い合いをしていたノームの男が目を見開いたまま、ぴくりともしない。まるで時間が止まっているかのように身じろぎ一つしなかった。


「さすがエルフ。あれを耐えるとはな」


 レオが言って、とんとアデルの肩を叩くと嘘のように頭痛が消える。


「ちょっ、旦那! これはどういう……」

「超能力だ。獣人だからな。金縛りの方がわかりやすいか?」

「そうじゃなくて、こいつら……!」


 アデルは忌ま忌ましげに周囲を見渡す。種族を問わず、顔に狂乱の色を浮かべたまま身動き出来ずに固まっている。


「ばれたんだろ。まあ、一カ月半、よく保った方じゃないか?」

「ば、ばれるって……! そ、そんな……」

「アデル、すまない。詳しいことはエルに聞いてくれ」

「旦那、戻って来るんですよね? ここに帰って来るんですよね?」


 取り縋ろうとするアデルを、アルが圧し止める。


「マダム。大丈夫です、レオさまは戻りますから!」

「本当かい? 絶対だよ? アル、旦那を頼んだよ!」



◇ ◇ ◇ ◇



「レオ、通りはもっと大勢いる」


 ニアは警戒した面持ちで告げる。


「石化か死の呪いで対抗した方が早いと思う。嫌なら、ニアが蹴散らしてもいい。どうする?」


 ニアの超能力は精神に作用するものが多い。この場合、使用するとするなら対象を発狂させて同士討ちを狙う『マインド・ブレイク』か逃亡を促す『フィアー』だろう。どちらも恐慌を誘発する能力だ。


「って、おいおい、戦争じゃないんだからさ……」


 とは言うものの。レオは視線を同行するアルとリンに滑らせる。


「こんなに混乱した状況は予想していなかった。俺の見込みが甘かった。怖ければ残っても構わないぞ?」


 レオの背後に隠れるようにして身を固くしていたアルであったが、その言葉に応えるように背筋をピンと張ると、


「怖くなんか! 最後までお供いたします!」

「よく言った。では行こう」


 だが勇気だけでは超えられない壁というものがある。レオはリンの手から『法皇の杖』を受け取ると頭上に振りかざした。


「テオフラストの聖なる徒。集いて我を護りきれ――召喚!」


 レオが態々杖を用い、詠唱を行ったのには理由がある。

 神官魔法の効能において、少ないMPで最高のパフォーマンスを得るためには、神官の戒律に強く依存する必要があった。現在の彼は刀剣の類いを装備せず、神官衣と杖の他にはマント以外装備していない。これにより、最大MPが170%アップし、魔力と信仰の特性値にプラス補正が生じている。


 光り輝く魔法陣が出現し、召喚に応じたのは一二体のグラディエーター(剣闘士)だった。剣とバックラーとで身を固め、鎖帷子を着込んでいる。レベル2の『召還兵』だ。レベル1の召還兵であるセイントより、攻撃力と防御力に優れる。


「まだまだ!」

 レオはその後もさらに召喚を用い、最終的には二七体のグラディエーターと一二体のセイントを召喚した。


「ニア、指揮を任せる。相手は非武装だ。殺すなよ」

「わかった」


 ニアは不承不承頷いた。事態は既に小規模なものではない。これは『戦争』だ。少数に圧倒的大数が押し寄せるこの現状。殺すなり、石化させるなり、吹き飛ばすなりした方が遥かに早いではないか。


 路地は溢れんばかりの民衆で湧き返している。ニアはグラディエーターを先頭に、セイントたちを護衛に配置する凸形陣を展開させた。


「グラディエーター、押し返すんだ! セイントは一人も暴徒を通すな!」


(暴徒か……)


 ニアの下知に、レオは首を竦める。


 一方、アルはニアの過激とも言える表現を正当なものと感じている。民衆は現在のところ、歓呼の声を持ってレオを出迎えているが、数に任せて押し寄せる様は異様な迫力を帯びている。次の瞬間には暴徒化し、襲い掛かって来てもアルは特別不思議なこととは思わない。


