第8話「哀しみの誕生日」【後編】
【シーン:迎賓館・裏庭】
雨に濡れた芝生を踏みしめ、
ヨンジュンとセリナは必死に走った。
後ろからは、追っ手たちの怒号。
銃声すら聞こえる。
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セリナの細い手を握りながら、
ヨンジュンは必死で考えた。
(あと数分で、外へ抜けられる。)
(だが――)
目の前に立ちはだかったのは、
黒服たちだけではなかった。
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【シーン:ジュンソクの登場】
月明かりの下。
そこに立っていたのは――
ヨンジュンと瓜二つの顔を持つ男、
カン・ジュンソク。
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ジュンソクは、
不気味な笑みを浮かべながら、
セリナを見つめた。
「やあ、セリナ。」
優しげな声。
けれど、その瞳には、
狂気だけが宿っていた。
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【シーン:兄弟の対峙】
ヨンジュンはセリナを背後にかばい、
低く唸るように言った。
「……道を開け。」
ジュンソクは肩をすくめた。
「どうしてそんなに焦るの?
僕たちは“家族”じゃないか。」
「セリナを守るって?
ふざけるなよ、弟。」
「彼女は、僕のものだ。」
――狂気。
その一言に、すべてが滲んでいた。
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【シーン:決裂】
ジュンソクがナイフを抜く。
ヨンジュンは迷わなかった。
セリナを背後に庇い、
素手でナイフを受け止め、
ジュンソクを突き飛ばした。
血が、指先を伝う。
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痛みも、恐怖も、もう感じなかった。
ただ一つだけ。
セリナを守る――
その意志だけが、ヨンジュンを動かしていた。
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【シーン:脱出】
ジュンソクがよろめいた隙を突き、
ヨンジュンとセリナは再び走り出す。
脇道から、辛うじて黒塗りの車に滑り込む。
ドアが閉まり、
エンジンが唸りを上げる。
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後部座席。
セリナは、震える声でヨンジュンに尋ねた。
「ねえ……教えて。
あなたは……誰なの?」
ヨンジュンは、ハンドルを握ったまま答えなかった。
答えられなかった。
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(俺は、
君にとって最悪の存在かもしれない。)
(でも――)
(それでも、君を離さない。)
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車は夜の闇を裂き、
二人を未来へと運んでいく。
けれどその未来には、
まだ、果てしない苦しみと闇が待ち受けていることを、
二人はまだ知らなかった。
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【第8話 完】




