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紅蓮の契約  作者: ZEN
33/84

第10話「背徳のキス」【前編】

ここからさらに、

ヨンジュンとセリナの関係は”決定的な一線”を越える。


でも、それはただ甘いものじゃない。

罪悪感、痛み、絶望、そしてほんのわずかな救い――

すべてを飲み込んだ、「背徳のキス」。

【シーン:廃倉庫・夜】


静まり返った夜。

遠くで犬の遠吠えが聞こえるだけ。


廃倉庫の片隅、

ヨンジュンとセリナは小さな焚き火を囲んで座っていた。


震えるセリナの肩に、

ヨンジュンはそっと自分のジャケットをかけた。


**


「寒いか?」


低く優しい声。


セリナは小さく首を振った。


「大丈夫……」


けれど、その声は震えていた。


**


【シーン:近づく想い】


ふと、沈黙が落ちる。


お互いに何も言わないまま、

ただ焚き火の火を見つめ続けた。


けれど、空気は確実に、

熱を帯びていた。


**


(ダメだ。)


(この感情に、飲まれちゃいけない。)


ヨンジュンは必死に自制しようとした。


だが、

セリナの儚げな横顔を見るたびに、

その決意は、音を立てて崩れていった。


**


【シーン:セリナの告白】


突然、セリナが呟いた。


「……私、思い出した気がする。」


ヨンジュンは息を呑む。


セリナは、火の揺らぎを見つめながら続けた。


「昔……

 誰かが、私にこう言った。」


「“生きろ”って。」


**


ヨンジュンの胸に、

あの夜の記憶が、

鋭い棘のように蘇った。


**


(あの日――

 父が俺に託した言葉。)


(それが、

 セリナの心にも残っていた……?)


**


【シーン:交錯する感情】


セリナは、かすかに笑った。


「……たぶん、それだけで……

 私は、ここまで生きてこられたのかもしれない。」


「だから――」


セリナは、涙ぐんだ目で、

まっすぐヨンジュンを見つめた。


「あなたに……ありがとう、って言いたい。」


**


その瞬間。


ヨンジュンの中で、

張り詰めていたすべてが、音を立てて崩れた。


**


守りたかった。

壊したくなかった。


それでも、

どうしようもなく、

触れたかった。


この命ごと、

彼女に、すべてを捧げたかった。


**


(罪だ。

 だけど――これだけは。)


**


ヨンジュンは、

静かにセリナへと顔を近づけた。


焚き火の熱が、

二人をそっと包み込む。


**


そして――


そっと、触れる。


唇と唇。


悲しみと罪を重ねる、

背徳のキスだった。



(続く・中編へ)

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