「二人とも俺の近くへ」


 アルは慌てて、レオのマントを引っつかむ。リンに至っては、そのマントの中に隠れてしまった。

 レオは俯き、視線を下げたまま、ニューアークの中央広場を目指す。短いが、長い道程になるだろう。


「堪えるんだ、グラディエーター! 抜剣は許可しない!」


 ニアにとってはグラディエーターもセイントも騎乗すらしていない弱卒である。興奮した民衆が本気になればひとたまりもない。近づいてレオに耳打ちする。


「パラディン(聖騎士)がほしい。このままじゃ安全とはいえない」

「馬鹿な。ただでさえ狂乱の傾向にあるものを。刺激してどうする。それにパラディンは召喚レベル五だ。本当に戦争を始めるつもりか?」

「レオ、何言ってるんだ。こっちは寡兵だ。本音を言えばヴァルキリアが数人は必要な場面だ。せめてトルバドールを……」

「駄目だ。おまえがなんとかしろ。なんのために指揮を執らせている」

「レオ……!」

「オールガードを展開させる。それで我慢しろ。……行け!」


 ニアは肩を怒らせて、グラディエーターの集団に入って行った。三節棍を構え、中央の群衆を押し返す。

 凸形陣を敷いて、道を開き中央広場への道程を切り開こうとするニアであるが、彼女の思惑から現実は外れ、部隊は徐々に路地の傍らに追い詰められつつある。中央部分のグラディエーターたちが力負けし、進路を変えられたためだ。


(アキラのように上手く行かない……)


 ニアには若干の焦りがあった。そもそも部隊指揮はアキラの担当だった。召喚兵を用いる場合、術者本人は戦闘に参加せず、後方で支援に徹する場合が多い。術者が死亡、或いは気絶してしまうと召喚兵は消えてしまうためだ。このケースも多分に漏れず、術者であるレオは後方にて戦況を見守っている。


 慣れない部隊指揮に四苦八苦するニアに、心ない野次が飛ぶ。


「このワン公! おまえが英雄の『一の従者』なんてだれも信じやしないよ!」


 メルクーアの英雄であるレオンハルト・ベッカーがその長い旅路において、一人の獣人を最も長く、最も重用したという逸話は紛れもない真実であるが、獣人に対する偏見や差別が強い一部の地域では、この逸話をまるで信用していない。ニューアークは、その一部の地域に含まれる。


「くっ……」


 本当は自慢の爪と牙で思うままに噛み付き、喰い破ってやりたい。それをしないのは実力の証明のためだ。


(アキラには負けたくない……!)


 いわれない罵倒とアキラへの対抗心でフラストレーションを高めるニアの後背では、レオが手詰まりになりつつある現状に新なる一手を打とうとしている所であった。


「ニア、下がれ! ミラージュを使え!」

「ぅう……」


 ミラージュは対象の精神に作用してその場に残像を作り出し、パーティの姿を消す能力である。戦闘中、回避率を上げるこの能力は超能力で習得できる。


 ニアは無念の思いに臍を噛む。


 アキラならどうしたろう。部隊指揮を得意とする彼女なら、自分とは違いスマートに遂行したのではないか。少なくとも、レオの助言を必要とはしなかったろう。そんな己に対する失望と、レオの助言への消極的な不満を感じつつ、ニアは後背に引き下がる。


「グラディエーターたちに民衆を引き付けさせよう。俺たちは迂回して中央広場を目指す」


 リンを抱えたまま、レオは顎で裏路地を指した。


「あれ? 皆、こっちを見てません」


 アルがきょとんとして言う。


「残像を見てるだけだ。効果は長くない。急ぐぞ」

「は、はい。あの、レオさま、広場でなにを?」

「……民衆にアスクラピアの加護を与えるのさ」


 俄にレオは駆け出した。その後をニアとアルが追う。


「レオ! ニアは、ニアは……!」

「すまない、俺の見込みが甘かった。おまえはよくやった」

「…………」


 なんと不甲斐ない。これがアキラなら、レオは慰めの言葉など掛けず、むしろ叱責しただろう。そのように考えるニアは悔しさから泣きそうになった。


(あの卑しい猫が、そこまで来ているのに……!)



◇ ◇ ◇ ◇



 ニューアークの中央広場を見下ろす小高い丘の上では、マティアス・アードラーと猫の獣人の姉妹の片割れエルが三千人にも及ぼうかという民衆を睥睨している。

 レオンハルト・ベッカーの要請により、冒険者ギルドの長、マティアス・アードラーが集結させたのだ。

 急な要請ではあったが、あの『失われた英雄』が『大魔法』による奇跡を顕現させると触れ回れば、それでもこれだけの人数が集まった。


「す、すごい人です」


 見渡す限りの群衆に、エルは驚嘆の声を上げる。


「これでも全体人口の5分の1もおらんよ。最終的には、まあ……この倍は集まるだろうがな」


(これが流行の『黄金病』になんらかの歯止めをかけてくれるといいのだが……)


