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紅蓮の契約  作者: ZEN
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第4話 特別編「偽りの温もり」

【シーン:セリナの夢の中】


柔らかな光。


どこかで、小さな鈴の音がしている。


セリナは、白い空間の中で立ち尽くしていた。


誰もいない。

何もない。

ただ、自分だけが、ひとりぼっち。


(……怖い。)


足元が崩れそうになる。


そのとき――


ふわりと、あたたかな手が、彼女の肩に触れた。


**


(誰……?)


振り向いても、顔は見えない。


けれど、その手のぬくもりだけは、確かだった。


――あなたなら、大丈夫。


そんな声が、胸の奥に響いた気がした。


**


【シーン:ヨンジュンの回想】


夜。


迎賓館の別室。


ヨンジュンはベランダから、静かに月を眺めていた。


ふと、ポケットから取り出す。


古びた懐中時計。


あの夜、父から託された唯一の形見。


**


子供の頃、

孤児院の小さなベッドで、

ヨンジュンも同じ孤独を感じていた。


誰も助けてくれない。

誰も信じてはいけない。


あたたかさなんて、幻想だと、ずっと思っていた。


**


それでも。


あのとき、

ひとりぼっちだった少年に、父が残してくれた言葉がある。


『生きろ、ヨンジュン。』


たったそれだけ。


けれど、

それだけが、彼を生かし続けた。


**


【シーン:現在・セリナの部屋】


静かな寝息。


ヨンジュンは、

セリナが安心して眠る姿を見つめていた。


(……誰かの手を、必要とする気持ち。)


(俺は、知っている。)


**


だから。


たとえ偽りでも、

たとえ復讐のためでも、

――今だけは、彼女に背を向けたくなかった。


**


夜が深まる中、

ヨンジュンはそっと、

セリナの枕元に、小さなメモを置いた。


『焦らなくていい。

 君は、君のままでいい。』


**


セリナは、眠ったまま、

その紙片を胸に抱きしめた。


何も知らないまま。


けれど、その心だけが、

確かにあたたかさを覚えていた。



【特別編・完】

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