第6話「告げられた真実」【前編】
【シーン:迎賓館・深夜】
警報の鳴る気配もない。
静かな夜。
だが、危機は確実に迫っていた。
ヨンジュンはセリナを抱き寄せ、
耳元で囁いた。
「ここから離れます。」
セリナは驚きながらも、
ただ頷いた。
理由なんて、要らなかった。
――彼だけは信じられたから。
**
【シーン:ヨンジュンの迅速な行動】
ヨンジュンは、迎賓館の裏口から脱出経路を確保する。
すべては完璧だった。
かつて孤児院、ストリート、そして財閥内部で生き抜いてきた彼には、
こうした”逃げ道”を読む力が染みついていた。
**
(守るためじゃない。
これは、俺の計画のためだ。)
心の中で自分に言い聞かせながら、
ヨンジュンはセリナの手を強く握った。
けれど――
指先に感じたかすかな震え。
その柔らかさが、彼の胸を痛めた。
(……違う。
俺は、もう……)
**
【シーン:侵入者側・ジュンソクの気配】
一方、フェンスの向こうでは。
黒い影、カン・ジュンソクが、笑みを浮かべていた。
「焦るなよ、弟。」
静かに、だが確実に、
彼もまたセリナを追っていた。
**
【シーン:セリナの小さな疑問】
走りながら、セリナはふと思った。
(……なぜだろう。
この人の手を、前にも握った気がする。)
記憶は戻らない。
でも、体が覚えている。
あたたかく、切ない――感触。
**
迎賓館の敷地を抜け、
ヨンジュンはセリナを乗せて、黒い車に乗り込んだ。
**
「どこへ……?」
かすれた声で問うセリナ。
ヨンジュンはハンドルを握り締めたまま、
ただ一言だけ呟いた。
「……真実を、教えます。」
**
夜の闇を裂き、
車は疾走していった。
⸻
(続く・中編へ)




