第6話特別編「凍てついた夜に、君を想う」
この特別編では、
本編では見せきれなかったヨンジュンとセリナの【心の断絶と渇望】を、
もっと深く、静かに、でも痛いほど丁寧に描く。
【シーン:地下室・後】
手帳を読み終えたあと。
セリナは、無言のまま、
古びたソファに小さく座っていた。
ヨンジュンは、少し離れた場所に立ったまま、
何も言えずにいた。
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重い沈黙。
ただ、地下室の静けさだけが二人を隔てる。
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セリナは、ゆっくりと顔を上げた。
「……私、これからどうすればいいの?」
かすれた声。
ヨンジュンは答えを持っていなかった。
「君の好きにしていい。」
静かな、でもあまりにも不器用な答え。
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セリナは、かすかに笑った。
「好きに……できるなら、最初からこんなに、苦しくなかった。」
その小さな笑い声が、
ヨンジュンの胸を貫いた。
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(違う。本当は――)
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彼女を自由にしたかったわけじゃない。
失いたくなかっただけだ。
ヨンジュンは、自分の胸の奥にある、
誰よりも幼く、愚かしい願いに気づいてしまっていた。
(……傍にいたい。)
ただ、それだけだったのに。
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【シーン:ヨンジュンの独白】
夜、ひとりになったヨンジュンは、
古びた懐中時計を手にした。
父が遺した形見。
――生きろ。
あの夜、父はそう言った。
だが、
今の自分は、
本当に”生きている”と言えるのか?
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セリナを傷つけ、
守れず、
それでも手を伸ばすことすらできない。
そんな半端な自分に。
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ヨンジュンは、そっと目を閉じた。
(もう戻れない。)
(だけど、せめて――)
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「……せめて。」
彼女の未来に、少しでも希望を残したい。
たとえ、自分が泥にまみれても。
たとえ、すべてを失っても。
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夜は、静かに、
しかし確実に深まっていく。
冷たく凍てついた夜に、
それでもヨンジュンは、
セリナだけを想い続けていた。
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【特別編・完】