 マティアス・アードラーはドワーフの血を引く中肉中背の初老の男だ。往年は優秀な戦士として鳴らした男だ。これまでの人生で、神官魔法の奇跡は数々見たが、これほどの多人数を対象に加護を与える『大魔法』は通常ならば優秀な神官が複数人で行うのが常だ。感じ入ったように言った。


「本当に、英雄どのは『大魔法』を使うのかね?」

「はい!」


 弾けるようなエルの返事に、ふむ、とマティアスはうなずき掛ける。『失われた英雄』がその身を立てるデモンストレーションとしては充分だろう。

 しかし、とマティアスは疑わずにいられない。


「一人でやるのか?」

「はい! レオさまは、そうおっしゃってました!」


 元気よく答える猫の獣人の少女は、マティアスには無知の固まりに見える。


「英雄どのは、死にたいのかね?」


 マティアス・アードラーはのんびりと尋ねる。


「どういう意味でしょう?」


 エルは眉を吊り上げる。彼女の敬愛する英雄が詐欺師とでも言うつもりだろうか。むらむらと怒りが込み上げる。


「大魔法はとてつもなく魔力を消費するのは勿論、術者の生命力を要求する。これだけの人数だ。英雄どのがどれだけ優れとるのか知らんが、まあ、間違いなく命はないだろうな」

「えっ?」

「なんだ、知らなんだのか。無知は罪よな。まあ、いい」


 この際、レオンハルト・ベッカーが本物の『失われた英雄』本人であるかどうかはどうでもいい。だが、これだけの民衆を集めた以上、なんらかの『奇跡』を起こす必要があった。



◇ ◇ ◇ ◇


 ニューアーク中央広場。


「おーおー、人がゴミのようだな」


 一頻り笑うレオをアルが窘める。


「レオさま、なんてこと言うんですか!」

「怒るな。言ってみたかっただけだ」


 レオンハルト・ベッカーは笑った。秋の日差しのように暖かく、そして少し寂しい笑顔だった。

 アルは心を掻き毟られたような気がした。胸の底から得体の知れない不安が込み上げる。


「アル……リンを頼む」


 この場に、リンが居ることに意味はない。

 リンを連れて来てしまったのは、恐らく――レオンハルト・ベッカーでない本当の彼を知っているのがこの幼い少女だけだったからだろう。


「ごめんな、リン。付き合わせてしまって……」

「んん……」


 リンは首を振り、不安を隠しきれない表情でレオの腰にしがみつく。


「……リン……ジークリンデ……強く、生きろよ……」

「ぁぅ…!」


 意味を成さない言葉で喋りかけ、強く首を振るリンをアルが背後から引きはがす。


「大魔法……どうなるんですか?」

「知らないな。でもまあ、これだけのやつらが俺を信じてくれるんだ。やる価値はあるんだろう。きっと……」


 満更、悪い気はしない。レオは『法皇の杖』でコチンとブーツの拍車を叩いた。二十万GPもする代物だ。レアアイテムであるこの『法皇の杖』が、辺境の一都市であるこのニューアークのショップに存在したということはやはり、使えということだろう。



 エターナル・グレイス



 不滅の恩恵の名を冠した死亡以外の状態回復する『大魔法』だ。通常、『戦争』で行使される『大魔法』である。高レベルの神官が一部の強力な『杖』を用いることにより発動させることができる。

 ただし、このSDGでは強力な力を発動させる場合、常に死の可能性がつきまとう。奇跡を起こすならそれなりのことをしてみろ。見合った量の血を流せ。外でもない己の命を刻め、というわけだ。



「はじめる」



 レオは静かに言った。

 遠くにアルの声が聞こえる。集中が深くなり、雑音は彼の耳から消えて行った。

 メルクーアでは、全ての魔法は大気中の『エリクシール』から生成される。最初、視界の隅に靄のように漂うそれを見つけた時、レオは眼病を疑ったが、それが『エリクシール』であると知ったのは、図書館においてのことだ。


 うっすら目を開くと、彼の視界に極彩色の迷彩が飛び込んできた。『法皇の杖』はエリクシールの流れに共鳴し、僅かに震えていた。杖は極彩色の光の中からエメラルドグリーンの光を選び、取り込んでいる。


 『大魔法』は順調に発動している。詠唱を妨害されない限り、この流れは止まらないだろう。


 レオの周囲には召喚兵が幾重にも厚い円陣を組んで展開している。指揮を執るニアが遠目に見えた。頬で笑んで見せると、ぎこちない笑みを返してきた。


 全身から力が抜ける。集中が深まったためか、全てが、何もかもが遠くなる。薄れ行く意識の中、呟いた。




「尽きぬ恵みを……エターナル・グレイス」




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