第9話「秘密の肖像」【前編】
【シーン:郊外・古びたモーテル】
車を走らせ、
ヨンジュンとセリナは、人目のつかない郊外のモーテルにたどり着いていた。
安っぽいネオン。
埃っぽい空気。
けれど今は、
ここが唯一、二人を守るシェルターだった。
**
【シーン:部屋の中】
二人きりの、小さな部屋。
セリナはベッドに腰を下ろし、
不安げにヨンジュンを見上げた。
「ここ……安全なの?」
ヨンジュンは頷く。
「今は、な。」
けれど、それは
永遠には続かないことを、
二人とも本能で分かっていた。
**
【シーン:セリナの疑問】
セリナは、ふと尋ねた。
「……私の過去って、
一体、何だったの?」
ヨンジュンは言葉に詰まる。
本当のことを、どこまで話すべきか。
(今はまだ……すべては言えない。)
それでも。
少しずつでも、
彼女に「真実」を取り戻させなければならない。
**
【シーン:古い箱】
ヨンジュンは荷物の中から、
一つの古い箱を取り出した。
中に入っていたのは、
――一枚の肖像画。
幼い少女。
純白のドレスを着た、笑顔のセリナ。
だが、その背後には、
どこか冷たい影があった。
**
「これ……」
セリナは肖像画をそっと撫でた。
記憶にない。
でも、涙がこぼれた。
**
【シーン:ヨンジュンの決意】
ヨンジュンは静かに言った。
「君が育った世界は、
最初から“檻”だった。」
「君の人生は、
君のために用意されたものじゃない。」
セリナは、震えた。
恐怖ではない。
失われた過去に対する、
言いようのない悲しみ。
**
【シーン:迫る影】
そのとき、
モーテルの外で、
一台の黒い車が止まった。
暗闇の中。
誰かが、こちらを見つめていた。
**
運命は、まだ二人を許さない。
⸻
(続く・中編へ)




