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紅蓮の契約  作者: ZEN
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第8話「哀しみの誕生日」【後編】

【シーン:迎賓館・裏庭】


雨に濡れた芝生を踏みしめ、

ヨンジュンとセリナは必死に走った。


後ろからは、追っ手たちの怒号。


銃声すら聞こえる。


**


セリナの細い手を握りながら、

ヨンジュンは必死で考えた。


(あと数分で、外へ抜けられる。)


(だが――)


目の前に立ちはだかったのは、

黒服たちだけではなかった。


**


【シーン:ジュンソクの登場】


月明かりの下。


そこに立っていたのは――


ヨンジュンと瓜二つの顔を持つ男、

カン・ジュンソク。


**


ジュンソクは、

不気味な笑みを浮かべながら、

セリナを見つめた。


「やあ、セリナ。」


優しげな声。

けれど、その瞳には、

狂気だけが宿っていた。


**


【シーン:兄弟の対峙】


ヨンジュンはセリナを背後にかばい、

低く唸るように言った。


「……道を開け。」


ジュンソクは肩をすくめた。


「どうしてそんなに焦るの?

 僕たちは“家族”じゃないか。」


「セリナを守るって?

 ふざけるなよ、弟。」


「彼女は、僕のものだ。」


――狂気。


その一言に、すべてが滲んでいた。


**


【シーン:決裂】


ジュンソクがナイフを抜く。


ヨンジュンは迷わなかった。


セリナを背後に庇い、

素手でナイフを受け止め、

ジュンソクを突き飛ばした。


血が、指先を伝う。


**


痛みも、恐怖も、もう感じなかった。


ただ一つだけ。


セリナを守る――

その意志だけが、ヨンジュンを動かしていた。


**


【シーン:脱出】


ジュンソクがよろめいた隙を突き、

ヨンジュンとセリナは再び走り出す。


脇道から、辛うじて黒塗りの車に滑り込む。


ドアが閉まり、

エンジンが唸りを上げる。


**


後部座席。


セリナは、震える声でヨンジュンに尋ねた。


「ねえ……教えて。

 あなたは……誰なの?」


ヨンジュンは、ハンドルを握ったまま答えなかった。


答えられなかった。


**


(俺は、

 君にとって最悪の存在かもしれない。)


(でも――)


(それでも、君を離さない。)


**


車は夜の闇を裂き、

二人を未来へと運んでいく。


けれどその未来には、

まだ、果てしない苦しみと闇が待ち受けていることを、

二人はまだ知らなかった。



【第8話 完】

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