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プロローグ

初めての投稿です。

読みにくい点が多々あると思いますがよろしくお願いします。

週一の更新をめざします。

上津 永斗(かみつ ながと)は眼前に剣を構え、その後ろで藍東 椎名(あいとう しいな)は敵を見据える。

今二人の目の前にいるのは一体の化け物。形こそ狼の形をしているが、それは厳密に言えば生き物ですら無い。

全身をコールタールの様な光沢のある黒色に塗られたそれには、目も鼻も存在しない。

ただ形が狼の形をとっているだけである。

人類はその化け物のことを便宜上イフィムと呼称した。

六十三年前に突然現れたイフィムは、決まった形を持たず、それぞれが現実に存在する動物や昆虫、鳥などの形を真似てその姿を形作る。

今二人の目の前にいるのも、その一種類だ。イフィムは生まれる瞬間に、その環境に適した形を取る。人に捨てられたビル街のここでは、犬や猫などが多数生息している。おそらくイフィムはそれを真似たのだろう。

ビルとビルの間を俊敏に動く狼型のイフィムを、二人はようやく大通りの道まで引っ張り出したところだった。

「椎名、これで決めるぞ」

永斗が後ろの椎名に声を掛けた。

「うん、私…これ以上…走りたくない。絶対に決めよう!」

椎名もそれに強くうなずく。

二人はここまでイフィムを引っ張り出すのに、すでに一時間以上走り続けていた。

永斗の方にはまだ余裕が見れるが、椎名は限界が近い様子だ。額からは大粒の汗が流れている。

「俺があいつの動きを止めるから、その間に核を壊せ。核の位置は分かってるか?」

「うん、大丈夫。割と分かりやすい場所にあるよ。尻尾の付け根の部分」

「分かった」

イフィムは二人を警戒したまま様子を見ていた。隙あらば近くのビルに逃げ込もうとしている。しかしそれを分かっている二人は、視線をイフィムから離すことは決してしない。

永斗がイフィムとの距離を一歩近づけるとイフィムが一歩下がった。

さらにもう一歩。イフィムも同じように下がる。

さらにもう一歩。

しかし次の一歩をイフィムは下がることが出来なかった。いつの間にかイフィムの後ろに白色の壁が出来ているのだ。それに驚いたイフィムが視線を二人からそらした。その一瞬を永斗は見逃さない。

一息に間合いを詰め、イフィムに切りかかる。

それに気づいたイフィムも横っ跳びに避けようとするが、すでに間に合わない。斬撃はイフィムの胴体を凪いだ。そしてすぐに永斗はイフィムと距離を取る。

真っ二つに切られたイフィムはその場にドサッと崩れ落ちる。しかしこれでは終わらない。イフィムの切られた上半身は瞬く間に消滅していく。しかしそれに対するようにして、下半身は切られた位置から上半身が修復されていく。

イフィムに通常の攻撃は通用しない。どれだけ切っても、焼いても、すり潰しても必ず核結晶と呼ばれるイフィムの心臓部が残っている限り修復してしまう。そして核結晶は現代兵器では決して壊れない。

「今だ。修復中のあいつは無防備になる」

永斗の声に合わせるように、後ろに控えていた椎名が右手をイフィムに向けて付きだす。

その手のひらには、先ほどイフィムの後退を妨害した白色の壁と同じ色の球体が浮かんでいた。

「ライトショット!」

椎名の声と同時に球体はイフィムに向かって打ち出された。球体は一直線にイフィムの尾の付け根を打ち抜く。

パリンッ!!っとガラスの割れるような音が辺りに響いた。同時に今まで修復を進めていたイフィムの修復が止まる。そして上半身と同じように消滅していく。

イフィムの核結晶を破壊し完全に殺すことが出来るのは、超能力者の力だけだ。今の椎名の攻撃がそれだ。

超能力者は、イフィムが現れると同時に現れるようになった。彼らの力は、血のよって遺伝し、その能力は千差万別である。

椎名は超能力者の家系である藍東の血筋だ。その力は簡単に言えば光を操るものだ。

永斗はイフィムが完全に消滅すると、その場に残っている割れた核結晶を拾い上げる。

「これで終了だ。ライトショットもだいぶ精度が上がったな」

拾った欠片を持ってきたビンに入れながら、永斗は椎名に振り返る。

「今はお昼だからだいぶ制度が上げれるけど、やっぱり朝とか夕方は精度が落ちちゃう」

椎名はどこかしょんぼりとした表情を作る。

「それは練習で実力付けてくしかないんじゃないか?実際昔に比べれば、今のライトショットの威力もずいぶん上がってる」

「そうなんだけどね……」

椎名は永斗の言葉を聞いても尚も不満があるようだ。

超能力は血にのみ遺伝するが、その能力の強さはバラバラだ。藍東家の場合なら光を一度に操れる総量、どれぐらいの明るさなら光を操れるかの光量、操る光をどの様に操ることが出来るかの力量でその能力者の強さを測る基準としている。

最後の力量は練習しだいでいくらでも上げることは出来るが、前者二つは完全に先天的な才能だよりだ。椎名は、この総量と光量が、藍東の他の能力者に比べて明らかに劣っていた。

これ以上椎名が考え込まないようにするため、永斗は「それよりも」と話題を変えた。

「これで俺は二期生に上がれるんだったな」

「やることはやったし大丈夫だと思うよ?先生もこの実習を無事に済ませれば上がらせてくれるみたいなこと言ってたし」

「なんで俺がこんな面倒なことしなくちゃいけないんだ……」

永斗の呟きに椎名がジト目になる。

「永斗が変にサボったりしなければ、もっと早いうちに二期生になれたと思うよ」

その言葉には呆れが多分に含まれている。それを聞いて永斗は「うっ…」と言葉を詰まらせた。

「だいたい実技だけじゃ二期生になれないの分かってたのに、全然実習に参加しなかったのは永斗でしょ?それ以前に一般教科のテストだって……」

椎名の説教口調に、永斗は話題の選択を誤ったことをいまさらながらに気づいた。しかし、時すでに遅し。説教を開始した椎名を止めれる人物は、ここにはいないのだ。

運動用に後ろに束ねた藍色の髪をなびかせつつ、椎名の説教は続く。

永斗はビンに入れた核結晶の欠片を眺めながらただ説教を聞き流すことしかできなかった。


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