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十五章

来週の更新はちょっとどうなるか分かりません。間に合えば更新したいと思います。

午前中の座学を終え、今は昼食の時間。

四人はいつも通り食堂へ来ていた。

特別講義は通常の時間割とは別の時間で行われたため、他の学年の生徒はまだ授業中らしく、今は二年生しかいない。そのためすんなりと四人分の席を確保できた。

「あんなイフィム初めて見たわ。そもそも特殊型を見るのが初めてだけど」

文美が興奮気味に話す。

「捕まえるって発想は普通思いつかないよね。僕だったら確実に逃げてるかな」

「私もかな」

 幸也の言葉に椎名が同意した。

「永斗はどうなのよ?」

 講義が終わってからずっと黙ったままの永斗に文美がふる。

「あ、ああ。俺も逃げるだろうな……」

「なんかぱっとしない言い方ね。さっきからどうしたのよ?」

「なんでもない。少し疲れただけだろ」

 永斗はそう言って昼食を食べるのに専念してしまう。

 三人とも、授業が終わってからおかしくなったのは気づいているものの、その理由が分からず、どうすることもできなかった。

「午後からは実技訓練だよね?」

「そうね。それも合同でやるみたいだし、実演でもしてくれるのかしら?」

「そうじゃないかな。一人一人は相手にしてる余裕無いだろうし」

「能育科はどうなるんだろう?」

「能力ごとに使い方は全く違うものね。七瀬さんの実演を見てもタイプが違ったら全く意味無いだろうし……」

「七瀬さんの能力ってなんだっけ?」

「たしか水を操る能力だったはずよ。正直私が応用できるとは思えないわね」

「私はなんとかなりそうかな。光と水って以外と似てるところ多いし」

「うらやましい限りだわ」

 他の学年の授業が終わったのか、一気に食堂に人が増えだした。

 すでに食べ終わった四人は、いつまでも貴重な席を占拠するのは悪いと思い、早々に移動することにした。

「じゃあ私たちは実習の準備してくるわね」

「うん。またあとでね」

「二人も遅れるんじゃないわよ」

「ははは、大丈夫だよ。ねえ永斗君」

「ん?ああ、そうだな」

 やはり永斗はどこか上の空だ。そんな永斗の姿を椎名はじっと見ていた。


「よし集まったか?」

 グラウンドに生徒が集まった。これから実技訓練だ。今は幸一の七瀬を囲むように生徒たちが集まっている。

「本当なら一人一人見てやりたいところだが、時間も限られている。なので今回は集団戦をしてもらう」

「「「「集団戦?」」」」

 その言葉に数多くの生徒が疑問を持った。

 基本的にイフィムの討伐は能力者とガーディアン二人一組で行う。

 偶然他の組に遭遇した場合は共闘することもあるが、学生のうちならまだしも、ガーディアンとして依頼を受けるようになればその可能性もほぼゼロに近い。

 生徒たちはそんなことをやる必要があるのか疑問に思ったのだ。

「疑問は分かる。だがお前たちはまだ卒業するまでに最低でも三年。多い連中では五年以上かかるやつらもいるだろ。そして学生のお前らはまだ弱い。だから集団で一体のイフィムと対峙する方法も身につけておくべきだ。本当なら教師に教えてもらうのが一番なんだろうが、あいにくここの教師もそこまで腕の立つ奴がいないからな」

 そう言って幸一は肩をすくめた。その姿に授業を見ていた教師人が苦笑いをする。

「そこで今回は能育科と護衛科の混合編隊で俺と七瀬のチームと戦ってもらう。編隊はすでに先生に任せてあるからそれに従え。人数の問題から基本的に四人一組で、能育科一人に護衛科三人の割合になっているはずだ。先生編隊をお願いします」

