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中編 その2

あれ、今回で終わるはずだったのに。無様にその2だなんて。

 結局ここに来てしまった。

 変書堂のある旧味噌蔵街道。

 住んでいるアパートの部屋以外ではここしか知らないのだ。追いつかれた場合、住処を教える愚行を犯すわけにはいかなかった。

 ここは町が観光地区として街並み保護条例で外観を変更することを禁止している。だから街並み自体は江戸時代のままだ。中身は改装され、観客向けのおしゃれなカフェや土産物屋、オッサンみたいに自分の趣味の店が営業しているのだ。

 ここの店舗の閉店時間は早い。夜間のライトアップは計画されてはいるが諸事情で延期となっていてろくに外灯のないここは早々に闇に包まれる。観光客はだから日没と共に帰ってゆくので閉店も早くなってしまうのだ。

 環さんの事は心配する必要はなかった。

 僕よりもよほどこういうモノの相手は上手い。

 以前彼女に救われた身としては、僕ごときが心配するほうが傲慢だと思える。

 しかし環さんは退魔師ではない。怪異を退けたり封じる事はできないのだ。

 一時的な足止めをしてくれているのだろうが危なくなったら逃げるはずだった。自己犠牲を求めるほど彼女と僕は深い関係ではない。結局ここへ奴はやって来る筈だった。

 では、僕はどうやってあいつを退けるのか?

 その答えはさっきから小脇にかかえている紙袋に入った本にあるはずだった。

 数少ない外灯の下にやってきた。

 紙袋を空け、本を取り出す。

 退治法だから、きっと後ろの方に記載されているはずだ。

 ペラペラめくりながらたどり着いたのは付録の「こんな時どうするQ&A」のコーナーだった。



 質問 シャドウマンを倒す方法はあるのですか?


 答え ありますが、出来ればプロの方に頼みましょう。

    もし近くに専門家がいない場合にのみこの方法を試してください。

    それは……



「それはシャドウマンの弱点に攻撃を加えることです、って」

 つまり、シャドウマンは影の本体である実体と虚像である影が融合した半実体化した存在。

 通常の物理的攻撃ではダメージを与えられない。

 ただし融合体として現れた時唯一半実体化されていない場所がある。

 半実体では役に立たない部位。

 それは目だった。

 殺人影は目を持たないため気配で人を感知して追い掛け回しているらしい。

 だが実体を取り込んだシャドウマンは目で標的を追いかける。そこが唯一の完全実体の部位だった。

 そこを失うと実体は虚像に完全に飲み込まれてしまう。

 虚像がすべてを覆えば実体を亡くした虚像は拠り所を失い消滅する。

 自身が自身を滅ぼすわけである。

「つまり、目を潰せ、と」

 うわー。物理攻撃は苦手だ。暴力反対主義者というわけではないが、そんなものを行使する機会に出会う場面は避けるようにしてきた。好き好んで力を誇示するほど強いわけでもないしね。

 だが今回は自分の命がかかっているから。自身の生存戦略を立てなければ死ぬしかない。

 やるしかない。

「それで、俺を倒す算段は決まったかなー」

「うわああ!」

 隣にシャドーマンがいた。やつだ。

「ど、どうやってここへ」僕は思わず外灯の照らす光の圏外へ飛び出した。

「俺は影だぜ。お前の影に忍び込んだのさ」

「なんだと。じゃあ環さんはどうした?」

「あの女?自分が飼い慣らした烏の群れをどこからか呼び集めて攻撃してきたけどさ、物理攻撃は効かないんだよね。俺って影だし。だから打つ手なしでスルーされて呆然としていたさ」

「そうか…環さんでも無理だったか…」彼はあれが式神であることを知らない。だが環さんが阻止できなかった相手に渾身の一撃を与えることが出来るのだろうか?

「さあどうする。後はお前だけだぞ」

「う、ううう」

 打つ手は、あった。今思い出した。

 僕は上着のポケットから環さんからもらった紙片を取り出した。

 ケットシーを呼び出す呪符だ。

 そしてあの恥ずかしい呼び出しの呪文を叫んだ。

「ライド・ザ・ケットシー!」

「にゃあー」

 脇に巨大な猫が出現した。巨大化した野良猫だった。大型のネコ科動物ライオンやトラのような精悍さは全くないただの猫の姿をしていた。

「乗れにゃー」こいつは日本語を喋りやがった。

「お、おう」

「なんだそれは。待てよ。逃げるなよ」

 知ったことか。僕は猫の背に乗り逃走した。

「どうせ逃げられないがな」背後で奴が言った。

 その通りだ。だが、ここは逃げる!

生存戦略しまーす。相変わらずこの監督は面白いフレーズ考えますね。こういう才能が欲しいと思います。文章書きを目指すものとしては。

できれは次で完結したいと思っていますが、どうでしょうか?わかりません。

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