第10話「背徳のキス」【前編】
ここからさらに、
ヨンジュンとセリナの関係は”決定的な一線”を越える。
でも、それはただ甘いものじゃない。
罪悪感、痛み、絶望、そしてほんのわずかな救い――
すべてを飲み込んだ、「背徳のキス」。
【シーン:廃倉庫・夜】
静まり返った夜。
遠くで犬の遠吠えが聞こえるだけ。
廃倉庫の片隅、
ヨンジュンとセリナは小さな焚き火を囲んで座っていた。
震えるセリナの肩に、
ヨンジュンはそっと自分のジャケットをかけた。
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「寒いか?」
低く優しい声。
セリナは小さく首を振った。
「大丈夫……」
けれど、その声は震えていた。
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【シーン:近づく想い】
ふと、沈黙が落ちる。
お互いに何も言わないまま、
ただ焚き火の火を見つめ続けた。
けれど、空気は確実に、
熱を帯びていた。
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(ダメだ。)
(この感情に、飲まれちゃいけない。)
ヨンジュンは必死に自制しようとした。
だが、
セリナの儚げな横顔を見るたびに、
その決意は、音を立てて崩れていった。
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【シーン:セリナの告白】
突然、セリナが呟いた。
「……私、思い出した気がする。」
ヨンジュンは息を呑む。
セリナは、火の揺らぎを見つめながら続けた。
「昔……
誰かが、私にこう言った。」
「“生きろ”って。」
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ヨンジュンの胸に、
あの夜の記憶が、
鋭い棘のように蘇った。
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(あの日――
父が俺に託した言葉。)
(それが、
セリナの心にも残っていた……?)
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【シーン:交錯する感情】
セリナは、かすかに笑った。
「……たぶん、それだけで……
私は、ここまで生きてこられたのかもしれない。」
「だから――」
セリナは、涙ぐんだ目で、
まっすぐヨンジュンを見つめた。
「あなたに……ありがとう、って言いたい。」
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その瞬間。
ヨンジュンの中で、
張り詰めていたすべてが、音を立てて崩れた。
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守りたかった。
壊したくなかった。
それでも、
どうしようもなく、
触れたかった。
この命ごと、
彼女に、すべてを捧げたかった。
**
(罪だ。
だけど――これだけは。)
**
ヨンジュンは、
静かにセリナへと顔を近づけた。
焚き火の熱が、
二人をそっと包み込む。
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そして――
そっと、触れる。
唇と唇。
悲しみと罪を重ねる、
背徳のキスだった。
⸻
(続く・中編へ)