 そう言って永斗は教師にその場を任せ、人の円の外に出た。

 それと同時に一人の先生が入ってくる。

「それでは!これから編隊を行う!名前を呼ばれた者は私の前に出て来い!」

 相変わらずのどなり声に集まっていた生徒たちが一斉に顔をしかめた。

 もちろん永斗は教師が出てきた時点で耳栓をしている。幸也も今回は耳栓を持参して来たのか、大丈夫なようだった。

そのことを知らない椎名と文美はやはり耳を押さえていたが……


順番に名前を呼ばれ、一人、また一人と永斗の周りから人がいなくなっていく。

幸也と文美も呼ばれ、とうとう名前を呼ばれていない人で残っているのは永斗と椎名の二人だけになってしまった。

「よし、これでチーム編隊は完了したな」

「「俺たちはどうすればいいんだ(ですか)?」」

 いまだ名前を呼ばれておらず、編隊も決まっていない永斗と椎名は揃って声を上げた。

「喜べ!お前たちは!ペアで戦ってもらう!」

 教師の発言に、編隊を組み終わった生徒から「お~」と驚きの声が漏れる。

 中にはペアにならなくて喜ぶような声もあったが、大半がうらやましがる声だ。

 なんだかんだ言って、みんな血の気が多いのである。

「なんで俺たちなんだ?」

「前回の実技訓練を覚えているな!俺たちが奇襲を仕掛けたのだ!それでお前たち二人は目に止まった!それだけだ!」

「永斗はともかく私はおかしいと思うんですけど……」

 奇襲の際、返り討ちにした永斗とは違い、ほとんど何もせず能力を使って隠れていただけの椎名は焦っていた。

 このままペアでの戦いになれば、足を引っ張ってしまうのは間違いないからだ。相手は世界でも数人しかいないエクスガーディアンと海神の巫女の二つ名を持つ海神七瀬だ。

 そんな相手に普通よりも能力の劣る椎名がなにか出来るとは思えなかった。

「お前は七瀬からの指名だ!」

「へ?」

 教師のどなり声はグラウンドに響き渡っていた。

 それを聞いた生徒たちガヤガヤとしだす。当然それは椎名に関することだ。

 「誰彼女?」と言った疑問や、椎名を知っている者からは「なんで彼女なんかが」という声も。

「よく分からんがな!七瀬が椎名自信を指名してきたんだ。ちょうど永斗とパートナーだったみたいだからペアにしておいた!」

「はぁ……」

 意味の分からない理由を言われ、茫然とする。すると永斗が椎名の肩に手を掛けた。

「やってみろ。せっかく指名されたんだ。良い機会だろ」

「うん……でも私、永斗の足引っ張っちゃうし」

「関係ないな。お前は俺のパートナーだろ?」

永斗の言葉が頭に響いた。

 パートナー。それは二人にとって大切な言葉だ。

「うん。分かったやってみる!」

「その意気だ」

 決心のついた椎名をみて、永斗が小さく笑った。

「よし、準備が出来たら最初に呼ばれたグループから訓練を始めるぞ!」

 幸一と七瀬はすでにグラウンドの中央でスタンバイしている。位置取りは、幸一が前衛、七瀬が後衛を受け持つ一般的なスタイルだ。


 一組目の試合が始まる。

 一組目は能力者を中心に、その三方を護衛科が囲む形をとった。おそらくこれが一番ポピュラーな形になるだろう。

 試合開始と同時にサイドの二人が責め、正面の一人が能力者の守りに入る。

 能力者は三人に守られているうちに何かしらの能力を発動させ、七瀬か幸一どちらかを攻撃する。それに合わせて初めに責めた二人が臨機応変に対処するというものだ。

 作戦としてはそれで良いだろう。一般のイフィムとの戦いならそれでも十分だ。

 だが、今回の相手は人間。それも本職のガーディアンと能力者だ。学生はその強さを見誤っていた。

 試合開始と同時に掛け出すサイドの二人、しかし次の瞬間にはその二人ともが戦闘不能に陥っていた。

 一人は幸一に首を叩かれ気絶する、もう一人は七瀬の生み出す水の圧力に負けて地面を転がっている。

「甘いよね。二人で攻めればどうにかなるなんて考えはさ」

「そう言うことだ。遠慮なく行くぞ」

 その宣言とともに、残りの二人が戦闘不能に陥り、一試合目は終了となった。

 その後幸一たちは十分間の休憩をとった。

 別に戦闘で疲れた訳ではない。今の幸一たちの戦闘を見て、作戦を練り直させるための時間だ。一試合目の連中には悪いが、見ているだけでも十分良い経験にはなる。今回はそれで我慢してもらうつもりだ。

 それぞれのチームが集まって相談しているのを見ながら、永斗も二人をどうやって攻略するか考えていた。

「椎名。今の七瀬さんの能力の発動分かったか?」

「うん、なんとか。かなり速かったよね。でも威力自体は弱そう」

「おそらく対人戦だからだろうな。イフィムには聞かなくても人間相手ならあの威力で十分だ。だからあの速さが出来たんだろ」

「永斗は幸一さんの動き見えた?私全然みえなかったんだけど」

「もちろん見えた。だけどあの動きについて行けるかって言われたら微妙だな」

 幸一の動きは速かった。それは永斗がこれまで見てきたどんなガーディアンよりもだ。そしておそらく、それですらまだ本気ではないのだろう。

 速さの攻略法を考えているうちに、二試合目が始まった。

 今度のチームは能力者を中心にすることに変わりはないが、護衛科が縦に三人並んでいた。永斗はそれが幸一の速さに対処するためだろうと踏んだ。

 一試合目で幸一は、後ろから首筋を叩いた。だから単純に後ろを取られにくくするために縦に三人ならんだのだと考える。だが、それはどう見ても失策だ。

「二試合目!初め!」

 教師の声と同時に三人が一列に走り出す。そしてそのまま七瀬の水によって三人とも押し流された。

 それを見て呆然とする能育科の生徒。

「そうする?」

「降参です」

 伸びた護衛科の生徒を見ながら、能育科の生徒はあっけなく白旗を上げた。

 試合が進むにつれて、どんどんと新しい形の編成が生まれては二人によって壊滅させられていく。その中でも一番善戦したのは文美たちのチームだった。

 文美たちは全員が前衛と言う、超攻撃型のチーム編成で挑んだ。

 文美が予め能力を掛け暗器とかした葉っぱを全員に渡し、乱戦の中で奇襲する作戦だ。

 最初の一撃は幸一も七瀬も驚いた表情をしていたが、それも最初だけ。

 途中からは上手く対処されじり貧に。最終的には技術の差で負けてしまった。

「惜しかったね」

 戻ってきた文美たちに椎名が声を掛ける。

 文美たちは負けながらもすっきりとした表情をしていた。

「強かったわ。あの奇襲方法ならいけると思ったんだけどね~」

「途中からは上手く対処されちゃったね。でも七瀬さんが能力を初めて防御に使わせれたし、幸一さんには剣を抜かせれた。僕はそれで十分かな~」

「何甘いこと言ってんのよ!永斗と椎名は絶対勝ってよ!」

「そんな凄い期待掛けられても……」

 戦闘の後で熱くなっている文美を見ながら永斗と椎名は苦笑する。

 そしてとうとう最後。

 永斗と椎名対幸一と七瀬のペア同士の対決の順番がきた。


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