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紅蓮の契約  作者: ZEN
23/84

第7話「冷たい契約」【前編】

【シーン:洋館・夜明け前】


雨は止み、

灰色の夜明けが、静かに訪れていた。


地下室に立つヨンジュン。

その手には、一枚の書類。


【秘密保持契約書】


そこには、ハン・ギョンウの直筆サインが残されていた。


(これさえあれば……)


ハン家の犯罪、

セリナを道具として育てた証拠。


財閥を地に落とす、致命的な切り札。


**


ヨンジュンは、震える手で書類を見つめた。


(……だが、本当にそれでいいのか?)


**


【シーン:セリナの寝顔】


別室。

小さなソファに、毛布にくるまって眠るセリナ。


不安そうな寝息。

震える肩。


彼女はまだ知らない。


自分が、

どれだけ大きな闇に巻き込まれているのか。


そして、

彼女の運命を決める手に、

ヨンジュン自身が成り果てようとしていることを。


**


(復讐か。

 それとも――彼女か。)


**


ヨンジュンの胸の中で、

二つの声がせめぎ合っていた。


**


【シーン:ギョンシクからの接触】


そのとき。

ヨンジュンのスマートフォンが振動した。


画面に表示された名前。


【ハン・ギョンシク】


――ハン・ギョンウの弟。

――裏切り者。


ヨンジュンは、躊躇なく通話ボタンを押した。


**


「ジン・ヨンジュン君。

 “取引”の準備はできたか?」


ギョンシクの、ぞっとするような声。


「……条件を言え。」


ヨンジュンは低く答えた。


ギョンシクは、くすりと笑う。


「ハン・セリナ嬢。

 彼女を“従順な後継者”として教育し直す。

 そのために、君には“協力”してもらう。」


ヨンジュンの拳が、無意識に震えた。


「従わなければ、

 君自身の過去を暴露してやる。

 それで、すべて終わりだ。」


**


【シーン:ヨンジュンの決意】


通話を切ったあと。

ヨンジュンは、

静かに目を閉じた。


(俺に、選択肢なんてない。)


たとえ地獄に堕ちても。

たとえ、彼女に憎まれても。


――守るために。


**


「……俺が汚れる。」


冷たい契約を、

ヨンジュンはその手に受け入れる覚悟を決めた。


**


夜が明ける。


だが、それは

二人にとっての”光”ではなかった。


それは、さらなる”絶望の幕開け”だった。



(続く・中編へ)

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