第7話「冷たい契約」【前編】
【シーン:洋館・夜明け前】
雨は止み、
灰色の夜明けが、静かに訪れていた。
地下室に立つヨンジュン。
その手には、一枚の書類。
【秘密保持契約書】
そこには、ハン・ギョンウの直筆サインが残されていた。
(これさえあれば……)
ハン家の犯罪、
セリナを道具として育てた証拠。
財閥を地に落とす、致命的な切り札。
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ヨンジュンは、震える手で書類を見つめた。
(……だが、本当にそれでいいのか?)
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【シーン:セリナの寝顔】
別室。
小さなソファに、毛布にくるまって眠るセリナ。
不安そうな寝息。
震える肩。
彼女はまだ知らない。
自分が、
どれだけ大きな闇に巻き込まれているのか。
そして、
彼女の運命を決める手に、
ヨンジュン自身が成り果てようとしていることを。
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(復讐か。
それとも――彼女か。)
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ヨンジュンの胸の中で、
二つの声がせめぎ合っていた。
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【シーン:ギョンシクからの接触】
そのとき。
ヨンジュンのスマートフォンが振動した。
画面に表示された名前。
【ハン・ギョンシク】
――ハン・ギョンウの弟。
――裏切り者。
ヨンジュンは、躊躇なく通話ボタンを押した。
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「ジン・ヨンジュン君。
“取引”の準備はできたか?」
ギョンシクの、ぞっとするような声。
「……条件を言え。」
ヨンジュンは低く答えた。
ギョンシクは、くすりと笑う。
「ハン・セリナ嬢。
彼女を“従順な後継者”として教育し直す。
そのために、君には“協力”してもらう。」
ヨンジュンの拳が、無意識に震えた。
「従わなければ、
君自身の過去を暴露してやる。
それで、すべて終わりだ。」
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【シーン:ヨンジュンの決意】
通話を切ったあと。
ヨンジュンは、
静かに目を閉じた。
(俺に、選択肢なんてない。)
たとえ地獄に堕ちても。
たとえ、彼女に憎まれても。
――守るために。
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「……俺が汚れる。」
冷たい契約を、
ヨンジュンはその手に受け入れる覚悟を決めた。
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夜が明ける。
だが、それは
二人にとっての”光”ではなかった。
それは、さらなる”絶望の幕開け”だった。
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(続く・中編へ)




