表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の契約  作者: ZEN
22/84

第6話特別編「凍てついた夜に、君を想う」

この特別編では、

本編では見せきれなかったヨンジュンとセリナの【心の断絶と渇望】を、

もっと深く、静かに、でも痛いほど丁寧に描く。

【シーン:地下室・後】


手帳を読み終えたあと。


セリナは、無言のまま、

古びたソファに小さく座っていた。


ヨンジュンは、少し離れた場所に立ったまま、

何も言えずにいた。


**


重い沈黙。


ただ、地下室の静けさだけが二人を隔てる。


**


セリナは、ゆっくりと顔を上げた。


「……私、これからどうすればいいの?」


かすれた声。


ヨンジュンは答えを持っていなかった。


「君の好きにしていい。」


静かな、でもあまりにも不器用な答え。


**


セリナは、かすかに笑った。


「好きに……できるなら、最初からこんなに、苦しくなかった。」


その小さな笑い声が、

ヨンジュンの胸を貫いた。


**


(違う。本当は――)


**


彼女を自由にしたかったわけじゃない。

失いたくなかっただけだ。


ヨンジュンは、自分の胸の奥にある、

誰よりも幼く、愚かしい願いに気づいてしまっていた。


(……傍にいたい。)


ただ、それだけだったのに。


**


【シーン:ヨンジュンの独白】


夜、ひとりになったヨンジュンは、

古びた懐中時計を手にした。


父が遺した形見。


――生きろ。


あの夜、父はそう言った。


だが、

今の自分は、

本当に”生きている”と言えるのか?


**


セリナを傷つけ、

守れず、

それでも手を伸ばすことすらできない。


そんな半端な自分に。


**


ヨンジュンは、そっと目を閉じた。


(もう戻れない。)


(だけど、せめて――)


**


「……せめて。」


彼女の未来に、少しでも希望を残したい。


たとえ、自分が泥にまみれても。


たとえ、すべてを失っても。


**


夜は、静かに、

しかし確実に深まっていく。


冷たく凍てついた夜に、

それでもヨンジュンは、

セリナだけを想い続けていた。



【特別編・完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